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「無駄を徹底的に排除しようと思った」ヤクルト・真中満監督の勝つ組織の創り方

一昨年の借金は「26」。昨年も借金「21」。開幕前の順位予想では最下位予想が多数を占めた東京ヤクルトスワローズ。就任1年目、44歳の青年監督・真中満はそんな弱小チームをリーグ優勝に導いた。

「ツバメ改革」に倣うかのように、チーム改革に乗り出す

東京ヤクルトスワローズ 44歳の青年監督・真中満

球団史上初となる前年最下位からのリーグ優勝を成し遂げた

 春季キャンプ中、新人監督・真中満はトレーニングコーチに注文をつけた。 「僕の理想は『10時半にダッシュ3本をやる』と決めたら、その前に選手各自がコンディションを整えて、10時半になった瞬間に全力ダッシュして終わるアップです」  真中の理想を聞いたフィジカルコーチは「若手もいるし、できない者もいる。ケガは困るので、ある程度は管理させてほしい」と意見した。真中はそれを呑んだうえで、「では一クールに1回とかキャンプ中盤に取り入れてみたらどうか?」と提案した。

「無駄を徹底的に排除しようと思った」

 選手に自主性を求める指導者は多い。しかし真中は、コーチ陣にも自主性を求めた。コーチの意見を聞かないと、誰も監督に意見をしなくなる。選手はもちろん、コーチにも自主的に練習に取り組む環境をつくらせたかったと言う。 「サラリーマンが悪いとは言いませんけど、上司が5時半まで会社にいたら、部下は先には帰れない。上司が8時に出勤していたら、部下はなんとなく7時半に出勤してしまう。そんな雰囲気はやめようって話をした。僕より先にコーチが上がってもいいし、選手も全体練習が終わったのなら構わない。9時にミーティング開始なら、9時前に来てもらえればそれでいい。そうすることで選手もコーチも、自分で本当に必要なことを見つけてやり始める。球界全体には、無駄な時間が多い。無駄を徹底的に排除しようと取り組んだんです。だから僕がこうして(練習後の取材対応で)話している間に、先に帰っちゃうコーチもいますよ(笑)」  真中が自主性を求めたコーチ陣に関しては興味深い証言がある。リーグ優勝を決めた阪神戦の直後、神宮球場のグラウンド内でビールかけが行われた。とある関係者は「コーチたちがあんなにはしゃいでいるビールかけは見たことない」と断言した。それは’90年代のスワローズ黄金期を支えた現在のコーチ陣が、ビールかけの楽しさを熟知しているという単純な理由だけではなさそうだ。
三木肇コーチ(中)。野村克則コーチ(右)

キャッチボール革命の生みの親、三木肇コーチ(中)。野村克則コーチ(右)はモチベーターとして選手を鼓舞した。

「こうして優勝すると、メディアには山田が打って、監督が采配を振るって勝ったと取り上げられがちだけど、ウチのコーチひとりひとりが『優勝はオレの手柄だ!』くらい思っているはずだし、そう思ってもらって、来年は選手より燃えてくれれば面白いですよね」  そんな真中の姿勢には、球界特有の“慣習”に対するアンチテーゼを感じる。 「自分が監督を辞めたとき、『三木、残ってくれ』『カツノリ(野村克則・バッテリコーチ)も残ってくれ』『宮出(隆自・打撃コーチ)、お前も残ってくれ』と球団に請われ、コーチたちがコーチ業を続けられるのが僕の理想。だから“真中内閣”を形成するのではなく、自分たちの色を出してやってほしい。そうすれば仮に僕が外れても、有能な人材は必ず組織に残っていくし、他球団にも行く。監督が退けば仕えたコーチ陣も辞めるという球界の慣習は払拭したいんです」 取材・文/小島克典 撮影/ヤナガワゴーッ! 再構成/SPA!編集部 ― 真中式[勝つ組織の創り方] ―
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