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まんしゅうきつこ、伝説のブログがついに書籍化「ようやくケジメをつけられた」 

今年4月に『週刊SPA!』で初顔出し、自身のアル中体験を綴った描き下ろし漫画『アル中ワンダーランド』をリリースして大きな話題を呼んだ漫画家まんしゅうきつこ氏。以降、テレビやラジオ、果てはロックフェスに出演するなど幅広い活躍を見せている。そして熱狂がいまだ冷めやらぬ12月、彼女の原点であり、その名を一躍世に広めたブログ「オリモノわんだーらんど」がついに単行本化された。『まんしゅう家の憂鬱』、ファン待望の一冊である。
『まんしゅう家の憂鬱』

まんしゅうきつこ伝説のブログがついに書籍化! 『まんしゅう家の憂鬱』(集英社)

まんしゅう(以下、まん):ブログのテイストを崩さずに本にするのは難しいだろうなと半ば諦めていたので、ちゃんと形になってホッとしました。ようやくケジメをつけられたというか、精神的にほんとラクになりました。 『まんしゅう家の憂鬱』には、ブログのエントリーから12本を厳選、『小説すばる』で連載していたエッセイ4本の計16編(+おまけ漫画)を収録している。まんしゅう氏曰く、ブログの中でいちばんアクセスの多かった記事は「包茎手術」だそう。包茎手術を受けたばかりの弟が“予期せぬ勃起”による流血・激痛に日夜苦しむというお話だ。 まん:弟の包茎手術の話は自分でもゲラゲラ笑いながら描けたんです。ネタがなくなってお酒に逃げる前のことで、ノリノリで描いてた。だからそのバイブスが読み手にも伝わったのかなと思います。  その弟を筆頭に、正体不明のキャバ嬢アミちゃん、“孤独の塊”ブラッドフィールド、「早くホヤを食いてえ~」の処女・中山さんなど、『まんしゅう家の憂鬱』には魅力的な人物が多数登場する。本来は一癖ある彼らをこうして魅力的たらしめているのは、まんしゅう氏の、人の心に決して土足で上がり込むようなことはしない、“優しい距離感”に他ならない。 まん:生まれ変わったらカラスになりたいと思うことがあります。人との距離感がちょうどいいし、犬や猫みたいに外見に左右されないし、不吉だと畏怖されているわりに頭がいいと思われて、超お得じゃないですか。 「面白そうなことには自ら飛び込んでいく性質」「人生をリセットしたいと思った」「3日間だけ寝よう。3日後には状況が変わっているハズ」etc. 本編のセリフの数々からは、まんしゅう氏本人の性格も伝わってくる。 まん:私はただただ好奇心だけで生きています。死んだらどうなるかが今、いちばん楽しみ。だから早くおばあさんになりたい。でもそのまえに早く、まんしゅうきつこというペンネームをリセットしたい。そうすれば人生もリセット=再生できるはずで……おい担当編集! お願いだから改名させてくれよ~。私もう限界だよ~。 「大人への旅」では、「家出」を繰り返す妹・弟が描かれている。「たいした反抗期もないまま大人になった」とあるまんしゅう氏だが、27歳で結婚した半年後、夫の風俗通いが発覚した際、やっぱり「家出」をしている(実家に出戻り、しばらくしてまた夫の元へ)。まんしゅう家にとって「家出」は必ず通る道のように思えてくる。
まんしゅうきつこ

『まんしゅう家の憂鬱』を上梓した漫画家まんしゅうきつこ。撮影/江森康之

まん:お遍路に出向くような、一度そこで憎しみや負の感情を全て落とすような、いわば「厄落とし」的な家出だったと思います。厄落としの旅。今までたくさんのことから逃げてきましたが、結果的に事態は好転している気がします。ダメだと思ったらさっさと逃げていいと思う。あと、そういう引き際を見極める第六感のようなものがとても大切なんじゃないかな。  ブログで人気を博すも、思うように更新できないことで自らを責めて“アル中ワンダーランド”へ突入。辛くも断酒、平常な毎日に戻ったまんしゅう氏。原点にして元凶でもあったブログがこうして一冊の本になったことで、彼女はようやくリセットされたはずだ。再び我が道を突き進み、狙わずとも我々を大いに笑わせてくれるののではないかと、いちファンとして期待している。 まんしゅうきつこ●埼玉県生まれ。日大芸術学部卒。’12年に開設したブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、現在は漫画家・イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)、『ハルモヤさん 1』(新潮社)がある。
まんしゅう家の憂鬱

身の回りのゲスな話をユーモラスに、時にシュールに描く、抱腹絶倒の全17編

アル中ワンダーランド

まんしゅうきつこ、お酒に逃げたらこうなった……。

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