「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めた 【第8話】

英語も喋れないのにたった一人で世界一周の旅に出ることになった「46歳のバツイチおじさん」によるズンドコ旅行記、今回から2か国目・フィリピン編です。前回、ソウルの夜の街で英語力のなさを痛感し、フィリピンはセブ島にある全寮制のスパルタ英語学校への入学を決意したバツイチおじさん。さて、物語はフィリピンへの入国から始まりますが、今回もド天然炸裂のトラブル続発です!

英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」【第8話 英語力だけでなく、所持金もゼロになる】

フィリピンセブ島にある格安韓国式スパルタ式英語学校に入学するため、俺は仁川国際空港で飛行機を待っていた。
チケットはLCCのセブパシフィック航空を予約。値段は仁川~セブで1万7957円だった。ただし出発は22時15分。到着は日付が変わって深夜1時50分。見知らぬ土地に深夜に到着というのは心もとないが、金額を抑えるとどうしても深夜移動になってしまう。旅はまだ長いため出費は極力抑えたい。俺は「まぁバツイチおじさんの一人旅だからなんとかなるだろう」と腹をくくった。

仁川国際空港で少し時間が余ったので少しぶらぶらしてみた。道草にこそ人生の本質がある。
まず感心したのが祈祷室というお祈りの部屋。そっと覗いてみるとお祈りしている黒人がいた。
きっと東京オリンピックの時にはこういう世界の宗教を気遣った部屋が日本にも増えるんだろうな。

「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めたその後、セゾンカードプラチナの特典である空港ラウンジに入った。
そんなに自慢することではないが、バツイチおじさんはプラチナカードをこっそり持っている。
今回の旅は神に誓って貧乏旅行だが、空港ぐらいは贅沢な雰囲気だけでも味わいたい。
空港ラウンジではフードとドリンクが無料だ。
中には優雅にワインを飲む金持ちそうなアラブ男女の姿があったり。
ラウンジの入り口付近では、免税店で購入したものをスーツケースに入れまくる東南アジア系の女性たちがいたり。
ここにも明らかな格差があった。アジアの断片が透けて見えた。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1007037

「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めた 「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めた出発時刻になったのでLCCの飛行機に乗り込んだ。
席に座り機内で買ったぬるいビールを飲み、ピーナッツを食べる。
その後、Kindleで沢木耕太郎の「深夜特急」の続きを読みながら、「深夜飛行機」でセブ島を目指した。

途中、入国手続きのカードが配られる。
全部英語だ。
どうやら病気の検査カードも含まれているようだ。
わからない。どうする?

雰囲気で書くしかない。

突然、入国できるのか不安になる。
英語学校入学を前に、まさかこんな関門が待ち構えているなんて。
深夜1時50分。セブマクタン国際空港に到着した。

機内で書き込んだ入国カードの仕上がりが不安で、ドキドキしながら入国手続きに進む。
俺は旅慣れた雰囲気を顔面から全力で醸し出した。
英語力がゼロな俺は、雰囲気でかますしかないのだ。
これは男の世界で戦うのに非常に需要なエレメント。
バスケやテレビ業界で学んだ独自ノウハウ。
特にマンツーマンでは有効な戦略だ。

俺の番が来た。余裕の顔で入国カードを渡す。
俺のカードをチェックする役人。
固唾をのむ瞬間。
気づくとおびただしい量の汗が出ている。
iPhone6+で気温を確認すると30度を超えていた。

汗びっしょりなのに冷めた顔で役人のリアクションを待つ。
「ギンギラギンにさりげなく」の♪冷めた仕草で熱く見ろ~という歌詞が頭に浮かんだ。
一方、入国審査の役人は冷めた仕草で冷たく俺を見つめた。

「OK!」

中川家礼二の「グアムの税関のモノマネ」のごとく荒々しくスタンプを押され、俺はあっさり入国することができた。
ほっと胸をなでおろし、23㎏のバックパックを背負ってホテルに向かおうとしたその時、俺はあることに気づいてまた汗でびっしょりになるはめになった。

現地通貨がない。

時間はすでに深夜2時を回っている。
やばい。またやってしまったか?
いや、冷静になって考えよう。
あ!大丈夫だ。
こんな時の為に新生銀行の国際キャッシュカードを準備してきたことを思い出した。
このカードは世界中のキャッシュディスペンサーで、現地通貨をレート計算したうえで引き出すことができるという万能カード。世界一周ブログを見たらほとんどの旅人が使っているという優れものの逸品だ。
今回の旅において、まさに俺のライフラインである。

空港内を見回すと、新生銀行の使えるキャッシュディスペンサーを発見した。
俺はカードを入れ、画面をタッチした。
全部英語だ。しかし、なんとなくわかりそうな気もする。
暗証番号を入れ、3万円分の現地通貨が出るようにボタンをタッチ。最後にEnterボタンを強めに叩いた。
画面が切り替わる。
30秒くらい待った。
しかし、お金が出てこない。

「あれ?」

何か間違ったか? 画面が何回も切り替わった。
英語が全然わからないため、何がどうなっているのかまったく理解できない。
深夜、ほとんど人気のない空港でガタンガタンと音が響き渡った。
そして、マシンの液晶は最初の画面に切り替わった。

「ん? 何が起きた?」

俺は理解できなかった。
しばらくして、事の重大さにやっと気づいた。

新生銀行のカードが出てこない

どうやら機械がカードを飲み込んでしまったらしい。
なぜだ?
焦って何度かボタンを押した。
いろんなボタンを押した。
時に強めに、時に優しく。
しかし機械はウンともスンとも言わない。

瞬時に自分の危機を察した。
何度も言うが、このカードは今回の旅のライフラインである。
このカードが役に立つこというがわかってる分、カードへの心の依存度は高かった。
密かに忍び寄るこの危機的状況を俺の野性の勘が察知していた。

あたりを見回すと両替所があった。
そこに走って行き、中の人にカタコトの英語で話しかけた。

「ザッツデイスペンサーイズ、ブローキング!マイカードイズ、インザマシン!」

しかし、両替所の人は完全無視で「空港職員に話せ!」と指示を出す。
カウンター席の空港職員のところに行ってまた同じ言葉を繰り返した。

「ザッツデイスペンサーイズ、ブローキング!マイカードイズ、インザマシン!」

しかし、空港職員は「明日また来い!」と言うだけ。
何度も交渉するが全く相手にされない。
しつこく一時間近くかけて交渉を試みるも、ますます面倒くさそうな顔になるだけ。
伝えたいことが伝えられないもどかしさは怒りへと変わった。

「ユアーエアポートイズ、インターナショナルエアポート、ユアープロブレム! アーユーオッケー?」

空港職員はちらりと見て、面倒くさそうな顔をし、無視した。

時間は朝方の4時近く。
空港職員は朝方までここで待機しているようだったが、二人いた空港職員の一人は、俺を無視してカウンターの中で椅子を並べて寝る準備を始めた。ここは国際空港なのに…。

なんだよ、その態度は!
しかし、怒っても埒があかない。
俺は最後の手段に出た。

「アイハブノーマネー、ヘルプミー!ヘルプミー!」

泣き落とし作戦だ。
46歳のバツイチおじさんは、涙目になって空港職員に訴えた。

「ヘルプミー!へルプミー!」

俺の虚しい叫びが静かな空港中に響き渡った。

「ヘルプミー!へルプミー!」

日本語にすると「助けてくださいお願いします!」という意味合いの英語を、
俺はかつての「世界の中心で、愛をさけぶ」ばりの勢いで何度も何度も叫んだ。

しかし、空港職員は電話番号が書かれた紙を俺に渡し、
「ここに3日後の月曜日に電話しろ。深夜は誰もいないし、土日は休みだ」
そう面倒くさそうに伝えるだけだった。

所持金がなくては、空港から一歩も出れない。
他のクレジットカードを持ってはいたが、このディスペンサーなら飲み込まれそうな可能性のほうが高い。
ここの職員に「セカチュー」作戦が通じない以上、これ以上踏み込むことは「セカオワ」にも繋がりかねないと判断した。

「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めた少し落ち着こう。
俺は冷静になって打開策を考えてみた。

「あ!そういえば、海外旅行した時に余っていたお金をいくらか持ってきたはず。あれを両替できないか?」

俺はバックパックの隠しポケットに入れていたお金を取り出した。
そこには以前、上海万博にいったときに余った800元が入っていた。
俺は急いで両替所に行き、

「ディスマネーイズ、エクスチェンジ、オーケー?」

すると、そこのスタッフは無表情でお金を数え始め、現地通貨ペソに両替した。
日本円にして約1万5000円ほどの中国紙幣は、5800ペソになって俺の手元に戻ってきた。

よし! とりあえず、これでなんとかなる。

俺はSIMカードを買うため、その足で朝方までやっている怪しい路面店に向かった。
携帯SIMを差し替えると、新生銀行に電話し、事情を話した。すると、「カードを止めるべき」だと言われた。
カードを止めると再発行しなくてはならなくなる。旅行中の身では海外にカードを送ってもらえるわけもない。誰かに頼もうにも、今や東京に家がない。
新生銀行と交渉し、とりあえず「一時停止」で手を売った。

俺はタクシーを捕まえ予約したホテルに向かった。
事前に予約済みの一泊3000円くらいのホテルだ。これで一晩はなんとかなる。
空港から20分ほどでホテルに到着。チェックインをし、ベッドに横たわった。

「今晩はご飯を食べる時間なかったな……」

ただ韓国からセブに移動しただけなのに、こうもトラブルに巻き込まれるとは。
つくづく自分の英語力のなさに嫌気がさした。
こうしてフィリピンセブ島の初日は終わった。

翌日、遅めに起床してからホテル近くのショッピングモールで中華料理を食べる。
新生銀行のカードがまだどうなるかわからないため、無駄遣いはできない。
その後、フィリピン産のピルゼンビールを買い、翌日から始まる英語学校に備えるために部屋でのんびりとすごした。

翌日、10月25日(日)の午後12時。
ホテルのロビーで185センチは超える背の高い韓国人男性とフィリピン男性と待ち合わせをした。
彼らは俺の23㎏のバックパックを軽々と持ち上げ、車に積んだ。
韓国人男性はカタコトの日本語と英語をミックスで話し始めた。

韓国人男性「連絡がないので心配してたんですよ。でも、連絡がとれて良かったです」
俺 「ご迷惑をおかけしました。すみません」
韓国人男性「では、行きましょう」

俺は彼らの車に乗り込み、セブ島の郊外へ向かった。
俺が抱いていたリゾート地に対するイメージと全然違い、セブ島の街は退廃的で、街の人々は明らかに貧しかった。路上生活者やストリートチルドレンがたくさんいた。
車が走ると景色が変わり、緑が多くなってきた。どうやらかなり山奥のほうへ向かっているらしい。だが、危険な空気は変わらない。

俺 「さっきお話した件ですが、そのままカードを無くしてしまったんですよ」
韓国人男性「わかりました。こちらでなんとかなるように致します」
俺 「えっ、本当ですか?」
韓国人男性「ただ、フィリピンなので100パーセントはお約束できません。そこはご了承ください」

やがて、外部からの侵入ができないような高い塀で囲まれた建物が見えた。
まるで海外ドラマ「プリズンブレイク」に出てくる監獄のような雰囲気だ。

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「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めた韓国人男性「後藤さん、ここであなたは一ヶ月間勉強することになります」

そう、ここが韓国資本のスパルタ式英語学校だった。

門が開くと、そこは退廃的な街並みとは一変してリゾートのような光景が広がった。
なんだか塀の中にある楽園のようだ。スパルタなのに楽園。その違和感が逆に不気味さを際立たせる。

「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めた学校の名前はEnglish Fela2。期間は10月25日~11月22日の4週間。
費用は教材費、雑費は別にして、授業、宿泊代、ご飯三食付きで24万2378円。
一か月寝泊りできて英語の勉強もできるなら、この額は格安と言える。代金は日本にある留学エージェンシー経由で入金した。

俺は「Jスパルタコース」を選択。
このコースは朝8時から夜6時まで食事を除くとほぼノンストップで授業が行われる。
授業は、フィリピン人先生のマンツーマンクラスが5時間。グループクラスが2時間。TEDやCNN、TOEIC、日本語の文法、ポップソングクラスという英語の歌で勉強するクラスの中から一コマ選択できるプレミアムクラスが1時間。その後、監視付きの自習室で夜9時半まで自習。その後、単語と熟語のテストが行われる。
毎日、朝8時から夜10時まで11時間ぶっ続けで勉強をするという、まさに看板に偽りナシな全寮制スパルタ式英語学校なのだ。

俺は早速割り振られた部屋に入り、翌日からの授業に備えた。
夜は学食に向かう。ご飯は味噌汁とご飯、魚のフライにキムチとフルーツポンチ。韓国人向けに味付けされたような印象だが、全然悪くない。これからここでのご飯が一か月続く。とりあえずホッとした。

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「ヘルプミー! ヘルプミー!」――46歳のバツイチおじさんは深夜の空港で助けを求めた見回すと120人~130人くらいの人がいた。
案内してくれた韓国人チューターに話を聞くと、だいたいだが韓国人が6割、日本人が2割、台湾、中国人が2割という比率らしい。

一人部屋に戻ると、30年前の高校一年生時代に味わった「バスケ部地獄の夏合宿」を思い出した。
夏が始まるまで監督はまだ一年生をお客様扱いしてくれ優しかった。
先輩たちがシュートを一本落とせば竹刀で尻バットなのに。
あの嘘に満ちた監督の笑顔が、夏合宿で急に鬼の形相へと豹変した。
スラムダンクの安西先生のように。

「なんか、この感触・・・・・・。嫌な予感がする」

優しすぎる韓国人チューター。
楽園のような雰囲気とおいしい学食。
この学校が明日にはその笑顔を捨て、鬼の形相へと変化するのではないか?
そう思うと不安で一杯になった。

これから1ヶ月ここで英語漬けの生活になる。
果たしてどうなることやら……。
そして新生銀行のカードは無事に戻ってくるのか?

次号予告「英語漬けの日々にバツイチおじさんは耐えられるのか!? そして、消えたカードの行方は!?」を乞うご期待!

●後藤隆一郎(ごとうりゅういちろう)
後藤隆一郎IVSテレビ制作(株)のADとして「天才たけしの元気が出るテレビ!」(日本テレビ)の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」「トリビアの泉」「学べる!ニュースショー!」など数々の番組制作に携わる。現在はディレクターを休業し、「大体1年ぐらい」という期間限定で花嫁探しの旅に一人で挑戦中。バツイチ、46歳、通称ごっつ。

― 英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」―

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