普通の日常を謳歌するAラン女子大生・美琴に荒波が訪れる予感――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

連続投資小説『おかねのかみさま』
連載ももう15回めです。はやいな。

現在発売中の¥en SPA!に神様ファミリーが出張しておりますので、本編とあわせてぜひお楽しみ下さい。

※⇒前回「これも何かのご縁です」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気

〈第15回 久里浜サイゼリヤ 22:34〉
—-サイゼリヤ久里浜店

「エスカルゴ」
「さっき言いましたね」

「ミラノドリア」
「はい」

「イタリアンプリン」
「はい」

「ティラミス」
「はい」

「グラスアカワイン」
「わかりました」

「(ずうずうしい…)」

「すいません。注文おねがいします」

「はいただいまー」

「フォッカッチャ,コエビサラダ,タマネギスープ,エスカルゴ,…」

「そうだ、自己紹介をさせていただくのを忘れてました」

「あ、はい」

「私、おかねのかみさまと申します」

「へ?」

「ホウレンソウ,モッツァレラトマト,エスカルゴ,…」

※   ※   ※

「おかねの?」

「はい」

「かみさま?」

「はい。でも今日はオフなので、そこらへんのおじさんです」

「オフですか」

「はい」

「宗教かなんかですか?」

「いえ、特に宗教というわけではないんですが、宗教というのもまぁ人間がつくったもので、私はただ遠くからずっと眺めているだけです」

「はぁ」

「はい」

「じゃあ、普段どんなことされてるんですか?」

「そうですね。どこにでもいる青年を捕まえて競馬場やカジノに連れて行ったり、たまに求められたら何か教えることもありますけど基本は楽しく過ごさせてもらってます」

「…」

「…」

「えーと」

「はい」

「なんで…そんなことしてるんですかね」

「そうですね。まぁ、暇つぶしといえば暇つぶしなんですが、長い人類の歴史の中でもこんなにバランスの悪い時代はなかったもんですから、つい久しぶりにおせっかいしてる。っていう感じです」

「バランス」

「はい」

「なんのバランスですか?」

「あれこれおまたせしましたー」

「ワーイ!!!」

「はい。昔はみんな、なにをするにしても気分よく働いて過ごしてたんですが、今はもう上空から見てもほんとにバラバラで、悲しそうな人も楽しそうな人もとてもつらそうに見えるんです。もちろん中には無邪気に過ごせているひともいるんですが、おかねの集まる大きな街のまわりに、たくさんの悲しい感じが集まってまして、まぁ、いつもどおり眺めてるだけでもいいんだけれど、さすがにこれはやばいなと」

「そんなに」

「えぇ。ボリューム満点激ヤバジャングルです」

「ジャングルダァ…」

「!?」

「で、いままではそういった混乱があるたびに、いわゆるリーダーと呼ばれるような人物をそっと手伝って元に戻したりしてたんです。だけど今回はおかねといっしょにリーダーたちの建前も軽くなってきているようなので、ほんとーに普通の青年を成長させることで、みんなが自分の能力に気づいてもらえれば、と思ってやってます」

「はー」

「話がながくなりましたね。さ、たべましょう」

「あ、はい」

「ところで美琴さんは、どうしておかねのかみさまだということをすんなり理解してくれたのですか?」

「え、いや、まだ信じてるわけじゃないですけど、論点に矛盾もないし、悪いヒトじゃなさそうだし、なにより私を騙したところで特にメリットもないでしょうから、聞いたことのない考え方として楽しく聞いてます。ちょうどお腹もすいてたし」

「オー」

「なんですか。口真っ赤にして」

「なるほど。ではなにか聞きたいことはありますか?」

「うーん」

「ウーン」

「そうだ。あたし、彼氏ほしいなーって思うんですけど、できますか? それと、いつごろ結婚するのかなーって。かみさまだったらそういうのわかったりするんですよね?」

「そこかー」

「ソコカー」

「どう…ですか?」

「きもちはわかります。だけど、私はおかねのかみさまなので、恋愛は担当してないんです。良し悪しは別として紹介できる青年ならいるんですが…」

「ほんとですか!?どんなひと?」

「いまのところ、本当ーーーーに普通の青年です。取り柄もなく、酒飲みで、勉強が嫌いで、とくにツキもありません」

「なんでそんなひと紹介するんですか」

「あんまり人間の知り合いがいないんですよ…」

「…」

「…」

「ケンタ、イイヤツ」

「!?」

「…」

「この人も知ってるんですか?え、ていうかなんで、お二人は知り合いなの?」

「知り合いっちゃあ知り合いなんですが、私はほんとに今日はオフです。だけどたまたま乗り合わせた電車に死神さんがいたもんですから、なんとなくついてきたらなんとなくサイゼリヤに来ちゃったね。というわけです」

「デス」

「なんとなくって、え?この人死神?え?あたし死ぬんですか?」

「いえ、死神さんは人生のアップダウンが大きくなりそうなヒトのところに現れます。美琴さんの人生がこれからどうなっていくかは知りませんが、死神さんは私よりもずっと嗅覚が鋭くて、たぶんそういうことかと」

「ウン」

「人生のアップダウン…」

「はい。さきほど電車で自己紹介なさってたときは、普通の日常にすっかりご満悦のようでしたが、どうやらこれからあなたには色々なことが起こりまくるようです」

「…」

「ジャングルダァ…」

「!!!」

「ま、誰でも人生の中で一度や二度、そういう時期ってありますから、とくに構えずに、楽しく過ごせたらいいんじゃないかと思います。これ、エスカルゴ2つ来ちゃったからよかったらどうぞ」

「ありがとう…ございます」

「いえ」

「…あの」

「はい」

「赤ワインも…いただいてもいいですか?」

「オー」

「どうぞ」

「デカンタ!!!」

「はーい」

次回へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

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井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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