くるみのステーキ、里芋のおはぎ…戦時中の家庭料理を再現してみた

 終戦70周年を迎えた2015年は、テレビなどでも多くの特集が組まれ、様々な観点から戦時中の出来事を振り返る機会が多くあった。

 本記事で取り上げるのは“戦場”や“空襲”といったキーワードではなく、より日常的な営みである戦時中のゴハンについてだ。参考にしたのは、今年7月に文庫化された斎藤美奈子・著『戦下のレシピ』(岩波書店)という書籍。紙不足の中でも休刊することなく制作された『主婦之友』をはじめ、銃後の戦いを繰り広げていた婦人雑誌を紐解きながら、当時の食生活の知恵に迫っている。

 食という身近な話題なだけに、読後に気になったのはやはりそのお味。果たして戦時中の家庭料理とは一体どのようなものだったのか、再現して食べてみた。

軍艦サラダ&鉄兜マッシュ

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 1941年の開戦目前、少年たちの心をときめかせ、戦意を盛り上げる勇ましい料理を二つ。

軍艦サラダ 軍艦サラダの響きだけでカリフォルニアロールみたいなものを想像してしまっていたが、リンゴやバナナ、グリーンピースと人参をマヨネーズで和えて船に模したリンゴの器に盛るという、なかなか凝った料理だが味は給食で出てきては不評を買っていたフルーツサラダを彷彿とさせる一品。

鉄兜マッシュ

このころはまだイケイケだったんだろうなぁ。シナモンがジャガイモの甘さを引き立てる

 鉄兜マッシュはじゃがいも、もしくはサツマイモを茹ですり潰したものに、人参と玉葱のみじん切りを炒めて混ぜ合わせヘルメット状に形を整えた後、最後に肉桂粉(シナモン)を振りかけるという料理だ。じゃがいもとシナモンの組み合わせには少し違和感があったが以外と相性がいい。どちらも端午の節句料理として紹介され、見立てに遊び心が感じられる。

胡桃ビーフ

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胡桃ビーフ

バターで両面焼きあげるあたりはまだまだ余裕があるレシピか

 戦争初期はビッグなスポーツイベントのような盛り上がりだったが、徐々に暮らしに影を落としていく戦争の影。この料理は肉を使わないのに肉の味のする料理として紹介されている。

胡桃ビーフ 胡桃はすり鉢で潰し、玉葱をみじん切りにして炒める。それらにつなぎとなる卵と塩を加えてご飯に混ぜたら、どら焼き型にしてフライパンで両面焼く。

胡桃ビーフ 胡桃がお肉のような歯ごたえを演出し、胡桃の脂と卵の動物たんぱく質的な何かが反応しあって、30回くらい咀嚼していると何度か肉の風味が鼻から抜ける、感じもする。豆腐ビーフとは発想が真逆でカロリーはかなり高めか。お米のおこげが美味しいが、現代風にケチャップでアレンジすると化けた。

里芋お萩

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里芋お萩

現代風に炊飯器で炊き上げる。イモと米で腹持ちは良い

 チョコレートなどの贅沢品の製造も中止され、配給下の1943年には大人への菓子の配給もなくなり、みんな甘味への渇望が高まっていった。もち米いらずのこのおはぎは、米と里芋を一緒に炊き上げ、すり鉢で炊き上がった米と里芋をすり潰しながらひたすら混ぜ合わせていく。粘り気が強く3分も格闘していると手首が猛烈に痛くなってくる。銃後の戦いも腕力勝負といったところか。

里芋お萩 十分に混ざったらおはぎ状に形を整え、きな粉や青海苔、黒胡麻をまぶして完成。彩りが良いが、食べてみると基本的にはほぼ無味。噛んでるうちに唾液とデンプンの反応を利用した優しい甘さが広がるものの、やはり砂糖が欲しい…。

代用醤油

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代用醤油

配給の醤油を煮汁で割ることで増量用にも使ったりもしたらしい

 食材不足のみならず、調味料不足もかなり深刻だったようで、戦争末期は砂糖の配給も停止し、醤油も一人1日に換算すると大さじ1杯半に。そんな状況で生み出されたのが代用醤油なるレシピだ。濃い目の塩水で昆布ダシをとり、炒り大豆も投入し煮詰めて製造する。

代用醤油 出来上がった液体は醤油とは程遠い色だが、とりあえずスーパーで特売の刺身を食してみた。口に含んだ瞬間、ものすごく醤油っぽいのだが、それは本当に一瞬のこと。なんだか、ものすごく惜しい感じもするのだが、醤油特有の後に引くコクのようなものもなく、やはり似て非なる代物だ。発酵食品の偉大さを痛感した。

現代人の舌にはどこか物足りない


戦下のレシピ 米やイモで満腹感をキープしながら、戦中レシピがいまひとつ物足りないのは、現代人の舌が調味料や添加物に染まりきっていることを考慮しても、調味料不足によるところがどうしても大きい気がする(鉄兜マッシュでシナモン大量に使っていたが)。大航海時代、コショウに金と等価の価値があったというのも頷ける話だ。今後、また作らざるを得ないという未来がないことを願いたい。 <取材・文/日刊SPA!取材班>

戦下のレシピ

当時の食事を完全再現

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