巨人軍新監督・高橋由伸「人生のターニングポイントは桐蔭学園入学と現役を辞めたとき」

現役を引退し、読売ジャイアンツ第18代監督に電撃的に就任したことで大きな注目を集めたに高橋由伸。まだ40歳と圧倒的な若さで監督就任を決断した胸中を、野球の名門、桐蔭学園高校野球部の後輩で、苦楽を共にした小説家の早見和真(38)に語りつくした。卒業後20年の歳月を経て再会を果たした2人が交わした熱い会話とは――。

高橋由伸(読売ジャイアンツ第18代監督)早見:お久しぶりです。積もる話は山ほどありますが、まずは誰もが聞きたい監督就任のお話を伺いたいと思います。いつ、どんな状況で監督要請の話があったのですか?

高橋:CSでスワローズに敗れて、2、3日後だったかな……。自宅にいたらGMからの電話が鳴って。GMからの電話なんて滅多にないから、鳴った瞬間に「あれ?」って思ったら「今日、ちょっと来てくれるか?」って。それが最初だった。

早見:瞬間的にピンときましたか。

高橋:このタイミングで戦力外はないだろうって(笑)。それで球団事務所に行ったら「監督を~」って要請を受けたんだ。

早見:話を聞いたときは、どんな心境でしたか。

高橋:新聞なんかには名前が出ていたから、やっぱりというか……ついにオレのとこに来たかって。

早見:その場で即決されたんですか。

高橋:いや。「少し時間が欲しい」と伝えた。報道で名前が挙がっていても、実際に要請がないと本気では考えられなかったからね。

野球に必要なのはセンスと休養


高橋:僕にとって人生のターニングポイントって、実は桐蔭に入学したときと、現役を辞めたときなんだ。

早見:巨人軍入団より、桐蔭学園入学のほうが大きかったんですか。

高橋:そう。桐蔭に行ってオレの人生は劇的に変わった。人生やり直しがきくとしても、オレは同じ道を選ぶと思うな。ただ……桐蔭に入った1年の頃には戻りたくないけど(笑)。

早見:寮、ツラかったですもんね。

高橋:10人部屋で自由もないし、ちょうどオレたちの代は改装していたから風呂場が遠くて、雨が降ったら風呂入ったのにびしょ濡れになったりね……もう一回あそこからやり直せって言われたら、さすがに「うーん」と考えちゃう。でもあそこを通らないと、同じ道にならない(笑)。

早見:今も鮮明に覚えている試合があります。僕らが入学した直後の春の県大会で、由伸さんたちは初戦で敗れました。野球では無名の県立伊志田高校に。覚えていますか?

高橋:もちろん覚えてるよ。前後の代は甲子園に行ったけど、オレたちの学年は弱かったからね。

早見:あのときだけなんですよ、由伸さんが土屋監督から殴られるのを見たのは。

高橋:そう。そうなんだよね。チームを引き締めるって意味じゃ、あのタイミングしかなかったんだよ。今はもちろん体罰はないし、やっちゃダメなんだけど、あの頃はそういう時代だったからね。

早見:今だったら大ごとですよね。

高橋:時代だよね。卒業して今でもたまに学校に行くんだけど、我々の頃とは雰囲気が違うもんね。土屋監督も丸くなられたし。

早見:もう一つ鮮明に覚えてることがあるんですよ。僕が1年生のとき、由伸さんと一緒に個人練習をさせてもらったことがあるのですが、そのとき由伸さんに言われたんです。

高橋:何て?

早見:「おい、早見。野球はセンスと休養だぞ」って。

高橋:(爆笑)。元も子もないこと言ったなぁ~。

早見:あえて言うと、僕の知る高橋由伸という選手は練習嫌いでした。ところがプロ入り後は「練習の虫」という評判をよく聞きました。

高橋:学生の頃って部活動だったし、どこかやらされてる感もあった。学生時代は「やりたければ続けられる」けど、プロは「やらないと続けられない」。意識が大きく変わったのはそこ。あとは、ナメた言い方に聞こえるかもしれないけど、プロは練習しないと相手に勝てない。高校、大学の頃は……。

早見:センスと休養で(笑)。

高橋:通用していたんだけどね。

求めに応える力がプロには必要


早見:由伸さんの現役引退に関しては、その形も含めて納得していないファンは多いはずです。

高橋:それに関しては人それぞれの価値観だから、いい悪いはないと思う。ほかのプロ野球選手のように、今日、この試合をもって引退します、という形で引退しなかったけど、僕自身は未練も後悔もまったくない。こういう終わり方で僕自身はむしろよかったと思っているくらい。

早見:高橋由伸らしい引き際だった……と。

高橋:そんなふうに思ってもらえたらありがたいね。

早見:来年からは一日でも長く高橋由伸監督、勝ち続けるジャイアンツを見たいと願うファンは多いと思います。

高橋:今年は僅差の2位とはいえ、負けたのは事実。監督になって最初に選手に伝えたのは、個々のレベルを上げないとチームの力は上がってこないぞ、と。このタイミングで僕に監督を要請したってことは、球団が僕を必要としていたってこと。だったらそれに応えるのもプロ。だから監督として、強いジャイアンツをつくる。新しく生まれ変わらせるってのは、高橋由伸だからできること、任せられることなんだって考えるようにしてる。

早見:由伸さんが理想とする監督像ってあるんですか。

高橋:うーん……難しいね、そこは。これまで僕は選手だったから、「選手と監督」という間柄でいろんな監督と接してきた。だから、どの監督さんに対しても、いいなと思うところもあれば、なんだよと思うところはあった。だから、あまり固定観念を持たないでチームづくりをやりたいなと思ってる。まずは「思うがまま」にやってみたいね。

※このインタビューは週刊SPA!12/22発売号のインタビュー連載「エッジな人々」から一部抜粋したものです
<構成/小島克典 撮影/ホリバタカトシ>

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