植草一秀が読み解く!財政危機は消費税アップの演出だった【後編】

◆マネーな人々 今週の銭格言 【選者】政治経済学者・植草一秀氏 ◆欧州債務危機に便乗!日本政府演出の財政危機は消費税大増税実現にあり!! ←前編はこちら ここで3つの重要な事実を押さえる必要がある。 第一は、1000兆円に短期債務が含まれていること。短期債務は資金繰りなどを理由とするもので、本来除外するべきものだ。また、地方債務、建設国債など償還に不安のない債務も含まれている。問題とするべき赤字国債は391兆円でGDP比80%台に低下する。 第二は、中央政府だけで簿価ベースで647兆円もの資産を保有していることだ。資産を考慮に入れると、債務危機ではない。 第三は、日本の経常収支が巨額の黒字を計上し続けていることだ。経常収支は、国全体の資金バランスを端的に示す指標で、日本の場合には、財政赤字が100%国内資金で賄われ、その上でさらに資金が余剰であることを示す。欧州債務危機国は、すべてが経常収支赤字。財政赤字資金を海外資金に依存する、極めて不安定な基盤の上に立たされているのだ。 日本の財政赤字はサブプライム金融危機に伴う現象で、景気が回復すれば大幅に減少する。現在政府が用意している復興対策で日本経済を浮上させることは十分可能であり、今は景気回復を優先するべきなのである。 財務省は、天下り利権を切らずに消費税増税を実現してしまおうと前のめりになっている。この財務省の邪な考えに基づく大増税政策が景気回復の好機を吹き飛ばしてしまうことが懸念材料なのだ。 【今週の数字】 日本の経常収支黒字GDP比 3.6%(2010年) 欧州債務危機に見舞われている国の共通点は、経常収支の赤字が続いていること。これに対して日本は経常収支の黒字を継続している。日欧財政赤字の本質的違いをしっかり押さえておくことが重要だ

現在、問題になっているギリシャの経常収支のGDP比は-10・4%、ポルトガルは-9・7%。それに対して、日本は3・6%であり、経常収支は黒字を継続している

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