バディ・ロジャースの“魔法の力”で観客がショック死!?――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第2回

「フミ斎藤のプロレス講座別冊」WWEヒストリー第2回


 ビンス・マクマホンの父ビンス・マクマホン・シニアがつくったWWWF――現在のWWEのルーツ――の初代世界ヘビー級チャンピオンは、“ネイチャー・ボーイ”バディ・ロジャースだ。

“ネイチャー・ボーイ”バディ・ロジャースのNWA世界王者時代のパブリシティー写真。全米のアリーナで販売された会場入り用パンフレットにはよくこの写真が使われていた。

“ネイチャー・ボーイ”バディ・ロジャースのNWA世界王者時代のパブリシティー写真。全米のアリーナで販売された会場入り用パンフレットにはよくこの写真が使われていた。

 “ネイチャー・ボーイ”といえばリック・フレアーのニックネームだが、そのオリジナル版はバディ・ロジャース。昭和30年代の日本のプロレス・マスコミは“ネイチャー・ボーイ”を“野生児”と訳した。いちども日本のリングに登場することなく引退した数少ないアメリカのスーパースターのひとりである。

 トレードマークは、フレアーが完全コピーしたストラートstrutと呼ばれる気どった歩き方とブリーチ・ブロンド(脱色した金髪)。フェイバリット技は足4の字固め。相手のまえにひざまずいて「ノー、ノー」と許しを請うポーズ、投げ技をもらったあとに腰に手をあてて大げさにのたうちまわるしぐさなど、“やられ芸”と“顔芸”で一世を風びした大悪役だった。

 1921年、ニュージャージー州キャムデン出身。出生名はハーマン・ロードだったが、50年代に本名もバディ・ロジャースに変えた。1939年に18歳でデビュー。1940年代の人気SF小説“バック・ロジャース”からロジャースをいただき、ニックネームの“ネイチャー・ボーイ”も当時のポピュラーソングの題名をそのまま拝借した。

 現役レスラーとしての全盛期は第二次世界大戦後の1948年あたりから1963年までで、年齢でいえばロジャースが27歳から42歳までの約15年間とされる。1963年5月にWWWF世界ヘビー級王者に認定されたときはすでに42歳になっていたが、その4、5年まえから“公称年齢”はずっと33歳で止まっていた。

 身長6フィート(約180センチ)、体重245ポンド(約110キロ)のロジャースのいったいどこがそれほどすごかったかというと、それは観客を本気で怒らせる“魔法の力”だった。

 1947年(日時不詳)にニューヨークでおこなわれた試合では、リングサイド席に座っていた男性客がロジャースの反則ファイトに怒り、心臓マヒで死亡するというショッキングな事件が起こったとされる。ロジャースと対戦相手のビリー・ダーネルは、この事件でニューヨーク州体育協会から2年間の出場停止処分を受けた。

 ロジャースは1948年6月にロサンゼルス(ジャック・フェファー派)で世界ヘビー級王者に認定されたのをはじめ、40年代後半から50年代前半にかけてはAWA世界ヘビー級王座(オハイオ版)を通算6回獲得。AWAイースタン・ステーツ王座、世界TV王座、USヘビー級王座とアメリカじゅうの各テリトリーにロジャースのためのチャンピオンベルトが“用意”されていた。

 ロジャースの知名度と商品価値を絶対的なものにしていたのは、シカゴのドゥモン・ネットワークTV(消滅)が毎週土曜のプライムタイムに全米生中継していたプロレス番組“レスリング・フロム・マリゴールド・ガーデン”だった。日本では力道山の“街頭テレビ”がそうであったように、アメリカでもテレビ時代の幕開けの人気ソフトはプロレスだった。

 とにかく、驚異的な観客動員力を持っていた。50年代前半にシカゴのインターナショナル・アンフィシアターで隔週金曜夜におこなわれていた定期戦は、ロジャースの試合をメインイベントにつねに1万クラスの観客を集めていた。

 ロジャースがパット・オコーナーを下し、NWA世界ヘビー級王座を奪取した試合(1961年6月30日)は、シカゴのコミスキー・パークに3万8622人の大観衆を動員。数カ月後のリターン・マッチもまた3万人の観客を集めた。

 ロジャースがNWA世界チャンピオンになったことでアメリカのレスリング・ビジネスの勢力分布図、つまり全米各地のプロモーターの“力関係”に変動が起きた。NWA(ナショナル・レスリング・アライアンス=全米レスリング同盟)の加盟プロモーターという立場をとっていたビンス・シニアが新団体設立に動いたのはこのときだった。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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