ニューヨークの新団体WWE誕生前夜――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第3回

「フミ斎藤のプロレス講座別冊」WWEヒストリー第3回


 WWEのルーツ、WWWF(ワールド・ワイド・レスリング・フェデレーション=世界広域レスリング連盟)が誕生したのは1963年5月。ビンス・マクマホン・シニアとサム・マソニックNWA会長の対立がきっかけだった。

“鉄人”ルー・テーズのいちばんポピュラーなNWA世界王者時代のパブリシティー写真。有名なプロレス写真家、トニー・ランザ氏(故人)の作品だ。

“鉄人”ルー・テーズのいちばんポピュラーなNWA世界王者時代のパブリシティー写真。有名なプロレス写真家、トニー・ランザ氏(故人)の作品だ。

 ニューヨークとセントルイスの政治的対立は、それよりさらに6年まえ(1957年)の“NWA内部分裂”までさかのぼる。WWWF誕生までのいきさつを知るためには、まずNWA(ナショナル・レスリング・アライアンス=全米レスリング同盟)という組織のなりたちについてかんたんにふれておかなければならない。

 NWAは第二次世界大戦後まもない1948年7月、アイオワ州ウォータールーで発足したプロモーターの加盟団体で、発起人はサム・マソニック(ミズーリ州セントルイス)、ピンキー・ジョージ(アイオワ州デモイン=1942年にNWAの前身となる同名の組織を設立)、トニー・ステッカー(ミネソタ州ミネアポリス)、アル・ハフト(オハイオ州コロンバス)、オービル・ブラウン(カンザス州)、マックス・クレイトン(ネブラスカ州オマハ)の大物プロモーター6人。

 “全米レスリング同盟”は統一世界王者の認定、おたがいの興行テリトリーの不可侵協定、プロレスラーのファイトマネーの定額化とスケジュールの共有、組織への協力を拒否するレスラーとプロモーターのブラックリスト作成などを組織運営のアウトラインとした。

 NWAは、同業者の“組合”“親睦連”という部分と大手プロモーターたちによる“談合”“企業カルテル”というダーティーな部分の相反するふたつの面を併せ持った組織だった。

 じっさい、1956年には米司法省(アイオワ州)が独占禁止法違反、公正取引法違反の疑いでNWAを告発し、裁判所は(1)特定地域での特定プロモーターによる独占的な営業を認めないこと(2)いかなる地域、場所においても新しいプロモーターの新規市場参入の妨害、競争の制限をしないこと(3)同業プロモーターに特定のレスラーだけを雇用することを義務づける規則の禁止(4)いかなるレスラー、プロモーターも差別・区別しないこと、の4点をNWA運営委員会とその傘下プロモーターに命じた。

 当時、ニューヨークからは目と鼻の先のワシントンDCを興行テリトリーとして活動していたビンス・マクマホン・シニアは、NWA加盟プロモーターというスタンスを選択した。しかし、1957年にそのNWAが内部分裂を起こす。この年の年度総会でNWA加盟プロモーターの過半数が全米一の観客動員力を持つバディ・ロジャースを“次期チャンピオン候補”に選出したが、この時点でのNWA世界ヘビー級王者ルー・テーズは、単なるショーマン――とテーズはとらえた――のロジャースとの“ビジネス”を断固として拒否した。

 最初の事件は、1957年6月14日に起きる。シカゴでおこなわれたテーズ対エドワード・カーペンティアのNWA世界タイトルマッチで、王者テーズが腰の負傷を理由に60分3本勝負の3本めを棄権。チャンピオンベルトはカーペンティアの腰に巻かれ、カーペンティアはそのまま新チャンピオンとして全米サーキットを開始する。

 ところが、NWAのセントルイス派閥は「2フォールによる勝利ではない」ことを理由にカーペンティアを新王者と認めず、シカゴでのタイトル移動の無効を発表。テーズはそれから4カ月後の同年10月に初めて日本にやって来て、東京・後楽園球場と大阪扇町プールで力道山との歴史的な世界タイトルマッチ2連戦をおこなった。

 そのころ、ビンス・シニアはニューヨークの大プロモーターとしての政治力・発言力を着実に築きあげつつあった。1956年6月にはニューヨーク・エリアのチャンネル5で毎週木曜のプライムタイムにプロレス中継番組“チャンピオンシップ・レスリング”を放送開始し、同年11月に41歳で初めてマジソン・スクウェア・ガーデン進出を果たすのである。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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