新年特大号――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

連続投資小説『おかねのかみさま』17回めです。

お正月に1回分のオヤスミをいただきましたので、今回は
少し長めにお送りします。

※⇒前回「ライフプラン」

大川弘一「おかねのかみさま」〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる

〈第17回 得意料理〉
「美琴さん」

「はい」

「みんながやってること、みんなが幸せそうなことを目指すのは、これから不利になるんです」

「なんでよ」

「希少価値がないからです」

「しらないわよそんなの!あたしは彼ピッピにサーフィン連れてってもらうんだもん!彼ピッピが波にチャプチャプ浮かんでるのをゴールデンレトリバーのジャスティンちゃんと一緒に待つのがあたしの未来だったんだもんうぇーん」

「…」

「ンゴー」

「…」

「死神さん」

「ハイ」

「連れて帰ってあげて」

「エ-」

※   ※   ※

AM01:49

「ンゴー」

「…」

「チャプチャプ…」

「…」

「ンゴー」

「アノー」

「んぁ?」

「オウチドコ?」

「かいんずほーむの先のサンクスの次の信号まがったとこー」

「…」

「ンゴッ」

「タクシー!!!!」

「ご乗車ありがとうございます」

「カインズホームノサキノサンクスマガッタトコ」

「かしこまりました」

「ワカルノネ」

「この街で、わからないところは、ありませんから」

「カッコイイ」

「仕事ですから…」

「カッコイイ!!!」

「ハハハ…こちらですかね。それでは、1360円です」

「パスモ」

「はい。ピピ」

「アリガトー」

「お気をつけて」

AM 09:30

「…ん、」

「オハヨー」

「おはよう…ござい…え?」

「ウフ」

「!?え!えっと、シニガミさん?え?なんでここにいるの?」

「トマッタ」

「なんで!?え?なに?きのう私、サイゼリヤでワイン飲んで、そっからあれ?」

「オクッテキタ」

「あ、そ、そうでしたか、いや、ちがう、でもなんで泊まってるの?」

「ミコト、トマッテケッテユッタ」

「え…」

「ユッタ」

「そ、そうですか。忘れちゃってます。ごめんなさい。でもシニガミさん誠に申し上げにくいんですが、何かこう、私が寝てる間に何か変な…」

「ナイ」

「ほんとに?」

「ナイ」

「ぜったい?」

「タタミノホウデネタ」

「!!!そういえばちょっと顔に…畳の…」

「…」

「ありがとう…ございます」

「ウム。アサゴハンツクッタヨ」

「え!すごい!そんなわるいですよ。いや、わるくないか、もうわかんない」

「ダイジョブ。ドウゾ」

「焼き鳥とだし巻きとポテトと…からあげ?」

「ウン」

「あとこれなに?」

「チューハイ」

「あ、ありがとう。いただきます」

「イインダゼ」

「…」

「…オイシイ?」

「…ふ、ふつう」

「!!!」

「あ、ううん!おいしい!おいしいとおもうけど、まだ寝起きだから…」
「シクシク…」

「おいしい!すっごくおいしい!これとこれって親子だよね!」
「ザンコク…」

「あ、ごめんなさい」
「イイノ」

「…」
「…」

「あのー…」
「ハイ」

「どうしてこうなったんでしょう。私あれこれちょっとずつ思い出して来たんですが、これも波乱万丈な人生の始まりとして捉えたらいいんでしょうか。あとシニガミさんはこれからもずっと私を近くで眺めていろんなトラブルに巻き込まれるのを楽しんじゃったりする感じなんでしょうか」

「ン-」

「…」

「オカネノカミサマカラ」
「はい」

「オテガミヲ」
「はい」

「アズカッテイマス」
「おーーーー。見てもいいですか?」

「ドウゾ」

――――――――――
美琴さんへ

シニガミさんはこれからずっとあなたと一緒です。

おかねのかみさまより
――――――――――

美「これだけ!!?」

死「ツギ」

美「次!?」

――――――――――
美琴さんへ

この手紙を読んでいるということは、あなたはきっと

「これだけ!!?」

というツッコミをした直後でしょう。

テレビのバラエティ番組がひな壇タレントを便利に多用した結果、
美琴さんのような若者を中心に、
安易なツッコミをするだけのヒトが増えました。
その結果、ボケそのものも『ツッコミやすさ』が重視されるようになり、
その影響を強く受けた世の中の会話は、
いつのまにか間違い探しのように寒々しいものばかりになりました。

そんなクタびれた世の中で、
いま目の前でワインに呑まれてベロンベロンに突っ伏しているあなたは、
存在そのものが大ボケです。
人間らしく、だらしなく、荒削りであり、巨乳です。

あなたの人生にありきたりのツッコミをするだけの友人は、
一生つまらない間違い探しをあなたに仕掛けてくることでしょう。

そしていつの間にか、自分のやりたかったことを忘れ、
気がついたときにはあなたとの距離を妬むだけの人になるでしょう。

美琴さん。

ものの値段も、モテるという現象も、全ては需要と供給です。

波乱万丈が約束されたあなたの人生は、
このつまらない世の中で間違いなく希少価値のあるものになり、
優しさや人を助ける気持ちなどを身に付けたりしながら、
とても貴重な存在に育っていけることと思います。

そして幸運なことに、あなたの意思とは関係なく
あらゆる出来事に巻き込まれていくことが想定されますので、
勇気も決心も必要ないまま、
いつの間にか群衆を卒業していけることになるといいね。
と、心から成長を願っています。

ということでシニガミさんをよろしく

おかねのかみさまより
――――――――――

次号へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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