「マサイの戦士は一夫多妻でも性に淡白」日本人女性×マサイ族夫婦インタビュー

 05年にマサイ族のジャクソン氏と結婚。マサイ人の第二夫人となった永松真紀さん。ケニア在住の日本人ガイドとして活動する彼女が夫・ジャクソン氏と共に来日した。昨年『クレイジージャーニー』(TBS系)にも出演して話題となった夫婦に、謎に包まれたマサイの人々の生活についてインタビュー。前回の「マサイ族青年リーダーと結婚した日本人女性 謎に満ちた生活が明らかに」に続き、マサイ族の驚くべき事実が次々に明らかに!

――マサイ戦士といえばジャンプをするイメージがありますが、ジャクソンさんもよく飛んでるんですか?

永松:あのジャンプは儀式のときにするものなんですね。飛ぶのは戦士のダンスの振り付けみたいなもので歌いながらジャンプする。だからジャンプをするのは戦士時代だけなんです。

ジャクソン:戦士時代を終える儀式のあと男たちは大人になります。

永松:ちなみに私とジャクソンはその儀式・エウノトで出会いました。マサイを深く勉強しようと思って私が見学に行っていたんです。ひときわワイルドなジャクソンに私が一目ぼれした。彼はライオンを7頭、さらに象も倒したマサイの戦士の英雄でした。

――象! 象だと何人くらいで戦うんですか?

「マサイの戦士は一夫多妻でも性に淡白」日本人女性×マサイ族夫婦を直撃

象なら2、3人の戦士がいれば十分!?

ジャクソン:2、3人でじゅうぶんですね。儀式を終えて大人になった男たちは村で牛の治療をしたり面倒をみたり、牛の管理全般をやることになるんです。何百頭の家畜の面倒を見るんです。私たちの地域には獣医がいないので、大抵の病気は自分たちで薬草を使って治療します。薬草の使い方は戦士時代に学ぶからね。

永松:ケニアには乾期と雨期がありますが、乾期に干ばつがひどくなると、男たちは牛やヤギを連れて、草や水を探しながら何か月も放牧に出るんです。

ひとりの妻を共有するケースも


――長老になってからも大変なんですね。ところでマサイの女性たちはどういった生活をしてるんですか?

ジャクソン:女性は家事がメインですね。川に水をくみに行く。川といっても雨が降ったとき川になる場所で、普段は水が流れていないんです。その川底を少し掘ると、少しずつ水が出てくるんです。どこで水が出るかわからないときは象の行動を観察します。象たちは水のありかをよく知っていて、牙で地面を深く掘って水を飲む。だから象が掘ったあとをさらに少し掘れば水が出やすいんです。住居作りも女性の仕事です。牛糞を使って女性たちがみんなで協力して作るんです。

永松:女性の仕事の負担が大きいので1人よりも2人いたほうが仕事は軽くなる。そういう意味でも一夫多妻が自然に発生したんでしょうね。だから奥さんが、はやくもう一人、奥さんをもらってよって催促する場合もあるんです。

――多い人だと1人の男性に何人ぐらい奥さんがいるんですか?

永松:お金持ちのおじいちゃんでも3人。お金がないと養っていけないし、なかなか難しいんです。今は2人もめずらしいですよ。

――意外と少ないんですね。

永松:だけど一夫多妻ではないんですが、同じ戦士時代の仲間同士で奥さんを共有することがあります。戦士時代の仲間は同じ釜の飯を食った兄弟みたいなもんですから、奥さんをも共有するんです。

――それはなぜなんですかね。

永松:それがマサイの戦士の伝統だからです。親の世代から文化として根付いてるんです。でも、あくまでも伝統なので現在やってる人は稀ですけどね。一夫多妻もそう。それが当たり前なので、嫉妬という感情自体がそもそもない。だから私も第一夫人とすごく仲がいいですね。ちなみにこういった話は、本人に聞くととても機嫌が悪くなるんですよ。マサイ族、というか、アフリカ全体的にタブーですね。直接的な性の話をすることを嫌います。今、ずっと私が話してるのもそういう理由ですね(笑)。マサイの男性はすごく淡泊だし性交渉を楽しむ文化はない。だから女たらしのマサイなんていないんですよ。

――つまり、僕らがイメージする一夫多妻制のウハウハなイメージとはちょっと違うってことですね。

「マサイの戦士は一夫多妻でも性に淡白」日本人女性×マサイ族夫婦を直撃永松:マサイの男性には女性を遠ざける文化がある。マサイの男性はすごくおしゃれ好きですが、異性のためにおしゃれをするとか男らしさを磨くみたいなことはまったくない。同じ世代の男友達のなかでは誰がいちばんカッコイイかを比べるんですけどね。

――異性を度外視した世界があるんですね。日本で言うと小学生男子に近い感覚ですかね。

永松:あっ、そうかも。だから彼らから色恋的な話は一切出てこないんです。

北海道で飲んだ牛乳はケニアの味がした


――日本で見て驚いたものってありますか?

ジャクソン:うーん、なにかあったかな?

永松:そういうのってあんまり気がつかないんですよ。たとえばケニアの首都のナイロビに住んでいる若者であれば、その違いってすぐに気づくと思うんです。でも彼はナイロビにすらほとんど行ったことがないからわからない。都市生活自体を知らないんですよね。たとえば新型の家電を見ても、旧型を知らないから驚きようがないんです。

――なるほど。そもそも比較対象がないんですね。では日本の食べ物は口に合いますか?

ジャクソン:肉もおいしいけど、私たちの牛とはまったく別の味がしますね。普段食べてるものとはまったく別の食べ物として食べています。牛乳もそう。別の飲み物ですね。

永松:ただ北海道の中標津で飲んだ牛乳は濃くていつも飲んでいるものに近いと言ってましたね。あと面白いのが、都会だと彼は道をぜんぜん覚えられないんです。森では迷わないけど、街だとビルが同じに見えるんですって。それも環境の違いでしょうね。

ジャクソン:今回、日本に来ていろんな世界を見ましたけど、私はいままでと同じようにマサイの伝統を守っていきたいですね。マサイの伝統文化や牛と共に生きていきたいと思います。私たちにとってのいちばんの幸せは雨が降ることです。雨が降ると草がたくさん生えて、牛がおなかいっぱいになる。そしてたくさん乳を出す。それがマサイの幸せです。

「マサイの戦士は一夫多妻でも性に淡白」日本人女性×マサイ族夫婦を直撃――永松さんはケニアでツアーガイドをやってるんですよね?

永松:ずっとガイドの仕事をやってるんですけど、彼と結婚してすぐに仕事で村に貢献したいと思いマサイの村の生活を体験するスタディツアーをはじめました。日本の人たちにマサイの村に来てもらい彼らのことをよく理解してもらうツアーなんです。

ジャクソン:日本人の方々も興味があればケニアに来て、いろんな体験をしてもらえたらなって思います。 〈取材・文/河上 拓〉

【永松真紀】
1967年福岡県生まれ。東アフリカケニア共和国在住。88年よりフリーの旅行添乗員として全世界を巡り、96年にケニアに移住。アフリカ各地でガイド、撮影コーディネーターを手掛ける。05年にマサイ族のジャクソン氏の第二夫人となり、行こう、マサイを知るためのエコツアーを行っている

【ジャクソン】
推定年齢40歳。マサイ族青年リーダー

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