「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした 【第12話】

英語も喋れないのにたった一人で世界一周の旅に出ることになった「46歳のバツイチおじさん」によるズンドコ旅行記、今回も2か国目・フィリピン編です。前回、日本人美女とラグジュアリーデートを堪能するも金銭感覚のなさがたたってガッツリ散財してしまったバツイチおじさん。今回は、愛しの韓国美女アナベルとの関係がついに進展します! そして、二回目の卒業テストを受け、バツイチおじさんの英語力がどこまであがったのかも判明。スパルタ式英語合宿篇もいよいよ大詰めです!

英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」【第12話 パンチと歌は国境を越える】

格安英語学校での生活も6週目を過ぎた。
英語も徐々に話せるようになり、先生と恋の話やジョークまで話せるようになってきた。学校の先生は勘が良いのでこちらの言いたいことを類推してお話を成立させてくれる。
一方、ファンフライデーの時に出会った韓国人美女アナベルとは依然として話せずにいた。とにかく言葉の壁がでかい。だが、それ以上にでかい壁。それは国籍にあった。

俺が在学していた当時、学校の生徒たちは、韓国人55%、日本人25%、台湾人15%、中国人5%の比率だった。語学学校あるあるだとは思うが、日本人がいると日本人同士でつるんでしまう。そのほうが圧倒的に楽なのだ。なんとか別の国の人と仲良くなろうと話しかけても、お互い片言の英語で薄いコミュニケーションしかとれない。韓国人は韓国人同士でつるみ、他の国の人を寄せ付ける空気がない。しかも、結束力がむちゃくちゃ固い。彼らはご飯も休み時間もずっと一緒だ。
あと、年齢差もでかい。韓国人の平均は22~25歳くらい。日本人は企業からの派遣がほとんどで平均年齢30歳くらいだった。
俺は、他の国の人たちと仲良くなるのに興味があった。とりあえず、挨拶が大切だ。そう思い、クラスメイトの韓国人や台湾人とすれ違うと「ハーイ!」と声かけをしていた。
毎日挨拶をしていると、徐々に「ハーイ、ゴッツ!」と言ってくれるようになってきた。名前を覚えてくれている。うれしかった。

日曜日の深夜一時過ぎ、勉強が終わった後、この連載の原稿を送るため、Wi-Fiが繋がるカフェテラスに向った。すると、韓国人男子グループが韓国のDVDを見ながら盛り上がっていた。カフェの席は彼らが我が物顔で占領中。その中心には25歳くらいのイケメン韓国人ケイがいた。学校初日、英語が全くわからない俺に

「Are you Stupid ?(アホか?)」

と言い放ち、バカにしたやつだ。彼はどうやら韓国人グループのリーダー的存在のようで、奴の周りにはいつも多くの韓国人が集まっていた。
俺は、バカにされた後も必ず、ケイに会うと「ハーイ、ケイ!」と挨拶をしていた。しかし、ケイはいつも無視。愛想笑いもない。ふざけたやつだ。年上だぞ! 46歳のバツイチだぞ!

その夜、俺は席がないので立ったままノートパソコンを持ち、Wi-Fiにつないで原稿を送ろうとしていた。しかし、フィリピンのネットはメチャクチャ遅くイライラしていた。
すると突然、韓国人の笑い声がぴたりと止み静かになった。
日本人の俺がいるのを察したようだ。
突然、ケイが俺のとこに近づいてきた。なんだ? 俺は臨戦態勢に入った。今度バカにしてきたら言い返してやろう。なめられる振りもここまで。ここでやらなきゃ日本人の恥だ。ケイは俺のすぐにそばまでやってきてこう言った。

ケイ「ゴッツ」

なんだよ?

ケイ「シットダウン」

椅子を差し出した。

ん?

そして優しく微笑んだ。
どうやらずっと立ちっぱなしの俺に気を遣い、席を譲ってくれたようだ。

俺「…サンキュー ケイ!」

俺はお礼を言い、席に座った。
なんだこれは?
またバカにしてるのか?
それとも、お年寄りを敬う儒教文化か?
向こうからしたら20コも上の俺はお年寄りにみえるのか?

韓国人グループはまたワイワイと盛り上がり始めた。
俺は中心にいるケイを見ると目があった。
すると、向こうはニコリと目で笑いかけてきた。
俺はぺこりと頭を下げた。
ケイも俺を真似てぺこりと頭を下げた。
そして二人でくすりと笑った。

翌日から、韓国人グループの反応が変わった。
俺が「ハーイ」と声をかけると「ハーイ ゴッツ」と俺の名前を呼んでくれるようになった。
俺はケイに会うと結構強めのパンチをした。
「ノー ゴッツ!」
ケイはそう言って笑う。もうここまできたら日本の男付き合いと変わらない。
自慢じゃないが、俺は男にだけはモテる。言葉がうまく伝わらない時はパンチ。新しい韓国の男友達ができると、俺は結構強めにパンチをした。皆、最初は戸惑うも結局は笑う。男は単純でいい。

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「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

韓国人のケイと

そんなある日のこと。
授業と授業の合間の休憩時間、長椅子に座って次の授業の予習をしていると、隣にアナベルの親友ジェーンが座った。すると、アナベルが俺の前を通り過ぎジェーンの隣に座った。ちらりと横を向くとジェーンと目が合う。
俺は少しビビりながら「ハーイ」と声をかけた。
するとジェーンもニコリと笑い「ハーイ」と返事をした。

俺   「マイネーム イズ ゴッツ」
ジェーン「アイノウ、アイノウ」

えっ……。アイノウ……。
どうやら俺の名前をすでに知ってるようだ。
狭い学校に6週間も一緒にいるのだから、知っていてもおかしくない。

俺   「ホワイ ヅーユーノウミー」
ジェーン「ゴッツ イズ フェイマス」

どうやら韓国人グループの中で俺は有名なようだ。
あくまでもナチュラルにアナベルのほうをチラ見すると、彼女はこちらの話を真剣に聞いている。

ドキッとした。
初めて近くでアナベルを見た。
やっぱり可愛い。

しかし、お互い拙い英語力。
会話が続かない。
もどかしい。
だが、ここで急にパンチをしたらただの変態だ。

俺   「ハウアバウト ウィークエンド?(週末はどうするの?)」
ジェーン「アイ ウィル ゴーツー ザ ボホールアイランド(ボーホール島に行く予定よ)」
俺   「レアリー?ミーツー(本当に? 俺もだよ)」

俺はこの週末の休みを利用して、日本人男女6人グループとボホール島に一泊二日で旅行する予定を決めていた。

俺   「ジョイン アス!(一緒に遊ぼうよ!)」
ジェーン「アイ ヒアー マイ タイワニーズ フレンド(台湾人の友達に聞いてみる)」

俺はカカオトークを使って、ジェーンと連絡先を交換した。
アナベルはその様子を黙ってじっと見ていた。
俺はこのときも雰囲気に負けてアナベルに一言も話しかけられなかったが、心の中では大声で叫んでいた。

「やったーー! アナベルとデーーーーートだぁ!!!」

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アナベル(左)とジェーン(右)

週末、ボホール島に到着。
さっそく、カカオトークでジェーンと連絡を取り合う。
どうやら宿泊するホテルの場所が近いようだ。
昼間はチョコレートヒルズ、ジップライン、イルカウォッチングなど休日を楽しみまくった。
そして、俺のテンションはマックスに上がっていた。

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「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

テンションMAXな俺

「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

ボボール島のキレイなビーチ

「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

風光明媚なボボール島

夜になりみんなでホテルにチェックインした。金額を抑えるため6人一部屋、男女混合で雑魚寝だ。部屋を探しつつ、海辺のレストランを通り抜けようとした時、遠くに見たことのある顔が。

アナベルだった。

アナベルが笑いながら食事をしていた。その隣にはジェーンもいる。
だが、その周りには台湾人のロイをはじめとする男のグループががっちり彼女たちをガードしていた。
日本人グループのかほさんが言うには、台湾人の男はかなりグイグイと強引に女性を口説くらしい。どうやらかほさんも台湾人の猛烈なアプローチを受けているようだ。
俺はそのグイグイグループの横を通り過ぎようとした。
しかし、台湾人のロイが「絶対に交わらないぞ!」というオーラを出しているので、話しかけることのできる空気は一切ナシ。また、こちらの日本人グループも外国人グループと交わって盛り上がろうなんて気持ちもサラサラないよ、というオーラを出していた。めちゃくちゃ合流したかったのは、俺だけだった……。

しかし、あちらのグイグイとこちらのサラサラ、そんな両グループの気配を敏感に感じまくってしまった俺は、グイグイグループの横を通り過ぎる時、彼らの存在を完全に無視して通り過ぎてしまった。本当は混じりたいのに、それをうまく表現できない俺は、思わず無視してしまったのだ。

なぜだ。なぜなんだ。
俺は中学生か。
思春期がまた始まったのか。
なぜこんなにも合流したいのに、
無視して通り過ぎてしまったんだろう。
なぜこんなにも好きなのに、
全然話しかけられないんだろう。
ど~して~
君を好きになってしまったんだろう。

東方神起ぽいフレーズで後悔してみても
すべては後の祭りだ。

俺は部屋でじんわり後悔し尽くした後、レストランに戻ってアナベルの姿を探した。
しかし、グイグイグループはもうどこにもいなかった。

その夜はビーチサイドで久しぶりに結構な量のお酒を飲んだ。
しばらく酒を飲んでないからか、ベロベロに酔っ払ってしまった。
俺は海を見ながらアナベルに思いを馳せる。
そして、酔った勢いでジェーンにカカオトークした。

俺   「もうホテルに帰った?」
ジェーン「はい」
俺   「一緒に飲もうよ」
ジェーン「ごめんなさい。台湾人の友達がこっちのグループだけで飲もうと言ってます」

くそ、ロイの野郎……。
でも、あのチャンスをふいにしたのは俺だ。
あそこでロイたちが放つグイグイに負けず、「ハーーイ!」と話しかけていれば、今頃アナベルと楽しくおしゃべりできてたかもしれない。
酔っぱらって気が大きくなっていた俺は、さらにカカオトークを続けた。

俺   「そっちのホテルにビーチバーがあれば皆で行くけど!」
ジェーン「もうすでにたくさん飲んだから来なくていいです。また月曜日に」
俺   「…了解 また月曜日に」

翌朝、カカオトークを見て真っ青になった。
改めてみると、これ、ただのしつこいオヤジじゃねーか!

月曜日、学校に行くといつもは優しく笑いかけてくれていたジェーンが目を合わさなくなった。どうやら完全に嫌われたらしい。ジェーンとは自習室の席が隣なのに。
どうやらしつこいオヤジは世界共通で嫌われるようだ。
ジェーンといつも一緒にいるアナベルも当然のように目を合わせてくれなくなった。

まだ一度も話すらしてないのに、俺はガッツリ嫌われた。

俺は勉強に邁進するしかなくなった。
時間が足りないくらいやることがあるのは、気が紛れる。
次の課題は発音とリスニングだ。歳のせいか、どうもこれが苦手だ。
ドミトリーに戻ると、映画「ミッション:インポッシブル」DVDの字幕付きをシャドウイングしたりした。シャドウイングとは英語を聞いて、その後にすぐに真似をしてしゃべる英語の練習法だ。しかし、これがどうにも速すぎてついていけない。ラブシーンはゆっくりで聞き取れるのだが、トム・クルーズは俺の英語上達というミッションをすぐにはポッシブルにしてくれなかった。

「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

「ミッション:インポッシブル」でも猛勉強

俺は先生にどうやって英語の発音を覚えたか聞いてみた。先生たちのほとんどは歌の歌詞で勉強したらしい。俺は中学校の時、バスケ部の植木と覚えた映画「卒業」の結婚式で花嫁を奪い取るシーンにかかる、サイモン・アンド・ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレント」をダウンロードし、練習をした。

学校も7週目に入った。
黒魔術の惚れ薬を授けてくれた旅のメンターであるさとみさんが、結婚をするためについに学校を辞めることになった。さとみさんは途中から日本語の文法を教えてくれていたのだが、旅先で出会ったスペイン人との結婚で寿退社するため、9限目の授業が急きょお休みとなってしまった。
だが、9限目はプレミアムクラスと呼ばれるクラスで、好きな授業を取ることができる。俺はスティーブ・ジョブズが大学で卒業に関係ない文字芸術(calligraphy)という授業に巡り会い、そのセレンディピティが後にマッキントッシュのフォント開発に役立ったという話を思い出した。
今まで英語力が伸ばすため、効率だけを追求し、授業を取ってたけど、「毎日いろんな授業を受けてみるのも楽しいかも」と初めて思った。

俺はその日からさまざまな授業に参加してみることにした。TEDのムービーを見て、そのテーマで議論をするクラス。字幕なしの映画を観て、台詞から会話を学ぶクラス。発音だけに特化したクラス。いろいろ受けてみると、知的好奇心が刺激され、くたくただけど毎日が楽しくなってきた。
「今日は何の授業を受けようか?」
ある日、そう悩んでいると、大きな歌声が耳に飛び込んできた。そこはポップソングクラスというクラスで、英語の歌を唄って勉強するクラスだ。先生から音楽は発音の勉強になると聞いていたので、受講してみることにした。
教室を覗くと、若い女の子たちが7~8人と男の子1人がすごいノリで歌を歌っていた。ちょっと気後れしながらも、勇気を出して中に入ってみた。
すると、「イエィーーー!!!!」という黄色い歓声を受けた。

やばい。これはかなり恥ずかしい。

美人先生のフェイスもノリが良く、自己紹介の代わりに一曲歌えと言う。しかもアカペラで。
自慢じゃないが酒も飲んでないのにアカペラで歌うなんて、中学校の音楽の授業以来やったことがない。
周りの掛け声を聞くと、英語じゃない。ここにいるのは韓国人女子グループのようだ。
死ぬほど恥ずかしいが、ここで教室を飛び出るのは、もっと恥ずかしい。
なんかこの圧倒的なノリの中で覚悟を決めた。

「やったれ!」

俺はサザンオールスターズの「いとしのエリー」を、桑田佳祐のモノマネで真剣に歌った。
伝わるかどうかなんて考えてる暇もなく、とにかく本意気で熱唱した。

♪エリー マイラブー エー エーーーー エーリィィィィィーーー

歌い終わると歓声と大拍手が起きた。
俺は恥ずかしさからの解放と一曲アカペラで歌い切った興奮で、脳内にアドレナリンがドクドク出るのを感じた。
少し冷静になったので、恥ずかしくて全然見れなかったクラスメイトの顔を見回した。

「えっ、ウソ? アナベルがいる!」

なんとその韓国人女子グループの中に、憧れのアナベルがいた。

俺は、アナベルの前でサザンオールスターズの「いとしのエリー」を全力で歌ってしまったのだ。

「恥ずかしすぎる」

しかし、拙い英語より一生懸命に唄いきった俺の歌が、皆の心をとらえたようだ。
俺は恥ずかしさから逃げるため、魂が震えるほど真剣に歌った。
結果として、その魂は、国籍、年齢、言葉の壁を一気に飛び超えたのだ。
俺が改めて自己紹介をすると、矢継ぎ早に「仕事は?」「彼女はいるのか?」「好きなタイプの芸能人は?」など合コンのような質問が飛んできた。その流れで、憧れのアナベルが俺に質問した。

アナベル「ゴッツー ヅー ユー ハブ ア チャイルド(子供はいるの?)」

アナベルは俺の名前を知っていた。
そして、俺は子持ちに見えるらしい。

俺 「ノー」

アナベルは大きく頷いた。
ずっと話したいと思っていた女性と初めて交わした言葉が「子供いるの?」ってなかなかシュールだなと心の中で突っ込んだ。

でも、なんかこのクラス楽しい! 俺はポップソングクラスに参加することを決めた。
それから毎日、9時限目のポップソングクラスの時間が来るのが楽しみになった。このクラスは2日で一曲を覚え歌う。曲は先生のフェイスが選ぶ。Jessie J with Ariana Grande and Nicki Minaj の「Bang Bang」や Maroon 5の「Sunday Morning」が課題曲だ。俺は授業と授業の休み時間もずっとイヤホンで曲を練習していた。そして、コーヒーを飲みながら、つい口ずさんでいると、突如、後ろから韓国人女子グループがアカペラで一緒に歌ってきたりした。どうやら歌を通じて嫌われていた韓国人女子グループと仲良くなることができたようだ。
ただ、年齢のギャップをしばし感じることもあった。フェイスが「今日はこの曲ね!」と新しい歌をかけると、若い女子たちは2回で曲をモノにしてしまう。俺も若いころなら、テレビから流れる曲を一回聞いたら記憶していた。

今は、10回聞いても覚えられない。
ラップの部分は口が回らない。
ついでにリズムにもついていけない。

「言語学習は耳がいい若い時に始めたほうがいい」とよく聞くが、それを実感した瞬間だった。
だが、年齢や国籍、言語の壁は歌を歌えば歌うだけ吹っ飛んでしまうようで、俺たちはご飯も一緒に食べるほど仲良くなっていった。カカオトーク事件で嫌われたかに見えたジェーンやアナベルも、すれ違うと「ハーイ ゴッツー!」と挨拶してくれるようになった。

「歌ってすげーな!」

「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

仲良くなったクラスメイトたちと

「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

さらに仲良くなったクラスメイトたちと

ここに来て、英語学習以外に大切なモノを学んだ気がした。
しかし、楽しい時間はあまりにも過ぎるのが早い。
せっかくみんなと仲良くなれたのに、そろそろおかわりした一か月が終わりを迎えようとしている。留年した俺の、二度目の卒業のシーズンである。
卒業予定日は12月24日。クリスマスイブである。
俺は次の旅先をタイに決めていた。「キリストの誕生日クリスマスイブに仏教の国タイではどんなクリスマスが行われているんだろう?」という興味が湧いたからだ。しかし、アナベルと仲良くなった今は、アナベルと一緒にクリスマスイブを過ごしたい。そんなふうに気持ちが変わった。

「だったら旅立つ日を延期すればいい!」

スケジュールに縛られないのが一人旅の醍醐味だ。そう思い、俺は学校に延泊のお願いしてみた。すると、「クリスマス休暇の28日まで学校にいてもいいよ」と了承して貰えた。

だが、延泊したのはいいが、クリスマス休暇の予定は白紙である。クリスマス休暇の直前には卒業テストがある。もう、「レベルが上がらなかった」なんて展開は誰も期待してない。ちゃんと成績を残して、アナベルとクリスマスイブを過ごし、卒業を迎えたい。そんなふうにモチベーションを変え、ラストスパートで猛勉強をした。

クリスマス休暇の3日前。2回目のレベルテストを受けた。
今度は試験官が英語で喋る諸注意が聞き取れた。
これだけでも進歩である。
テストを受けると、比較的簡単に思えた。
また、時間配分を失敗し、長文を2問残したが、前回よりは手応えを感じた。

結果は51%/100点、レベル3に昇格した!

【初日のレベルテスト】結果:レベル2(34.63%/100点)→【1か月後のレベルテスト】結果:レベル2(40%/100点)→【さらに1か月後のレベルテスト】結果:レベル3(51%/100点)

ラスト1ヶ月で11%の伸び。2か月では16.37%上達した。
正直、納得のできる結果ではないし、やはり英語学習はそんなに甘くないんだと痛感した。
けど、勉強すればするほどちょっとずつ伸びていく。
英語を理解すればするほど外国人との親交が深まっていく。
そんなことを肌身で感じられた2か月だった。

「勉強って楽しい!」

なぜ若い頃にこの境地に至らなかったのか? 俺は深く後悔した。が、そんなこと言ってもしょうがない。やれば少しずつだが伸びる。この経験は絶対に忘れないようにしよう。
俺は「これからも継続的に英語を勉強する」ことを心に決めた。と同時に、さまざまな語学に対する興味がふつふつ湧いてきた。

先生にレベルアップしたことを告げると、自分のことのように喜んでくれた。一か月前、伸びない成績に落ち込んでいた俺を真剣に励ましてくれた。俺みたいなダメなおじさん生徒が、わずかに上達したことに対して、そこまで喜んでくれるんだ。先生の顔を見ていたら、なんだか少し泣けてきた。おじさんになるとどうも涙腺が緩んでしまう。

⇒【写真】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1035004

「♪エーリィィィィィーーー」――46歳のバツイチおじさんは桑田佳祐のモノマネで言葉の壁を超えようとした

自分のことのように喜んでくれた先生と

英語力ゼロのバツイチおじさんが多少なりとも英語力を身につけた。
そして俺は「世界一周 花嫁探しの旅」を完遂すべく、まもなくこの学校を卒業する。

翌日、ポップソングクラスの教室に向かっていると、俺以外の唯一の男子、22歳の韓国人のライアンが話しかけてきた。

ライアン「ゴッツー ハウアバウト クリスマス?(ゴッツ、クリスマスイブどうするの?)」
俺   「アイドントハブ プラン(予定ないんだよね~)」
ライアン「イフ ポシブル ゴー ウイズ カモテスアイランド(良かったらカモテス島に行かない?)」
俺   「イエス!グッド(いいね~)」
ライアン「レアリー?ゴッツー グッド!グッド!(マジ!?ごっつが来てくれるなんて超最高)」

そのままポップソングクラスに入ると、ライアンは「ごっつもカモテス島にジョインするぞ! しかも日本人一人で」とクラスメイトに報告した。すると、ポップソングクラスの女子グループが「イエーィ!」と狂気乱舞した。その喜んでる中にアナベルもいた。

「アナベルもカモテス島行くんだ!!!」

まさに棚からぼた餅、ライアンからアナベルである。
まさか、直接誘ってもないのに、アナベルとクリスマスを過ごせることができるなんて。
これは、この2か月間、スパルタ式英語合宿を頑張ったご褒美なのかもしれない。

俺はこの二泊三日のクリスマス旅行を「卒業旅行」だと銘打ち、いろんなことをシュミレーションした。そして「アナベルに告白するならここしかない」という結論に達し、俺は綿密な戦略を練り始めた。

次号予告「ついに告白!? クリスマスの夜にバツイチおじさんが流したものは嬉し涙かそれとも……?」を乞うご期待!

●後藤隆一郎(ごとうりゅういちろう)
後藤隆一郎IVSテレビ制作(株)のADとして「天才たけしの元気が出るテレビ!」(日本テレビ)の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」「トリビアの泉」「学べる!ニュースショー!」など数々の番組制作に携わる。現在はディレクターを休業し、「大体1年ぐらい」という期間限定で花嫁探しの旅に一人で挑戦中。バツイチ、46歳、通称ごっつ。

― 英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅」―

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