内定の決まった普通のAラン女子大生美琴――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

連続投資小説『おかねのかみさま』18回めです。
あまちゃんで言ったら500円玉拾うあたりです。

※⇒前回「得意料理」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる

〈第18回 コンプライアンス〉
(かみさまからの手紙、つづき)
テレビのバラエティ番組がひな壇タレントを便利に多用した結果、
美琴さんのような若者を中心に、
安易なツッコミをするだけのヒトが増えました。
その結果、ボケそのものも『ツッコミやすさ』が重視されるようになり、
その影響を強く受けた世の中の会話は、
いつのまにか間違い探しのように寒々しいものばかりになりました。

そんなクタびれた世の中で、
いま目の前でワインに呑まれてベロンベロンに突っ伏しているあなたは、
存在そのものが大ボケです。
人間らしく、だらしなく、荒削りであり、巨乳です。

あなたの人生にありきたりのツッコミをするだけの友人は、
一生つまらない間違い探しをあなたに仕掛けてくることでしょう。

そしていつの間にか、自分のやりたかったことを忘れ、
気がついたときにはあなたとの距離を妬むだけの人になるでしょう。

美琴さん。

ものの値段も、モテるという現象も、全ては需要と供給です。

波乱万丈が約束されたあなたの人生は、
このつまらない世の中で間違いなく希少価値のあるものになり、
優しさや人を助ける気持ちなどを身に付けたりしながら、
とても貴重な存在に育っていけることと思います。

そして幸運なことに、あなたの意思とは関係なく
あらゆる出来事に巻き込まれていくことが想定されますので、
勇気も決心も必要ないまま、
いつの間にか群衆を卒業していけることになるといいね。
と、心から成長を願っています。

ということでシニガミさんをよろしく

おかねのかみさまより

※    ※    ※
「…」
「…」

「…」
「…」

「…」
「ヤ…」

「…」
「ヤキトリサメチャウ…ヨ…」

「…」
「…」

「…」
「ヤキト…」

「大丈夫。大丈夫です。大丈夫。大丈夫。あたしは内定の決まった女子大生なの。大丈夫。華やかな生活なんか望まない、私の努力なりの幸せを手に入れる普通のまじめな学生なの。波乱万丈なんてない。サボったりもしない。あと、えーと、そう、きっと仕事だってすぐ覚えられるし、皆勤賞だってとっちゃう。目立たずしっかり仕事をして、早めに仕事を終わらせて、資格とかとったり、大丈夫。なーんにもかわらない。大丈夫」

「ヨカッタ♪」
「…」

「デンワナッテルヨ」
「あ、はい」

「もしもしみことちゃん?あのね、お見合いしない?」
「しない」

ガチャ

「!?」

「あたしわかったの。波乱万丈っていうのはいろんなものに関わっていくから起きるわけで、こうやって予定以外のことを全部断ってたらなーんにも問題ないの。大丈夫。もう大丈夫。だって予定があるんだもん。予定どおりに勉強して、大学もいいとこ受かって、ちゃんと単位もとってここまで来たんだから間違ってないの。だから死神さん、たぶんあたしと居てもおもしろいことなんかなーんにも起きないとおもいますよ。だってあたし普通だか…」

「デンワナッテルヨ」

「はいもしもし」

「こんにちは、先日はありがとうございました。採用担当の沼田です」

「あ、はい、こちらこそ。一生懸命がんばりますので今後共よろしくお願いします!」

「はい。そのことなんですが、さきほど当社の粉飾決算が豪快にバレまして、コンプライアンス上マズいだろうということにコンセンサスがアグリーしたもんですから、私としてもなんとか妥協点を探りつつ学生のみなさまのベネフィットをコンシダーしておりまして」

「はい」

「つきましては今回のエンプロイメントオファーをリトラクトさせていただけないかと」

「文字通り意味がわかりません」

「内定の取り消しでございます」

「!!!」

「アー」

「ちょ、」

「私共としても大変心苦しい決断ではございますが、なにぶん私自身もこのあと転職活動が控えておりまして、お力になることができません」

「でも!わたし!何もわるいことしてないのに!」

「申し訳ございません」

「…」
「…」
「…」

「…あの…」

「はい」

「わたし、どうなるんでしょう」

「…会社として、お手伝いできることはないんですが…」

「はい…」

「あくまで私の個人的な意見でもよろしければ…」

「お願いします」

「…私も今回会社を去ることになるんですが、実は今朝方4時間かけて通勤してきたんです。昨晩から大雪振ってましたでしょ。あれの影響で。もうこの会社に勤め始めて20年になるんですが、一度も欠勤したことがなくて、もちろん電車が遅れたりすることもありましたが、そんなときは遅延証明書をしっかりいただいて、毎日欠かさず会社に来てました」

「はい…」

「で、今回出社して、元々知っていた問題が明るみになって、あー。ってなって今に至るというわけなんですが、会社がピンチのときに、会社のことを心配できなかったんです」

「はい…」

「つまり自分のことが心配で、会社のことまで気が回らなくて…」

「でも、それは仕方ないことですよ。私だって、いまは自分のことしか考えられなくなってますし、誰だってそうだとおもいます」

「そう。そうなんです。誰だってそうなんです。つまり、お客さんもそうなんです」

「おきゃくさん?」

「はい。お客さんも、より安くて良いものを求めるのがあたりまえなので、私がガマンして出社してることとか皆勤賞だったりとかはお客さんに関係なかったんです」

「でも!すごいですよ!マジメに出社するのって、社会人としての基本だと思います!」

「ありがとう。でもそうやって褒められちゃったから、時間だけ過ぎちゃいました。結局私がやってたことは、社会人なら誰でもやってることで、それ自体、お客さんにとってうれしいことをしていたわけではないんです。だから、今の私から言えるのは…」

「はい…」

「働いたら負けかなとおもってる」

「!!!?」

「それでは、良い人生を」

ガチャリンコ

次号へつづく

【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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