3人の“世界チャンピオン”がいた時代――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第28回

「フミ斎藤のプロレス講座別冊」月~金更新 WWEヒストリー第28回


 ボブ・バックランドは、5年10カ月にわたってWWEヘビー級王座を保持した(1978年2月20日~1983年12月26日)。バックランドがニューヨーク・ニューヨークの主役をつとめた1970年代の終わりから1980年代前半は、アメリカのレスリング・シーンにNWA、AWA、WWFのメジャー3団体が共存した最後の時代だった。

3人の“世界チャンピオン”がいた時代

ボブ・バックランドがチャンピオンだった5年10カ月間は、NWA、AWA、WWEのメジャー3団体が共存した最後の時代だった。(写真は米専門誌「リングス・レスリング」1979年11月号表紙)

 ニューヨークを中心とする東海岸エリア全域とカナダの一部を活動エリアとするWWE(当時はWWEワールド・レスリング・フェデレーション=世界レスリング連盟)のチャンピオンはバックランド。

 北部ミネソタ、ウィスコンシン、シカゴ、カナダ・マニトバ、ネブラスカ、コロラド、ネバダから西海岸の一部までを活動テリトリーとするAWA(アメリカン・レスリング・アソシエーション=アメリカン・レスリング協会)の世界チャンピオンはニック・ボックウィンクル。

 ミズーリ、カンザスの中西部セントラル・ステーツからテキサス、テネシー、アラバマ、ジョージア、南北カロライナ、フロリダまでの南部諸州、プエルトリコ、メキシコまでをカバーするNWA(ナショナル・レスリング・アライアンス=全米レスリング同盟)の加盟団体が公認する世界チャンピオンがハーリー・レイス。

 アメリカのプロレス雑誌はそのほとんどがニューヨークの出版社が発行するものだったが、どのマガジンにもWWE、AWA、NWAのベスト10ランキングと各地の試合結果が公平に掲載されていた。

 1980年代前半にビデオデッキとケーブルテレビがアメリカじゅうの一般家庭に普及しはじめるまでは、映像としてのプロレス、テレビに映るプロレスはそれぞれの地方でオンエアされるローカル番組がメインだったから、たとえばテキサスのプロレスファンがニューヨークのプロレスと接する機会はほとんどなかったし、フロリダのプロレスファンがセントルイスのプロレス番組を観ることもまずなかった。

 ニューヨークやロサンゼルス、シカゴといった大都会に住む中級レベル以上のマニア層は、プロレス番組が集中する週末の深夜の時間帯になるとテレビのUHFチャンネルをひねったりアンテナをいじったりしながら、知らない土地の知らないプロレスを偶然、“発見”しようとした。

 そんなのどかな時代に、バックランドは何度かの“世界統一戦”を体験した。中立エリアのカナダ・トロントで実現したニックとのWWE&AWAダブル・タイトルマッチは、両者カウントアウトという予想どおりの試合結果に終わった(1979年3月25日)。

 バックランドとNWA世界王者レイスはおたがいのタイトルをかけてニューヨークとセントルイスで2回、闘った。マディソン・スクウェア・ガーデンでおこなわれた第1戦はレイスが反則負けとなり(1980年9月22日)、キール・オーデトリアムでおこなわれた第2戦はバックランドが反則負けを喫した(1980年11月7日)。試合結果そのものよりも、実現することに意義のあるタイトルマッチだったのだろう。

 NWA世界王座がレイスからダスティ・ローデス、ローデスからリック・フレアーに移動したあと、バックランドはNWAエリアのジョージア州アトランタでフレアーともダブル・タイトルマッチをおこなった(1982年7月4日=ジ・オムニ)。この試合もまたダブル・カウントアウトという結果でバックランド、フレアーがそれぞれ王座防衛に成功した。

 ケーブルテレビとビデオデッキの急速な普及は、レスリング・ビジネスのあり方を根底から変えようとしていた。ガーデン定期戦がMSGケーブルの電波に乗って全米でオンエアされるようになった。

 アトランタのUHF局WTCG(ターナー・コミュニケーション・グループ)がケーブル局WTBSに模様替えし、全米中継のプロレス番組“ワールド・チャンピオンシップ・レスリング”が出現した。ビンス・マクマホン“ジュニア”が興行会社キャピタル・レスリング・コーポレーションの全株式を父ビンス・マクマホン・シニアから買収したのはこのころだった。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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