「株安で年金資金が溶けた!」と騒ぐバカにモノ申す【経済ブロガー・山本博一】

連載25【不安の正体――アベノミクスの是非を問う】

8兆円の損失? それが何か?

「国民の老後の蓄えが犠牲になった。自民党はどう責任を取るのか?」

 野党やマスコミ識者からこんな頓珍漢な批判が飛び出しています。これは昨年7~9月期の年金資金の運用損失が7兆8899億円にのぼったことを受けての言動ですが、次のグラフを見てください。

年金積立金の累積収益額[億円] 図1は年金積立金の累積収益額の推移です。安倍政権発足後からその運用益はうなぎ登り。今回の損失分を差し引いてもまだ31兆円の利益が出ています。

 2012年度はまだ民主党政権だったじゃないか? という指摘があるかもしれませんが、2012年度の前半部分の運用益はマイナスです。運用益が跳ね上がったのは、野田前首相が解散宣言した後なので、2012年度の運用益は、民主党の功績ではありません。

 しかし、民主党は確実にブーメランになるこんな批判がよくできるなと、呆れてしまいます。株価の下落や年金の損失を嘆くなら、その100倍は消費税増税を批判していただきたいもの。まったく役に立たない野党です。

 また、冒頭で「頓珍漢」と述べたことには理由があって、おそらく今回の年金積立金の運用損を批判している人は、なぜ政府が年金資金の運用比率の見直しを行ったのか、その理由をまるで理解していないからです。

 政府がなぜ株式運用のウエイトを高めたのか、その理由について説明しましょう。

政府が株式の運用比率を高めた理由

 これまで年金資金の運用の60%が国債などの、元本割れのリスクが低い債券で運用され、リスク資産とされる国内株式は12%の比率でした。が、昨年より国内債券は35%に減少、国内株式は25%に上がりました。

 この運用比率の変更を、野党は「国民の老後の資金を株というギャンブルにつぎ込むのは言語道断!」と批判しました。しかし、批判している方々はデフレを脱却してインフレに突入していく日本において、どうやって国民の資産を守り育てていく算段なのでしょうか?

 一般に、債券と株式証券の価値にはトレードオフの関係があります。債券価値が上がれば、株式が下がり、株式が上がれば債券の価値が下がる傾向にあるのです。

 基本的に、景気が悪くなるとリスク資産である株式が敬遠され、安全資産である国債などの債券に人気が集まり、デフレ期は債券の価値が上昇しやすく、株価は低迷します。

 一方、デフレを脱却し、インフレになると今度は金利が低く利益を確保しにくくなった債券の価値が下がり、株式の価値が上昇するのです。

 要は、政府はデフレ型の運用比率を見直し、この先日本に訪れるであろうインフレ型の経済に対応した。ただそれだけなのです。

 もし、日本政府が昨年年金運用の比率の見直しを行わずに、債権の比率60%のままインフレに突入してしまったらどうなるか。おそらく、利益を出しにくい国債債券を大量に抱えているため、儲けの機会を失ってしまうことになります。

 これは中長期目線で見れば、我々国民の資産を大きく毀損することになるのではないでしょうか?

 日本が2%のインフレを達成すると、そのインフレ率にスライドして年金の支給額が増えていくことになります。それに加えて、高齢化によって年金を受給する人が今後増加するので、単純に年金支給額は年々増えます。

 年金の運用比率を見直さないままどうやって対応するつもりなのでしょうか。ならば、デフレをこのまま維持しますか? それとも年金保険料を引き上げますか? まさか、消費税を増税して年金にあてるつもりですか?

 批判するのであれば、この将来の「儲けの機会損失」に対応できる代替案を提示すべきです。批判だけならバカでもできます。

年金を心配するのなら、消費税増税こそ批判すべき

 昨今の株価下落の直接的な要因は、中国の経済危機を発端とした、世界同時株安です。ところが、中国の危機は言わば「もらい事故」「巻き込まれ事故」。他人が引き起こした事故なので、日本政府に防ぐ手段はなく、対策にも限界があります。

 一方で国内の消費を低迷させ、日本経済を蝕んでいる真の元凶である消費税増税は、日本政府が自ら犯した失策です。やろうと思えばリカバリは可能です。

 消費増税は明らかな安倍政権の政策ミスです。野党やマスコミはなぜこれを批判しないのか、理解に苦しみます。

 先程も説明しましたが、今回の年金資金の運用比率の見直しは、デフレを脱却してインフレになってこそ効果を発揮します。もし、2017年に消費税を10%に増税した場合、確実にデフレ経済に逆戻りするでしょう。

 今はまだ、安倍政権になってからトータルで31兆円の年金の運用益が出ていますが、増税をするとすべて消し飛ぶ可能性が考えられます。

 本当に将来の年金を心配するのであれば、消費税の増税を批判すべきなのです。

まとめ
年金の運用比率の見直しは、将来のインフレを見越してのもの
比率の見直しを行わずにインフレに突入した場合、損失が出る可能性が高い
その場合、将来の高齢化、物価の上昇による年金支給額の増加に対応ができない
本当に将来の年金を心配するのなら、景気を悪化させ、株価を低迷させている元凶、消費税増税を批判すべき

【山本博一】
1980年生まれ。経済ブロガー。ブログ「ひろのひとりごと」を主宰。医療機器メーカーに務める現役サラリーマン。30代子育て世代の視点から日本経済を分析、同世代のために役立つ情報を発信している。近著に『日本経済が頂点に立つこれだけの理由』(彩図社)。動画配信番組「チャンネルくらら」の『ゆる~く学ぼう!日本経済』に出演中。4児のパパ

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