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これは資本主義社会の縮図だ! 成功する実業家・投資家がポーカーにハマるわけを実証【SPA!ポーカーカップ開催】

 日本型雇用システム崩壊のあおりを受けて……といえば少々大袈裟ですが、「会社=家族」という認識、風潮が過去のものとなりつつある昨今、社員旅行、ゴルフコンペ、社員対抗運動会など、いわゆる“社内行事”的なイベントは減少の一途を辿っているようです。  そこは、一介のサラリーマン集合体であるSPA!編集部もご多分に漏れず……ではあるのですが、編集部内で急激に部員数を伸ばしている種目があります。それは、ここ数年、国内でも競技人口を増やし続けているポーカー。40名ほどの編集部をざっと見渡したところ、ポーカーに興じるプレイヤー数は7名ほど。ゴルフ、釣り、登山といった、会社員のメジャーな趣味を押しのけて、堂々の第一党、保守本流の趣味がポーカーなのであります。 成功する実業家・投資家がポーカーにハマるわけを実証 ここでいうポーカーとは、正式名称をテキサス・ホールデム・ポーカーといいます。ポーカーの記事を書くたびに、日本で一般的に普及しているドローポーカーとの違い云々を書いていたのですが、そろそろコピペを繰り返すことにも飽きてきたので割愛します。詳しくは以前紹介した「5分でわかる『テキサス・ホールデムポーカー』のルール」をご参照ください。  競技人口が増えてきたとは先述しましたが、まだまだ囲碁・将棋・麻雀等、メジャーな頭脳ゲームの足下にも及ばないマイナーゲームのポーカー。SPA!編集部に愛好家が多いのも、「どうせ趣味にするならメジャーよりもマイナー競技」という、“サブカルクソ野郎”的な気質が表に出ただけであって、統計的な有意性は何一つありません。  が、4年ほど前からひょこひょこと国内外のポーカースポットに顔を出す筆者は、ポーカープレイヤーにある種の共通点があることに気付きます。それは、成功した実業家や投資家などにポーカー愛好家が多いという点です。仲良くなったポーカープレイヤーの自宅にお呼ばれしてゲームに興じることもありますが、そこは、家賃の額を聞くこともためらわれるほどの高級タワーマンションで行われるのが常なのです。  さて、この理由について、以下の2つの推測が成り立ちます。 1. ポーカーの主戦場は海外。お金と時間に縛られない人たちの身の丈にあった娯楽である。 2. 投資、経営に似た要素が、ポーカーというゲームのそこかしこに内在している。  ポーカーを覚えたての頃、「1」が正解だと思っていました。が、ゲーム性…というか競技の性質を理解するほど、「2」に近いと確信しています。海外で行われるポーカートーナメントは、短くて丸一日、長いもので一週間近くテーブルに座り続けるといった“競技上の性質”を持っています。世に数多ある娯楽のなかで、どれを選択してもいい富裕層の方々が、なぜこれほど忍耐を強いられる競技を選ぶのか。それは、ポーカーというゲームを、投資・経営のシミュレーターの一環として活用しているからにほかなりません。  資本主義の縮図ともいえるポーカー。ならばやはり、成功している経営者はプレイ内容も秀逸なのか。身をもって実証するために、SPA!編集部員が、連載等でなじみある経営者、そしてプロポーカープレイヤーと対戦する1DAYマッチを行うこととなりました。名付けて「第1回SPA!ポーカーカップ」。決戦の舞台は「センチュリーコート丸の内」です。シートカードをひいた結果決まった、テーブル上の配置は以下のとおり(敬称略)。 1 大川弘一 メルマガ「まぐまぐ」創業者。子会社上場、日本最短記録を保持 2 井戸 実 エムグラントフードサービス代表。通称・ロードサイドのハイエナ 3 花光雅丸 サブライム代表。首都圏を中心に200店舗超の飲食店を展開 4 プロギャンブラーのぶき 15年間世界中のカジノを放浪。世界を6周半 5 鎌田武俊 オモロキ代表。一発ボケサイト「bokete」などヒットアプリを開発 6 編集部員A(筆者) 7 SPA!編集長K 8 一ノ瀬公聖 オンラインポーカー最大手「PokerStars」とプロ契約 9 東大女子 東大医学部に在籍する現役女子大生。偏差値85 10 編集部員B 11 SPA!副編集長T
成功する実業家・投資家がポーカーにハマるわけを実証

シートナンバーは、ディーラーの左隣から順に1番、2番・・・と呼びます

 スキルで圧倒しているのは8番シート・一ノ瀬公聖プロでしょう。が、4時間半の短期決戦となれば、運の要素も大きい。そのうえ、少しでも勝率を高めるために、経営者チームはある“特殊ルール”を持ちかけてきます。それは、「オールイン(チップを全額賭けること)をしたらテキーラ一気飲み」というルール。  そのルールを聞いて、「まあ終盤まではチップを全額賭けるような勝負は避けておとなしくしてればいい」と全員一致で考えたSPA!チーム。思慮の浅さを自覚したときには、時すでに遅し――でした。序盤で大きくチップを稼がないことには、ブラインドとアンティが上がった終盤、アクションを求められるたびに「強制オールイン」を余儀なくされます。揃いも揃ってショートスタック(チップが少ない状態)になっていたSPA!チームは、涙目になりながらテキーラを呷って「オールイン」。一方、ビッグスタック(チップを多く持っている状態)はテキーラを飲み干すことなく、軽々とコール、もしくは降りることができます。
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なぜかアラレちゃんの帽子をかぶってプレイする東大医学部女子。左隣に一ノ瀬プロという不利なシート位置

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中盤の見どころ。場札は7、8、9でレイズ合戦に。SPA!部員の手札はTJでストレート完成。花光氏の手札は88だが、リバーに9が落ちてフルハウスが完成。ビッグポットを獲得した

成功する実業家・投資家がポーカーにハマるわけを実証

テーブルトークで場を盛り上げるのも技の一つ。4番シートの赤シャツ、プロギャンブラーのぶきのペースに見えたが……

 持つ者と持たざる者の差が出てくるのは資本主義の縮図たるポーカーの特徴の一つではありますが、持たざるものは酔いのせいで思考能力すらもおぼつかなくなるという二重の落とし穴です。結果、K3などという“クソ手”でオールインした筆者(6番シート)が、3つ隣に座る東大女子(9番シート)にペロッとコールされて討ち取られたのを皮切りに、なけなしのチップで「えいやっ」と“竹槍オールイン”を繰り返すSPA!チームは全員シートアウトです(涙)。  また、陽気なテーブルトークと勝率9割の攻めで着実にチップを増やすプロギャンブラーのぶき氏(4番シート)でしたが、ポーカーで勝ち続けて世界を6周半した実力も、「マイルだけで世界6周半」できる経営者チームの力量には及ばずか、シートアウト。
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JJvsk8は、プリフロップの段階でJJが72%のフェイバリット(有利)。しかし、運悪くフロップでKが落ちてしまう

 ブラフと本手を使い分け、誰よりもアグレッシブに攻め続けた一ノ瀬公聖プロは、ポーカーテーブルでの慣れない飲酒にペースを崩したか、テキーラオールインを気迫に結びつけることができず、最終ハンドはJJvsK8という有利なハンドをサックアウト(逆転負け)され、5位で終了です。  そんな具合にひとり、またひとりと敗退していき、ヘッズアップ(1対1)に進んだのは、井戸実氏(2番)と花光雅丸氏(3番)。  序盤に大きく勝負を仕掛け、終始チップリーダーだった井戸氏。ロードサイドならぬ“ポーカーテーブルのハイエナ”と化し、ショートスタックの竹槍オールインを次々と飲み込んでいました。特別、手が入っていたわけではなく、ショートを飛ばしたハンドはKT、A5、J9など、いわゆる3番手、4番手に属するハンドばかり。しかし、期待値的には理にかなった選択を続けていました。何より、ショートスタック相手にオールインで負けても、十二分に戦えるチップは残り続けるのです。
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優勝は井戸実(写真左)、準優勝は花光雅丸(右)の両社長。ちなみに、花光氏が持つSPA!は開催当時の最新号で、表紙大キャッチの「ブラック企業」うんぬんは関係ありません(笑)

 結果、井戸氏がそのまま優勝。利益を拡大していくには、少々のリスクもいとわない――そんな経営センスがそのまま実を結んだといえるでしょう。やはり、勝ち組実業家はポーカーにもそのメソッドをいかんなく発揮していたわけで。実業家・投資家がポーカーにハマる理由の一端が見えた気がしました。 <取材・文/スギナミ>
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