銀座のママの仕事観――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

連続投資小説『おかねのかみさま』もう20回めです。

※⇒前回「美熟女の誘惑」

〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる

〈第20回 頑張ったら〉
「…こんにちは」

「は、はい」

「よろしければ、あたし、ここからすぐ近くでお店やってるんだけど、今度面接にいらっしゃいません?」

「!!!」
「!!!」

「すごーい!!!お店って、クラブとかそういうところですか?」

「はい。13階にあるのでサーティーンスフロアって言うんですが、お嬢さんお二人ともとっても華があるし、もしよかったら短い時間だけでも見に来ていただけたらなーって」

「ハー」

「ウチはお客さんも紳士的な方ばかりで、半ズボンの方なんかはお店に入ることもできない高級店だからとっても働きやすいとおもうの」

「でも、わたしたち、もうすぐ就職しちゃうから。ねぇ美琴」

「…うん」

「あら…、残念。じゃあもし会社づとめが退屈になったりしたら、いつでも遊びにいらしてね。お嬢さんたちなら、初日から結構人気出ると思うから。いつでもお待ちしてます」

「…はい」

「ありがとうございまーす。お姉さんもお綺麗です!」

「うふふありがと。このお仕事してると、ずっときれいでいられるのよ」

「すてきー!」
「ステキー!」
「…」

「じゃ、またね」

※     ※     ※

「きれいなひとだったねー」
「ネー」

「ありがと♡」

「!!!」

「これ、連絡先渡すのわすれてたわ。もしまた銀座に来ることがあったら、この番号にいつでも連絡してね」

「ハイ!!」
「ありがとうございます!」

「またね♡」

「あーびっくりした。でもあたしたちクラブのおねぇさんなんて無理よね。きっと競争も激しいし」
「ネー」

「?」

「お化粧だってお洋服だって、すごくお金かかりそうだし」
「ウンウン」

「でも週一くらいなら行ってみてもいいかな」
「ソレモソウネ」

「面接だけでもいっちゃう?」
「イッチャウ?」

「あのー」

「なに?」

「ふたりって、言ってたよね」

「あたしとガミちゃん」
「ガミチャンDEATH」

「いやいや」

「なに」

「シニガミさんにできるわけないじゃない。モデルさんみたいなひととか、モデルさんのたまごみたいなひととかたくさんいるところなのよ」

「ヤル」

「ヤルって、そもそもシニガミさん女の子じゃないでしょ?」

「シクシク」

「あーあ、泣かしちゃった。別にいいじゃない。男でも女でも。こんなかわいい感じの人ってなかなかいないんだし、面接受けるだけなら誰だって受けていいんだから。美琴も一緒に行こうよ」

「…いや、あたしは、ひととしゃべるの苦手だし…ひとりでいるのが好きだし…就職も…決まったから…」

「…」

「あらそぉ?じゃああたしとガミちゃんだけで行ってくるね。あとから美琴が働きたいって言ってももう働かせてもらえないかもよ」

「…だいじょぶ」

「わかった。じゃあ電話してみる」

「ワクワク」


ぴぽぱぽぴ


「はいもしもし」

「あ、おねぇさん♪さきほどはどうもありがとうございました。あたしたち、あれからちょっと相談したんですけど、面接だけでも受けてみようかなって話になりまして、もし今からでもよかったらお時間いただけないかと」

「あら♡ありがと♪ちょうどいまFOXEYでお洋服見てるところだから、よかったら一緒に見ない? その後にお茶でも飲みながらどうかしら」

「わかりました!すぐにむかいます!」

「オー」

「みこと、ふぉくしーって知ってる?」

「…きいたことある」

「ガミちゃん知ってる?」

「ググル」

「おー」

「アッチ」

「よし。行こう」


FOXEY銀座本店


「いらっしゃいませ」

「イラッシャイマシタ」

「ドア開けてくれる人いるのね。すごい。あ、おねぇさん!」

「あら!早かったわね!」

「すごいお店ですねー。ほんとにきれい」
「でしょー♪これどうかしら?」
「とってもお似合いです♪」
「トッテモオニアイデス♪」

「ありがと♪」

「…」

「あたしね、ここのお洋服が本当に好きなの。銀座のママさんたちは着物の方も多いけど、あたしほら、あんまり和服が似合わないから、いつもここのワンピースを着てるのよ」

「おいくらくらいするんですか?高!」
「タカ!!!」

「うふふ。あなたちもがんばったら買えるようになるわ。あ、違うわね。頑張ったらじゃないか」

「なんですか?」

「人気がでたらね♪」

「人気……」

「そう。みんな、がんばったら結果が出せるって勘違いしちゃうのよ。あたしも若いころはそうだったんだけど、ある時お客さんが教えてくれたの。その頃の私はチーママで、その月のノルマをクリアすることしか考えてなくて、あと少しっていうときいつもお客さんに電話して頼み込んだりしてたら、ある時こう言われたの…」

「ゴクリ」

「『カネ送るから、そういう営業するな』って」

「…」

「それで私、やっと気づいたの。私がやってたのは全然お客さんのためじゃなくて、自分のストレスを小さくしてお客さんにばらまいてただけなのよね。それからあたし自分でも驚くくらいに頑張らなくなって、それまでよりずっと笑って過ごせるようになったのよ」

「イイハナシダナー」

「だからね。こういう仕事っていろいろ言うひといるけど、どんなふうに働くかはぜーんぶその人次第。それに…」

「それに…」

「毎日違うお客さんが来て、みんな何かで一流なの。それってすごいことだと思わない?」

「ハー」

「一流…」

「世の中には安いものも高いものもたくさんあって、もちろん安くて良い物もあるけど、『高くて良い物』が人間になった感じっていうのかしら。そんな人たちがいるなんて、わたしこの仕事するまでは知らななかったわ。確かにお金持ってるだけの変な人もいるけど、そういうひとたちって結局長く続かないし」

「おねぇさん!」

「なぁに?」

「お客さんと、こう、付き合っちゃったりすることもあるんですか?」

「ゴクリ」

「うふふ。そうねぇ。そういうこともあるかもしれない。でもね、あなたたちから見たらまだ世の中はナオトインティライミかもしれないけど…」

「へ?」

「ほんとは面影ラッキーホールなのよね…」

「…おも…か?」

「なんでもない♡面接は合格よ。着るものも靴も用意するから、来週来れる日をおしえてね」

「ウェーイ!!!」

次号へつづく
21_nikkan【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。

Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa

2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html

「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾

〈イラスト/松原ひろみ〉

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