「人間の能力にはなぜ差があるのか?」作業が人より遅いと悩む会社員へのアドバイス

【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!

◆人間の能力にはなぜ差があるのか?
ぴーぽ(ペンネーム)・会社員・男性・29歳


 私は明らかに仕事をこなす能力がほかの人よりも劣る人間です。何をするにしても、企画書を用意するのも、本を読むのも、ご飯を食べるのも人の2倍、3倍の時間がかかります。

 上司からは「それなら人の3倍の時間働け」と言われ、社長からは「自分が“できる”と思う仕事量の3倍の目標を立てて自分を追い込め」と言われて5年間、小さなデザイン会社で働いてきました。しかし、それでも人と同じレベルの仕事ができず、ついには体調を壊して、何度も納期を遅らせる失態をおかしてしまいました。

 すると、社長からは「これくらいの仕事もできないんじゃ、ほかの会社に移っても一緒。お前は陶芸家にでもなるしかないんじゃない?」と皮肉を言われて、今、自分がどうするべきか悩み続けています。ちなみに、うつ病や自律神経失調症などの診断を受けたことはありません(同僚に「多動性障害なんじゃない?」と言われたことはありますが)。なぜ、人によって能力はこれほどまでに差があるのでしょうか?

人間の能力にはなぜ差があるのか?◆佐藤優の回答

 人間には、生まれたときから適性があります。発達心理学者の佐藤眞子先生は、こんな指摘をしています。

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子どもはみんな、生まれてすぐから個性豊かなものです。赤ちゃん時代を思い出してみてください。あなたのお子さんはどんな赤ちゃんでしたか。おっぱいをたくさん飲んだ子、あまり飲まなかった子。夜はぐっすり眠った子、夜泣きで両親を困らせた子。離乳食を喜んだ子、いやがった子。人見知りのはげしかった子、だれに対しても平気だった子。早い月齢で歩いた子、いつになったら歩けるのかと心配させた子。いつも機嫌のよかった子、ぐずってばかりだった子。ほんとうにいろいろな子がいますね。(中略)

たくさんの子どもを育てたお母さんは、このことをよく知っていますし、子どもの姿をよくとらえることができる保育所の先生も同様です。人は一人一人とても違っているものなのです。

※『2才児イヤイヤ期の育て方』168~169頁
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 作業が遅い、理解が遅いということは、あなたの個性なので、それを無理して周囲に合わせようとすると、あなたにとっても、会社にとっても不幸な結果になります。

 そもそも、「それなら人の3倍の時間働け」と命じる上司や「自分が“できる”と思う仕事量の3倍の目標を立てて自分を追い込め」とあなたを追い込んでくる社長がおかしいのです。もっともあなたは、この会社で既に5年間働いていて、退職を勧奨されていないのですから、あなたの仕事で会社は利益をあげていると考えていいと思います。

 新自由主義的な弱肉強食の傾向が日に日に強まる日本の職場で、仕事の足を引っぱるような社員を5年間も養うことはありません。あなたは、会社にとって戦力となっています。そのことを自覚して、まず、自分に自信を持ちましょう。

 それではなぜ、上司や社長は、あなたに「もっと働け」とプレッシャーをかけてくるのでしょうか。理由は簡単です。そのほうが会社の利潤が増えるからです。もっとも、どのような人であっても、現在より3倍働くことはできません。そういう上司からの命令は「重大かつ明白な瑕疵」があるので、従わなくても構いません。

 現在の職場環境が嫌ならば、2つの選択肢があります。第1は、労働法に詳しく、従業員側に立って仕事をしてくれる弁護士に相談して、会社にパワーハラスメントをやめるように働きかけることです。効果は確実にありますが、職場では何となく居づらい雰囲気になる可能性が排除されません。職場の雰囲気を悪くしたくないのならば、今の職場から転職することです。5年間、1つの会社で仕事をしてきたならば、転職先は必ず見つかります。

 ただし、転職をすると、現在の会社よりも給与は確実に下がります。同じ内容の仕事で、最低でも10%、場合によっては25%くらい収入が減ることを覚悟する必要があります。

【今回の教訓】
作業が遅いこともあなたの個性です

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【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』のなど著書多数。最新刊は『90分でわかる日本の危機

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ニッポン放送で大好評だった特別番組を書籍化。日本再生をテーマに、著者が下村博文文科相、山口那津男公明党代表など5人の専門家と語り尽くす。’15年刊

2才児イヤイヤ期の育て方――個性と心をはぐくむ

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