あなたが死んだら、あなたのSNSはどうなる? 故人のサイトを見て思うこと

 亡くなった人が残していったブログやSNSの痕跡を追った、2015年12月刊行の書籍『故人サイト』が話題を集めている。

 著者の古田雄介氏はSPA!でも10年以上前から記事を書いているライターだ。古田氏のライフワークはズバリ「死」である。初めて知り合った頃から耳元で「死!」、「死!」と囁かれ続けているのでさして気にもならなくなったが、嬉々として「死」について語る姿はやはり変人である。だが、変人と天才は紙一重でもある。そんな天才に転ぶかもしれない古田氏の著書は、やはり異彩を放っている。なにせ死んでしまった人が残したサイトを100件以上も丹念に読み、さらに場合によっては遺族に掲載許可を取り付けるという、途方もない作業を成し遂げた末に生まれた本である。異彩を放たないわけがないのだ。

あなたが死んだら、あなたのSNSはどうなる? 今回はそんなSPA!でも活躍する変人(天才)の古田雄介氏の素顔に迫るべく、対談形式で話を伺った。そこから見えたのはインターネットがもたらした、死への距離感だった。

故人のサイトは半パブリック


――古田君はあれだよね、ずっと死をテーマにしたフィールドワークをやっていた。この本はある意味集大成?

古田:そうですね。この仕事をやってきて死生に関する書籍を出せたのは初めてなので、自分の中でも重要な位置づけの本です。

――亡くなった人のサイトを103例収録しているわけだけど、まずは見つけて見直して、そこから取材と。ものすごい手間暇をかけたわけだよね。

古田:もともとリストは作っていたのである程度の形はできていたんですが、いざ書籍にするとなると予想以上の時間がかかりましたね。読んで書いて連絡先を探して企画書を出して、NGを頂いたら省いて……。4か月くらいの予定が1年強かかりました。

――返信が来なかった場合は?

古田:数か月間を置いて2~3回送って返信がない場合は掲載させてもらっています。連絡先がないものも同様に。この線引きは正直一番悩みました。公開状態の故人のサイトは「半パブリック」な存在だと思っています。一般公開されているけれど、書き手は必ずしもそのつもりじゃない。だから、出版物を引用するときみたいには割り切らないで、書き手の家族や関係者に届くようにできる限りの手は尽くしました。それでも連絡がない場合は、勝手ながらパブリックなものとして収録させてもらいました。

インターネットの普及で死を身近に感じることになった


――読んでてすごく思ったのは、インターネットが普及しはじめてから死がすごく身近になっているんだなということ。会ったことのない人なのに、ブログやSNSを通すとその人の死がすごくリアルに感じられる。ちょっと拙い文章やクセのある書き方とかが、むしろリアルさを際立たせたりして。

古田:そういう個性が滲み出ている部分は、「誰か知らない人の死」を「その人の死」にさせますよね。ネットに残っている文章も近しい人を楽しませたり自分を勇気づけたりと何かしらの意図があるので、その人そのものというわけではないですが、それでも非常に近いところにあって。

――昔は会ったこともない普通の人がどんなふうに亡くなっていったかなんて知るよしもなかったのにね。

古田:そうですよね。赤の他人が踏み込める領域ではなかったです。それが今はネット端末とその気があれば、一人称の文章でかなり具体的なところまで追体験できる文献に触れさせてもらえる。これは非常に意味のあることだと思います。

――ブログやTwitterって追体験できるから、読んでいると辛くなっていくものがかなりのものあるよね。印象に残ったのは世界旅行中に若者や夫婦が唐突に亡くなった事例。闘病ブログも切実だけど、死ぬことを前提に書いている日記ってある程度覚悟して読み進められるところがあるじゃない。でも、アクシデントで亡くなるというのが妙にリアルでショックが残るんだよね。書いていて強烈に印象に残ったものってある?

古田:どれも印象的ですが、死生観を学ぶ意味では『どーもの休日♪』や『進め! 一人暮らし闘病記。』など、第四章の「辞世を残したサイト」に収録させてもらったサイトが強く記憶に残っています。日本人の死生観って数十年単位で大きく変わっていて、親子レベルでも死の向き合い方が全然違うんですよね。100~70年前は国が戦争のために「死にがい」を付与する仕組みを用意していました。60~30年前は経済と医療が発達して死となるべく向き合わない風潮が強くなっていました。胃がんを患った本人には「胃潰瘍です」と告げて、本当のところは家族にだけ伝えるみたいな。

――あー、子供のときとかドラマでよくあったよね。本人が「ちょっと入院するだけだから」と気楽に言っていて、奥さんが陰で泣いているみたいなの。

古田:人間臨終図巻』(山田風太郎/古今東西の著名人の臨終の様を集めた本)を読んでいても、昭和時代はそういう事例が本当に多いんですよね。でも最近はきちんと病名を伝えるのが普通になっています。やっぱりきちん死と向き合っていこうよという風潮になっているんだと思います。しかし一方で昔ながらの死生観は断絶しているところがあるから、かなりの人が伝統的な考えに頼れず、死と個別に向き合わざるを得ない状況になっているんですよね。インターネットが普及したのはまさにこの時期なわけです。だから、故人のサイトを読み込んでいると、死に対する態度や死後のことも含めた考え方の幅がものすごく広いことに気づきます。伝統的な死生観をベースにしていても、その人なりの解釈が多分に含まれていることが多い。そのなかで、上記の事例は練り込んだその人の死生観の完成形を高解像で読ませてくれる。そういう意味で印象に残っています。

二重の階層で人生を投影


――死生観という意味では、生きた証明をネットに残したいという人と、すべて消し去りたいという人もいるんだろうね。

古田:最近の日経新聞の調査だと前者が2割で後者が5割弱らしいです。『故人サイト』で採り上げた事例でも、本人としては残したくなかったものも相当数あると思います。

――やっぱり、そのあたりは読みながら考えさせられるよね。自分も余命幾ばくもないとなったら、過去のSNSの発言消そうか、いや、残そうか……とか。

古田:不本意に残ったものは悲しいですが、それでしか放てない説得力というか示唆するものがありますよね。そういうサイトもそのままの形で残っているのもインターネットの特長だと思っています。

――そこは強く感じるね。第二章の「死の予兆が隠れたサイト」にある脳卒中で急死した人のツイッターとか見ても、本人としてはこういう形で残るとか思っていないわけじゃない。こっちは「早く病院行って!」と思ってしまう。と同時に、「こういう形で残ったらどうしよう」と思ってしまったりして。

古田:そう、二種類の投影が起こるんですよね。自分がそのサイトの物語に入り込むのと、自分の身にそのサイトの物語が入り込むのと。

――この事例もそうだけど、死を身近に感じるということは死を回避することにもつながるわけじゃない。だから、この本読んでて、色々と自分の周りを見直すきっかけをもらったのはあるね。

古田:そう言ってもらえるとありがたいです。

生前葬をやる意味ってあるの?


――最近は古田君、終活関係でたまにテレビ出たりしてるじゃない。終活の一つに最近話題の生前葬があるけど、けっこう批判的だよね。

古田:そうですね。葬儀って、宗教的意味は別にして、世俗的には遺族や近しい人が故人との別れを受け入れる儀式という色合いが強いと思うんですよ。だから、本人が生きているときにやる意味がわからない。生前葬を機に隠遁するなら「社会的な死」という意味が生まれるからまだわかるんですけどね。

――確かに。小椋佳さんなんか生前葬をライブにして、その一年後に「一周忌コンサート」とかね。死んだのにライブかよって(笑)。まぁ、シャレがきいてるといえばそうなんだけど……

古田:死生に関する儀式や風習って、転じてジョークになりやすいのはありますけど、そのネタで遊ぶだけなのはちょっと底が浅いと感じてしまいます。死というキーワードから生まれる関心は哲学からゴシップまですごく広い範囲に伸びていくので、下世話や不謹慎ネタで楽しむこともできますが、それは砂浜で遊んでいるのに近い。向き合い方を変えれば遠洋や海溝にも進みうるのに、人生を賭けたイベントとかに安易にトッピングするのはもったいないなと感じますね。

――一周忌コンサートも「こりゃとんでもねぇな」って思ったんだけど、古田君が終活の原稿書いた『終活読本ソナエ』って本が出てるのもすごいと思った。タイトルがすごいよね。

古田:備えると供えるのダブルミーニングですね。終活に関する実用的な情報だけでなく、死生に関わる知的好奇心を追求する記事……先でいう遠洋的な記事もあるので、読んでいて楽しいです。あ、でも、これ産経新聞なんでSPA!の扶桑社と同じグループですよ。

――あ、本当だ。こりゃ失礼しました。

【古田雄介】
1977年名古屋生まれのライター。建設会社の現場監督と葬儀社スタッフを経て現職。上記以外の著書に『中の人 ネット界のトップスター26人の素顔』(KADOKAWA)など。

<取材・文/長谷川大祐(本誌)>

故人サイト

更新直後に殺害・ツイート直後に事故死。リアルタイム闘病記録・自殺実況中継・ファン巡礼慰霊碑サイト。それは遺書なのか、あるいはダイイングメッセージなのか!?漂い続けるネット墓標を徹底調査!!

中の人 ネット界のトップスター26人の素顔

あの有名サイトの管理人(いわゆる“中の人”)に突撃インタビュー。

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