ホーガンとミスターTの急接近――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第36回

「フミ斎藤のプロレス講座別冊」月~金更新 WWEヒストリー第36回


 人気ロック・シンガー、シンディ・ローパーをフィーチャーしたMTVのプロレス特番“ブロール・トゥー・セトル・イット・オール”(1984年7月23日放映)の主人公は、ローパーでもローパーの“友だち役”を演じたウエンディ・リヒターでもなく、じつはハルク・ホーガンだった。

ホーガンとミスターTの急接近

WWEとMTVが共同プロデュースした特番にミスターTが登場。予想どおりロディ・パイパーと大乱闘を演じた。これが“レッスルマニア”第1回大会のプロローグだった。(写真はWWEオフィシャル・マガジン表紙)

 MTVにチャンネルを合わせた視聴者は、ローパーとプロレスのコラボレーションというちょっと変わった番組を観ながら、じっさいはホーガンの“プロモーション映像”をたっぷりと目にすることになった。

 プロレスファンではない一般視聴者にとって、ホーガンは映画『ロッキー3』でシルベスター・スタローンと闘った“あの金髪のプロレスラー”だった。

 MTV特番は、ケーブルTVとしては驚異的な9パーセント強の視聴率をはじき出した。特番から2カ月後、ホーガンはローパーといっしょにゲストVJとしてMTVにレギュラー番組にも出演した。番組のなかでホーガンは“ハルカマニアHulkamania”というキャッチフレーズを連発し、これがひとつの流行語になった。

 MTVとの“蜜月”は、ひじょうに短期間のうちにWWEをアメリカでいちばん新しいポップ・カルチャーといったポジションに押しあげた。“ハルク・ホーガン”と“WWE”がトレンドを知るキーワードとしてありとあらゆるところで活字に化けはじめた。

 アメリカのマスメディアにとって、プロレスは戦後の1950年代前半の白黒テレビの時代に大ブームを迎え、それから数年後に“消えたスポーツ”ということになっていたから、にわかに動きだしたプロレス・ブームは不可解な社会現象だった。

 もちろん、マスメディアのこの認識は明らかに誤りで、プロレスというジャンルそのものはいちども消滅したことはない。1960年代と1970年代の20年間は、プロレスはローカル・ベースの人気スポーツとしてちゃんと“生息”していたし、ローパーが驚いたように、ニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデン定期戦はブルーノ・サンマルチノの時代からずっと毎月2万人クラスの大観衆を動員してきた。

 ビンス・マクマホンは、アメリカ国内のケーブルTVの急速な普及にもっとも敏感に反応したTVプロデューサーのひとりだった。

 WWEはUSAネットワーク、TBSのふたつのチャンネルを使い、毎週15時間から20時間のプロレス番組をケーブルTVの有線に乗せ、これと同時に自社製作のシンディケーション番組をアメリカじゅうの独立系ローカル・テレビ局に配給していった。

 ケーブルTVのプログラミングでは通常、同じ番組を週に3回ほどリピート放送するため、毎日のようにどこかのチャンネルのどこかの時間帯でWWEのプロレス番組がテレビの画面を“占拠”していた。それはまさに“たれ流し”と表現していいほどの莫大な情報量だった。

 MTVは、WWEとの共同プロデュースで2本めのプロレス特番として“ザ・ウォー・トゥー・セトル・ザ・スコア”を企画した。

 ローパーにつづく新しい登場人物は、映画『ロッキー3』でスタローンの敵役を演じ、人気TVシリーズ『特攻野郎Aチーム』の主役をつとめるアクション映画俳優のミスターTだった。ミスターTは、もともとプロレスにひじょうに興味を持っていたという。

 MTV特番“ザ・ウォー・トゥ・セトル・ザ・スコア”のメインイベントは、ホーガン対ロディ・パイパーのシングルマッチ(1985年2月18日=マディソン・スクウェア・ガーデン)だった。ホーガンのセコンドにはパイパーと半年がかりの“因縁ドラマ”を演じるローパーがついた。

 場外乱闘シーンでパイパーがローパーに襲いかかった瞬間、リングサイド席からミスターTが飛び出してきてローパーを救出した。予想どおり、ミスターTの“乱入シーン”にマスメディアが飛びついた。番組の視聴率は、前回をしのぐ9.1パーセントをスコア。これが“レッスルマニア”誕生のプロローグだった。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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