1985年3月31日“レッスルマニア”誕生――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第38回

「フミ斎藤のプロレス講座別冊」月~金更新 WWEヒストリー第38回


 歴史的なイベントは、名物アナウンサーのジーン・オークランドによるアメリカ合衆国国家斉唱からはじまった。全米135都市に同時配信されたクローズド・サーキット上映版の実況アナウンサーとカラー・コメンテーターは、ゴリラ・モンスーンとジェシー“ザ・ボディー”ベンチュラの名コンビだった。ベンチュラはこの日、“ヒールの解説者”という新しいジャンルを開拓した。

1985年3月31日“レッスルマニア”誕生

記念すべき“レッスルマニア”第1回大会のオフィシャル・プログラムとポスターは、ハルク・ホーガンとミスターTの2ショット。写真やCGではなく、イラストで描かれているところが時代を感じさせるのだ。

 この日、ラインナップされたカードはシングルマッチ7試合、タッグマッチ2試合の全9試合。アメリカじゅうが大騒ぎした“世紀の一戦”は、もちろんハルク・ホーガン&ミスターT対ロディ・パイパー&ポール・オーンドーフのタッグマッチ、ウェンディ・リヒター対レイラニ・カイのWWE世界女子選手権の2試合だった。

 グラミー賞受賞の人気女性ロック・シンガー、シンディ・ローパーがリヒターのマネジャーについたタイトルマッチは、挑戦者リヒターが王者レイラニを下しWWE世界女子王座奪取に成功。ニューヨーカーのローパーは不思議なくらいWWEの景色になじんでいた。

 メインイベントに先だって、リング上で各界からの著名人ゲストが紹介された。特別リングアナウンサーは、ニューヨーク・ヤンキース監督(当時)のビリー・マーティン。タイムキーパーは、キーボード奏者のリバラッチ。スペシャル・ゲスト・レフェリーとしてモハメド・アリが花道に登場してきた。

 スコットランドの民族衣装を着た大かがりなバグパイプ楽団に先導されて先に入場してきたのはパイパー、オーンドーフ、そしてセコンドの“カウボーイ”ボブ・オートンのヒール・トリオだった。

 生中継の映像はバックステージに切り替わり、ホーガン、ミスターT、セコンドの“スーパーフライ”ジミー・スヌーカの3人がドレッシングルームから花道につながるホールをゆっくりと歩いてくるシーンが映し出された。画面をよくみてみると、現在よりも30歳ほど若いビンス・マクマホンが通路の端でホーガンらの入場を見守っているところがはっきりと確認できる。

 試合開始のゴングと同時にリング内に入ったのは、ホーガンとオーンドーフだった。約30秒間のニラミ合いがつづいたあと、コーナーにいたパイパーがタッチを要求し、オーンドーフがこれに応じた。

 パイパーがゆっくりとロープをくぐると、こんどは反対側のコーナーに立っていたミスターTがホーガンに向かって「オレにやらせてください」と祈るような顔でエプロン・サイドから手を伸ばした。ホーガンは一瞬、驚いたような顔をして、それからたっぷりと時間をかけてミスターTにタッチ。このやりとりだけでアリーナ内の“興奮指数”はいっきに最高値に達した。

 アクション映画俳優のミスターTは、予想以上にプロレスのトレーニングを積んでいた。パイパーとのからみでは鼻と鼻をくっつけてのニラミ合いを演じ、音の出る張り手の応酬を展開。ファイヤーマンズ・キャリー、ボディースラム、ヒップトス(腰投げ)といったプロレス技にもトライした。

 予想どおり、サブ・レフェリーのアリも積極的に試合に“参加”して、パイパーとパイパー・チームのセコンドのオートンにストレート・パンチをお見舞いした。

 オーンドーフがホーガンをフルネルソンにとらえ、オートンがトップロープから“凶器ギプス”で落下してくるところをホーガンが間一髪エスケープ。オートンのフォアアームの一撃はオーンドーフの脳天に誤爆し、ホーガンがキャンバスに倒れたオーンドーフから速攻のフォールを奪った。反対側のコーナーでは、パイパーとミスターTが激しい殴り合いを演じていた。

 マディソン・スクウェア・ガーデンを埋め尽くした2万3000人の大観衆は、スタンディング・オベーションでホーガンとミスターTに惜しみない拍手を送った。クローズド・サーキット上映は全米で40万人の観客を動員した。“レッスルマニア”の誕生だった。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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