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スマホで使われるコバルトは子供たちが採掘している!?【アフリカ・コンゴの児童労働の実態】

12時間働いて日給1ドル「最悪の危険労働」

 スマホをはじめIT機器の電源などに使用されるリチウムイオン電池。金属元素のコバルトは同電池に欠かせない材料だ。そのコバルトの世界産出量の53%を、アフリカのコンゴ民主共和国産が占めている。
石の中からコバルトを探す13歳の少年

石の中からコバルトを探す13歳の少年(写真/アムネスティ・インターナショナル)

 国際人権NGOのアムネスティ・インターナショナルは今年1月、コンゴの鉱山で、児童労働で採掘されたコバルトが、アップルやサムスンなどの大手メーカー製品に使われていると発表した。 「7歳からの子供が、鉱山で危険を伴う作業に従事しています。一日12時間も働いて日給はわずか1~2ドル。安全対策も不十分です」。コンゴの鉱山での児童労働について、東京経済大講師の寺中誠氏はこう話す。ユニセフの調査によると、コバルトや銅などの鉱山が多いコンゴ南部で採掘に従事する子供の数は’14年時点で約4万人に上る。 「体の小さい子供は狭い坑道に入るのに都合がよく、鉱石の運び出しなどの危険な重労働をしているのです。採掘労働はILO(国際労働機関)が『最悪の危険労働』として禁止しており、現にケガをする子供もいます」(寺中氏)  しかもコバルトには毒性があり、呼吸器や心筋の障害を引き起こす物質も含まれる。ところが安全対策は不十分で、マスクもつけずに作業する子供がいる。寺中氏は「被曝や環境汚染の影響を受ける恐れがあります」と指摘する。  採掘されたコバルトは、どのように流通していくのだろうか。 「鉱山から仲介業者が買い付けたコバルトを、コンゴ国際鉱業(CDM)が仕入れます。CDMは中国の会社『浙江華友コバルト社』の子会社。コバルトはバッテリー部品メーカーに卸され、電極部品などになります。そしてバッテリーメーカーがこれらの部品でリチウムイオン電池を作り、最終的にはアップルやサムスンなどのメーカーに納入されていることがアムネスティ・インターナショナルの調査で明らかになりました」(同)  コバルト採掘で児童労働が蔓延する理由のひとつは、規制や監視が未整備であること。米国は「ドッド=フランク法」で金、タンタル、スズ、タングステンを「紛争鉱物」に指定し、原産国情報などを調査・開示することを企業に求める。これに対してコバルトは「野放し」状態だ。  アップル本社はアムネスティ・インターナショナルに対し、この件について回答。「自社のサプライチェーンで児童労働は決して許容されない」などとしている。「コンゴ産コバルトの使用をやめてしまえば、現地の仕事がなくなるという新たな問題も生まれます。情報が公開されていないのが最大の問題。解決のためには、電機メーカーなどのサプライチェーン末端から、上流に向けて情報公開を求める流れをつくり、そのうえで現地の労働条件を改善することが必要です」 ― 消費者が知らない[世界的大企業]の闇 ―
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