倉山満「大東亜戦争は大日本帝国と大英帝国が刺し違えた戦いである」

 EU離脱問題でヨーロッパを揺るがせているイギリス。かつての覇権国家は、現在も世界に影響力を保ち続けているのか? 3月2日にイギリスをテーマにした新刊『嘘だらけの日英近現代史』を上梓する憲政史研究者の倉山満氏が、現在のイギリスを一刀両断する。

【倉山満氏】1973年、香川県生まれ。憲政史研究者

【倉山満氏】1973年、香川県生まれ。憲政史研究者

――EUを離脱するか否かでイギリスの国論が割れ、世界の注目が集まっています。

倉山:はっきり言って気にする必要はないですよ。現在のイギリスが世界に与える影響なんて、誤差の範囲内ですから。影響力がゼロの日本よりはマシ、といった程度です。現在のイギリスなんて、別に知らなくても暮らしていけます。

――え、そうなんですか!?

倉山:はい。現在のイギリスがまがりなりにも大国の末席にいられるのは、金融と陰謀力と核兵器という3つの要素を持っているから。とくに、第二次大戦の戦勝国にまぎれ込んだおかげで、核兵器まで保有できているという点が、金融しかない日本との大きな差です。とはいえ、戦後の落ちぶれ感については、どちらも似たようものです。

――にもかかわらず、「嘘だらけシリーズ」の最新作にイギリスを選んだのはなぜですか?

倉山:イギリスに関しては、第二次大戦が終了するまでの歴史を知ることが、とても重要だからです。例えば、日本が行った大東亜戦争は、“大日本帝国と大英帝国が刺し違えた戦い”だったことを知らない人が大勢いる。戦場となったアジアの国々を見れば、インドネシアとフィリピンこそオランダとアメリカの植民地ですが、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、ビルマ、インドはすべてイギリスの植民地。つまり、本質はあくまで『英国&(彼らから利益を得ていた)華僑』VS『日本&(白人に支配されていた)被植民地アジア人』の戦いでした。しかも終盤まで日本側の全戦全勝だったわけです。

――何となく「アメリカと戦って負けた」というイメージが強いです。

倉山:アメリカが介入してきたことのほうが、むしろ謎なんですよ。日本に戦争を仕掛けたところでアメリカの国益につながりませんし、中国問題でルーズベルトが日本を非難する以外は、とくに日本との対立関係もなかったわけですから。とにかく、大英帝国は大日本帝国と戦ったことによって、戦勝国と言いつつ、ブリテン島以外をすべて失う結果となりました。要するに戦後、大日本帝国が日本になってしまったように、大英帝国もただの英国になってしまったわけです。

――なるほど。

倉山:どうして『今、イギリスなのか?』と問われれば、『教養だからです』としか答えようがありません。しかし、大日本帝国という世界史上であっという間に消えてしまった国が、覇権国家として君臨した大英帝国と刺し違えた、という一面があることは知っておくべきです。そもそも日本の近代とは、大英帝国への脅威によって目覚め、大英帝国への憧れによって発展していく過程でした。富国強兵も、帝国憲法の発布も、不平等条約の撤廃も、すべて大英帝国のようなスゴイ国になりたいという思いが原動力になって実現したもの。私に言わせれば、『むしろイギリスを抜きにして、どうやって日本を語るの?』という感じです。

――と考えると、やはりイギリスの現状は少し寂しい気がしますね。

倉山:イギリスが落ちぶれた責任は、“売国奴”ウィンストン・チャーチルによるところが大きい。日本人は、彼を本気で“英雄”だと思っているようだからダメなんです。確かにチャーチルという男は、ナチスの侵略を防ぎましたが、彼が守れたのはブリテン島だけ。ほかは全部、失っています。チャーチルが英雄扱いされるのは、彼がイギリス史上初の“親米派”総理大臣だったから。彼を英雄に仕立てなければ、イギリスは戦後のアメリカ覇権体制下を生き残れなかったのです。チャーチル以前は、程度の差こそあれ、反米派もしくはアメリカを完全に格下扱いする総理大臣しかいませんでした。ところがアメリカ人の母を持つチャーチルは、英米一体化を推し進め、情報機関の共有まで行ってしまいます。彼が、イギリスをアメリカに渡した売国奴と呼ばれる所以です。

――現在のイギリス人たちは、自分たちの状況をどう思っているのでしょうか?

倉山:いつかアメリカとの立場をひっくり返してやろうと思っていますよ。オックスブリッジ(オックスフォード大学とケンブリッジ大学のこと)のエリートたちはね。まだ復活をあきらめていない。だから中国と手を組み、ロシアだけでなく、アメリカまで牽制しているわけです。

――ちなみに、イギリスのエリートたちは現在の日本をどう見ていますか?

倉山:視界にも入っていないでしょう。アメリカの持ち物だと思われていて、イギリスどころか、台湾の視界にすら入っていない国ですから。より丁寧に言うなら、中国との係争地域であるアメリカ領日本、という感じでしょうね。

 わかっているようでよく知らない、各国の正体を白日の下にさらす倉山満氏の「嘘だらけシリーズ」。アメリカ、中国、韓国、ロシアに続き、今回シリーズに名を連なるのはイギリス。世界の歴史上「最強・最恐・最狂の国」と倉山氏が認める、かの国のダイナミックな通史に刮目せよ!<取材・文/ツクイヨシヒサ>

【倉山満氏】
憲政史研究者。著者シリーズ累計30万部を突破したベストセラー『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』『嘘だらけの日露近現代史』のほか、保守入門シリーズ『保守の心得』、『帝国憲法の真実』が発売中。待望の新刊『嘘だらけの日英近現代史』、おかべたかし氏との共著『基礎教養 日本史の英雄』を3月2日に同時発売

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