“ドラゴン”に変身したスティムボート――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第43回

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 リッキー“ザ・ドラゴン”スティムボートは、ビンス・マクマホンによって“改造手術”をほどこされた1980年代のスーパースターのひとりだった。“ザ・ドラゴン”とは、いうまでもなく若くしてこの世を去ったカンフー映画の大スター、ブルース・リーのイメージである。

リッキー“ザ・ドラゴン”スティムボート

リッキー“ザ・ドラゴン”スティムボートは、ビンス・マクマホンによって“改造手術”をほどこされた1980年代のWWEスーパースターのひとりだった。(写真は『WWEオフィシャル・マガジン』表紙より)

 スティムボートはアメリカ人の父と日系人の母を持つジャパニーズ・アメリカンで、顔だちはアメリカ人が考えるところの典型的なオリエンタル系。ブルース・リーとは文化的なバックグラウンドもアスリートとしての経歴もまったく異なるが、WWEはスティムボートにステレオタイプ的な東洋の格闘技=空手の使い手としてのイメージを求めた。

 スティムボートはリングネームで、本名はリチャード・ブラッド。“公式プロフィル”上の出身地はハワイのホノルルとなっているが、じっさいは1953年2月28日、フロリダ州タンパ出身。ハイスクール時代、アマチュア・レスリングのフロリダ州選手権で準優勝(1971年=154ポンド級)の成績を収め、地元の大学を中退後、ミネソタ州ミネアポリスのバーン・ガニア道場に入門。1976年2月、AWAのリングでデビューした。

 1960年代に活躍したハワイ出身の技巧派レスラー、サミー・スティムボート(本名サム・モクアヒ)と風貌がよく似ていることから師匠ガニアはスティムボートにサミー・スティムボート・ジュニアというリングネームを与えたが、その後、スティムボート自身がファーストネームの部分だけをリチャードの愛称リッキーに変えた。

 1970年代後半はNWAジム・クロケット・プロモーション(ノースカロライナ州シャーロット)に定着し、ジェイ・ヤングブラッドとのタッグチームで活躍。NWA世界タッグ王座を通算5回獲得し、シングルプレーヤーとしてはUSヘビー級王座、ミッドアトランティック王座、ミッドアトランティックTV王座などを保持した。

 NWAクロケット・プロ在籍時代のツアー仲間は、若き日のリック・フレアー、ジミー・スヌーカ、グレッグ・バレンタイン、サージャント・スローター、大ベテランのワフー・マクダニエル、レイ・スティーブンスといったそうそうたる顔ぶれだった。

 1980年から1984年にかけて通算7回来日し、全日本プロレスのセミレギュラーとして80年(パートナーはディック・スレーター)、82年(パートナーはヤングブラッド)の『世界最強タッグ』に出場。天龍源一郎とUNヘビー級王座の王座決定戦を争ったこともある(84年2月23日=東京・蔵前国技館)。日本では入場テーマ曲にYMOの名曲“ライディーン”が使われた。

 スティムボートがWWEと専属契約を交わしたのは1985年2月。ビンスはキャリア9年、32歳(当時)のスティムボートにベビーフェースの“ナンバー2”としてのポジションを用意した。このランクづけは、ハルク・ホーガンとはまず闘うことのないポジション、WWE世界ヘビー級チャンピオンにはなれない大関クラスの“番付”を意味していた。

 スティムボートのレスリング・スタイルを分析したビンスとパット・パターソン副社長(当時)は、“ザ・ドラゴン”というキャラクターを発案した。決め手となったのは、空手スタイルの構えから放つバックハンド・チョップだった。

 この“逆水平チョップ”はスティムボートがNWA時代にフレアー、スヌーカらとの定番マッチのなかでフェイバリット技のレパートリーとしてアダプトしたものだったが、ビンスはこの動きをブルース・リー的な“映像”ととらえた。

 それまで無地の赤のショートタイツと白のリングシューズのシンプルな組み合わせだったリングコスチュームは、カンフーの達人をイメージさせる龍の刺しゅうが縫いこまれた黒のロングタイツに変更された。

 スティムボートの東洋系のルックス、ボディービルダー・タイプの体つき、得意技のバックハンド・チョップはWWEテイストのキャラクター商品につくり変えられたのだった。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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