ホーガンとテリーの不思議なフレンドシップ――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第50回

「フミ斎藤のプロレス講座別冊」月~金更新 WWEヒストリー第50回


 2005年4月、“レッスルマニア21”の前日にロサンゼルスのユニバーサル・アンフィシアターでおこなわれた“ホール・オブ・フェーム”授賞セレモニーで、ハルク・ホーガン、ロディ・パイパー、ポール・オーンドーフら1980年代のスーパースターたちがWWE殿堂入りした。

テリー・ファンクの自伝『More Than Just Hardcore』表紙より

ハルク・ホーガンに映画『ロッキー3』出演のチャンスを与えたのは、じつはテリー・ファンクだった。1986年のWWEはホーガンとテリーの因縁ドラマで幕を開けた。(写真はテリー・ファンクの自伝『More Than Just Hardcore』表紙より)

 授賞セレモニーのゲスト・プレゼンターとしてホーガンに記念のプラック(盾)を渡したのはシルベスター・スタローンだった。スタローンのスピーチは「わたしとプロレスのお付き合いはテリー・ファンクとの出逢いから」というグリーティングではじまった。

 ホーガンは映画『ロッキー3』に出演したことでメインストリームのスポーツ・セレブリティーとしてのステータスを手に入れた、という定説がアメリカのマスメディアのコンセンサスになっている。ホーガンはこの映画で自分とそっくりのサンダー・リップスというプロレスラー役を演じ、スクリーンのなかでロッキーと対決した。

『ロッキー3』が全米で公開されたのは1982年夏で、ホーガンはその3年まえにはすでにニューヨークのマディソン・スクウェア・ガーデンでメインイベンターとして活躍していたし、1981年からは1984年までは1年を通じてアメリカと日本(新日本プロレス)を往復する生活をしていたから、スタローンとの共演がホーガンをスーパースターに変身させたとする説にはやや誤認がある。

 スタローン自身のコメントにもあるように、俳優としてスタローンと共演した最初のプロレスラーはホーガンではなくて、プロレスを題材にした映画『パラダイス・アレイ』で準主役を演じたテリー・ファンクだった。この映画は『ロッキー』シリーズほどのヒット作とならなかったため、スタローンの代表作のリストには入っていない。

 スタローンは『ロッキー3』に出演させる“大きな金髪のプロレスラー”のキャスティングをテリーに依頼し、テリーがホーガンに声をかけてホーガンの映画出演が実現した。テリーは、もともとホーガンを外国人選手のレギュラー枠で全日本プロレスにブッキングするつもりだったという。

 南アフリカ共和国でのホーガンとの“消されたシングルマッチ”から1年後、テリーは全日本プロレスのリングで引退試合をおこなった(1983年8月31日=東京・蔵前国技館)。ホーガンは同年、アントニオ猪木を“舌出し失神KO”で下し『83IWGPリーグ戦』に初優勝(1983年6月2日=蔵前国技館)。WWE世界王座よりも先にIWGPのチャンピオンベルトをその腰に巻いた。

 テリーは感動的な引退セレモニーから1年4カ月後、『84世界最強タッグ』で現役復帰を果たすが、多くのファンはこれを“裏切り行為”ととらえ、そのカムバックをあまり歓迎しなかった。そして、テリーは1985年夏にWWEに活躍の場を求めた。テリーとホーガンはここで約3年ぶりに再会する。

 全米3大ネットワーク局のひとつ、NBCがプロデュースするプロレス特番“サタデーナイト・メインイベント”の1986年度の第1回大会のメインイベントは、ホーガン対テリーのWWE世界戦だった(1986年1月4日オンエア)。

 ホーガンには人気者のジャンクヤード・ドッグ、テリーには悪党マネジャーのジミー・ハートがそれぞれセコンドについての古典的なベビーフェース対ヒールのTVマッチは、ホーガンが十八番レッグドロップから完ぺきなフォール勝ちをスコアした。

 この番組は土曜夜11時の時間帯としてはNBC史上2位となる10.4パーセントの高視聴率をはじき出した。あごヒゲをたくわえた41歳のテリーは、西部劇にでも出てきそうなオールドファッションな“荒くれカウボーイ”を演じた。

 現在、WWEのアクション・フィギュアの“レジェンド・シリーズ”として発売されているテリー・ファンク人形は、このときのカウボーイ・スタイルのキャラクターになっている。

 ホーガンとテリーの因縁ドラマはロングランにはならなかった。WWEは“レッスルマニア2”に向け新路線のドラマづくりにとりかかろうとしていた。(つづく)

斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます

文/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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