ピース・又吉「ボケたのに皆に納得されることがある…」 芥川賞受賞後の悩み

週刊SPA!の人気連載『坪内祐三×福田和也 文壇アウトローズの世相対談「これでいいのだ!」』。今回は、文芸評論家・坪内祐三 特別編として、お笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんとの対談をおおくりします。

 今回のゲストは、又吉直樹さん。処女作『火花』で芥川賞を受賞し、250万部のベストセラーを記録した又吉さんは、小説を執筆する前から坪内氏と縁があったそうで――。

又吉直樹×坪内祐三

数年前の『マンスリーよしもとPLUS』に載った又吉さんの本棚を見て、坪内氏は「すごくいいんだよ。でもシブすぎて、この人はお笑いの世界でやっていけるのかしら?と思った」

ふざけてるのに、まともな発言と思われて心が折れたりします


坪内:最初に会ったのは、神保町なんだよね。五反田の古書展で古本を買ったあと、神保町に移動して、じゃあ飲みに行くかってときに交差点のところに偶然又吉さんがいて。

又吉:そのときの坪内さんが渋かったんです。僕が「うわ、こんなところで」と言ったら、「こんなところだから会うんでしょう」と。

【坪内祐三氏】

【坪内祐三氏】

坪内:それにしても、又吉さんの芥川・直木賞のパーティはすごかったね。綿矢りささんとか西村賢太とか、話題になったことはたくさんあるけど、そういうレベルじゃなかった。報道陣も多かったけど――テレビの人はトンチンカンなことを言うからね。又吉さんの挨拶もよかったし、羽田(圭介)さんの挨拶もすごくよかった。オレ、羽田さんがその後テレビに出まくってるのは立派だと思うんだよね。昔と違って小説一筋じゃ食えないから、テレビに出てお金を稼いで小説を書く――大島渚システムだよね。大島渚はテレビで稼いだお金で映画を撮ってたわけだから。羽田さんはかなりクレバーだよ。ああ見えてデビューが早いから、いろんなことを見てるよね。

又吉:不思議やなと思うのは、小説家の羽田さんがテレビに出たら変なことを求められるじゃないですか。それは「小説家やのに変なことをやってる」って面白さがあると思うんですよ。それが、僕はずっと変なことを言う仕事をしてきて、テレビでも変なヤツとして扱われたのに、小説を書くとまともなコメントを求められるようになったんです。単にふざけてても、「何か意味があるんじゃないか」と思われたりして。

坪内:やりにくいでしょう。

又吉:2人で出るときは相方がツッコむから簡単なんですよ。ただ、一人で出てふざけたとき、皆に「なるほど」とか言われると心が折れそうになりますね。聞く側がどう受け取るかで、発言って全然変わってくるじゃないですか。それを感じてますね。

坪内:文学の賞、特に芥川賞を獲ると、文学青年崩れのオッサンから手紙が来るでしょう。80ぐらいになっても「芥川賞を狙ってます」みたいな人がいるんだよね。玄月さんが芥川賞を受賞したとき、彼は大阪文学学校出身だから、OBのオッサンたちから批判の手紙が来て大変だったらしいよ。「お前ごときの作品が賞を獲るなんて、芥川賞もおしまいだ」と。

【又吉直樹氏】

【又吉直樹氏】

又吉:手紙は結構来ますね。批判されると腹も立つんですけど、一番怖いのは自分が納得する批判ですね。「うわ、そこは目が行ってなかった」っていうときは気になります。ツイッターとかの、パターン化された批判の仕方やったら、「こいつはもしかしたらすごい才能がある人間なんじゃないか」っていう恐怖感がありますよね。手紙の場合は、2枚書いてくれたら、その人がただの変なヤツやってわかるんで、その安心感はあります。

坪内:やっぱり、『火花』を発表してからは手紙を送ってくる年齢層も広がった?

又吉:年配の方からもだいぶもらいましたね。「頑張れ」とか、「久しぶりに小説を読んで懐かしかった」と書いてくれた方もいます。

坪内:あの話は年配の人にも響くよね。昔、『グリニッジ・ビレッジの青春』って映画があったでしょう。あれはニューヨークで演劇のスターを夢見る青年たちのドラマだけど、芸事の世界に共通する話だよね。かつては映画の世界にもそれがあって、大部屋だった役者がワッと引っ張り上げられたりね。お笑いの世界にはまだそれが残ってるんだね。

又吉:いろんなジャンルの人から「共通する部分があった」と言われます。

※この対談は週刊SPA!3/1号「これでいいのだ!」坪内特番 ゲスト又吉直樹(前編)より、一部抜粋したものです

<構成/橋本倫史 撮影/山川修一(本誌)>

週刊SPA!3/1号(2/23発売)

表紙の人/ 菜々緒

電子雑誌版も発売中!
詳細・購入はこちらから
※バックナンバーもいつでも買って、すぐ読める!

火花

笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説

孤独死した60代女性、“お一人様”の最期は認知症でゴミ屋敷に…

孤独死
 玄関の扉を開けると、部屋にはうずたかく廃棄物が積まれたゴミ屋敷の光景が広がっていた。独身で認知症を患っていた60代女性の「孤独死」の現場だ。  核家…

40代「逃げ恥おっさん」が気持ち悪い…ガッキーかわいいを連呼、星野源に嫉妬、正確な記述を競い合う

「逃げるは恥だが役に立つ」(逃げ恥)エンディング 恋ダンス
 現在放送中のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)がいまネットを中心に話題になっている。  物語は、星野源演じる会社員の津崎平匡の家に新垣結衣…

連載

ばくち打ち/森巣博
番外編その3:「負け逃げ」の研究(31)
メンズファッションバイヤーMB
オーダーシャツが4980円でつくれる激安時代、プロも驚く採寸システムとは?
山田ゴメス
女子の間で秘かに流行りつつある「朝セックス」ブームは、男にとっても好都合なワケ
オヤ充のススメ/木村和久
竹原ピストルがオヤジのハートを鷲掴みする理由
フミ斎藤のプロレス講座/斎藤文彦
ブレット対ストーンコールド=序章――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第235回(1996年編)
英語力ゼロの46歳バツイチおじさんが挑む「世界一周 花嫁探しの旅
「今夜、君に恋に落ちてしまいそうだぜ」――46歳のバツイチおじさんはクサすぎるセリフをさらりと口走った
原田まりる
芸の細かさが目立った2016年地味ハロウィン
大川弘一の「俺から目線」
平穏を望む銀座ホステス・美琴――連続投資小説「おかねのかみさま」
プロギャンブラー・のぶき「人生の賭け方」
一流芸能人GACKTのギャンブルセンスをプロギャンブラーが採点
爪切男のタクシー×ハンター
チンコのような温かさで私を強くきつく抱きしめて
フモフモ編集長の今から始める2020年東京五輪“観戦穴場競技”探訪
希望の星は16歳のJK! ジャッジ次第で天国と地獄[五輪最恐の採点競技]とは?
元SKE48/SDN48・手束真知子の「フリーランスアイドル論」
アイドルはいつでも迷っているんです「集客ができない! フォロワーが少ない! 肩書きがない…」
おじさんメモリアル/鈴木涼美
「ね~え、一緒にお風呂入ろう?」リーマンショックで落ちぶれたおじさんの哀号
僕が旅に出る理由 in India/小橋賢児
北インド秘境で「宇宙に住んでいる」と実感した――小橋賢児・僕が旅に出る理由【最終回】

投稿受付中

バカはサイレンで泣く 投稿受付中
佐藤優の人生相談 投稿受付中