NHK大河ドラマ『真田丸』が絶対にコケないワケ【コラムニスト木村和久】

― 木村和久の「オヤ充のススメ」その109 ―

 気づいたら、NHKの大河ドラマ「真田丸」をずっと見ている。これは三谷幸喜脚本に、まんまと乗せられているのかも知れない。冷静に見ると、時代劇の文法を無視している演出が多く、イラつくこともあるが、気づくとテレビの前にいるんだよね。

 最近笑ったのは、2月21日オンエアの回。まずタイトルの「奪回」だが、内容がそれに見合うものか、はなはだ疑問だ。何を奪回したのか見ていると、そこにはホームコメディの世界が繰り広げられていた。

NHK大河ドラマ『真田丸』が絶対にコケないワケ【コラムニスト木村和久】

写真はNHKホームページより

 一番可笑しかったのは、堺雅人演じる真田信繁が、祖母の救出時に、間一髪のところで、敵に見つかり捕虜となるシーンだ。その捕まる理由が、長澤まさみ演じる、きり(後に信繁の側室になる)が、忘れ物をして、取りに戻っている間に、一行は捕まるというもの。

 きりの忘れ物は、信繁が土産にくれた櫛だった。これ、現代劇のラブコメならアリだけど、戦国時代に幾ら側室になる女だからって、脱出劇中に忘れ物を取りに、戻るのが許されますか?そもそもきりは家臣の娘で、当時は真田家の祖母の世話係をやっており、そんな身分で、我がままを押し通せるとは思えないんだけど。長澤まさみ好きから見れば、きりの役をさせるのが可哀相だ。精神的な子供の役なら、いっそ藤田ニコルあたりに、やらせれば良かったのかも。

 そんなわけで、突っ込みどころは満載だ。逆に茶の間いる家族同士で、「あ~たら、こうたら」言えていいのかも知れない。女優陣は、ぎゃあぎゃあ、うるさいのが多い。逆に渋くまとめているのが男優陣だ。これでバランスを取っているのだろう。

 俳優の演技で一番光るのは、やはり草刈正雄だ。信繁の父、昌幸役の草刈正雄は、NHKが温存していた隠し玉である。NHKーBS的には、美術系教養番組「美の壺」で、10年近くも出演している、お馴染の顔なんだけどね。草刈正雄は美男で声が高い。美の壺では、奥さんの尻に敷かれる道楽亭主の設定で、進行をやっているが、このオドオドぶりがさまになる。ところが大河ドラマじゃ声も太く、肝が据わった真田昌幸を見事に演じ切っている。家庭と外じゃ、男はこんなに違うんだぞって感じですか。マジ、ぞくぞくするくらい小気味いいですもん。

 ほかギャグを言わない大泉洋と、ほとんどセリフのない忍者役の藤井隆が、存在感があっていい。寺島進も山賊みたいで、迫力あるし、明智光秀役に公家顔の岩下尚史を抜擢したのも、ナイスキャスティングだった。今後、話題の桂文枝も出ます。枯れた演技が楽しみです。

木村和久

木村和久

 というわけで、微妙なバランスで成り立っている、戦国ホームドラマが「真田丸」といえよう。家族の話が多くなり、迫力とリアリティに欠けるのはしょうがない。けどひとつ感心したのは、木村佳乃演じるまつが、敵に追われて断崖絶壁から身を投げるシーンがあったけど、そこはちゃんとロケをして、落ちたら死にそうな、断崖で撮影していた。ここらへんは手を抜いてないなと、感心させられた。

 今回の「真田丸」で一番見たいのは、大阪冬の陣で、出城の真田丸を駆使し、徳川勢をやっつける骨太なクライマックスである。つまり「真田丸」という、オチがドラマのタイトルになっているのだ。そこまでの半年以上の道のりは、セックスでいえば、前戯みたいなものだ。もちろん第一次、第二次上田合戦を、どう描くかとか、そういうのは楽しみだけど。

「真田丸」は、素材そのものがいい。戦国の英雄も総出演ゆえ、普通に作っていれば、絶対コケない。今回は当たり前の演出から、ちょっとズレているから、それが心配だけど。くれぐれも、あまりはしゃいだ演出をしないように、お願いしたいですね。

■木村和久(きむらかずひさ)■
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦

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