デジタル

所有を前提にしたビジネスは滅びかけている――チームラボ・猪子寿之、デジタルで境界を超えたその先へ

邪魔だった「他人」の存在をポジティブに変える

「境界をなくす」試みは、チームラボのアート作品にも表れている。物質を前提としてきたアートをデジタル領域へ持ち込むことで、鑑賞者の態度や動きによって変化するインタラクティブなアート作品を可能にしたのだ。 「例えばモナ・リザという絵は隣の人がいようがいまいが変わらずモナ・リザなんです。でも、チームラボの『花の空間』(花=人、コントロールできないけれども、共に生きる/下の写真)という作品は、他人が走り回ると花が散り、他人がじっとしていると花が咲く。他者の存在によって変化し、その変化が美しさを生み出す。いわば、他者の存在まで含めて作品ともいえるわけです。  かつてのアートだとどうだったか? モナ・リザを観に行っても美術館が混んでいたら他者の存在は鬱陶しいだけでしょう。  でも、うちの作品では、他者がいること、みんながいるほうが楽しくなる。デジタルが持つインタラクティブ性によって、その空間の人間関係も変えられるんじゃないかと思っているんだよね」  さらに猪子氏は続ける。 「これはアート以外でも同じことがいえる。例えば『都市』という空間は、他人の存在によって変わらないし、自分とは無関係だから、都市では他人が邪魔な存在になる。  中でも、子供なんて、もっともコントロールできない他人だから、その存在を鬱陶しいと感じてしまう。  でも、もしコントロールできない他人が、ポジティブな存在になったとしたら、子供の存在もポジティブに変わるんじゃないか。そして『デジタル』という新しい領域が『都市』をオーバーラップすることで、もしかしたら隣の人が歩くことで周りの景色がわっと変わるかもしれないし、そんな世界はきっと美しいんじゃないかな」  国境を意識せずに生きていきたい、と猪子氏は語る。チームラボの絶え間ない挑戦の先には、もっと楽しい未来があるのかもしれない。
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