5発大勝の裏にあるGKの難しさ。GK東口順昭が得た確かな手応えとは?

 サッカー日本代表は24日(木)、ロシアW杯2次予選グループEの第7戦でアフガニスタン代表と対戦し、5-0で勝利。29日(火)に同じくさいたまスタジアム2002で行われる対シリア戦を残して、最終予選進出を決めた。

◆序盤は決定力を欠いたものの、格下相手に勝利

 すでに2次予選敗退が決まっていたアフガニスタンを相手に、日本は開始から圧倒的にボールを支配。序盤はフィニッシュの精度を欠き再三のチャンスを逃したが、43分に清武からのパスを受けた岡崎の技ありゴールで先制する。点が入ったことで固さが取れた後半は、この日4-4-2のトップ下に入った清武を中心に小気味のよい連携を見せ、アフガニスタンを圧倒。首位突破をかけたシリアとの最終戦を前に、きっちりと勝ち点3を積み上げた。

 この日、チームの中心である本田圭佑、香川真司の二枚看板は揃ってベンチスタート。代わってスタメンに入った清武弘嗣や金崎夢生、イングランド・プレミアリーグで旋風を巻き起こすレスターで堂々のスタメンを張る岡崎慎司らが軒並み結果を残した。ハリルホジッチ監督も4-4-2という新たな布陣に一定の手応えを得ているようだ。

 そんななか、決して目立った活躍を見せたわけではないものの、この試合で着実に指揮官の評価を高めた選手がいる。この日フル出場したGKの東口順昭だ。

東口順昭

東口順昭

◆プレー機会が少ない故の難しさ

「GKにとっては難しい試合だった」。 試合後、記者の前に現れた東口は開口一番、こう話した。この日のアフガニスタンのシュートは1本。CKからピンチになった場面はあったものの、カウンターを受けることもなく、決定機は一つも無かった。パッと見、GKにとってはイージーなゲームに見えるが、決してそうではない。試合を通じて味方が一方的に攻め続けるゲームでは自ずとGKがボールに触れる機会はほとんど無い。実はそれこそがこうした圧倒的に攻める試合でのGKの難しさなのだ。

 現時点でハリルホジッチ監督のファーストチョイスとなっている西川周作も、2次予選初戦の対シンガポール戦(ホームで0-0の引き分け)後に格下相手の試合の難しさを語ったことがあった。

「攻め込む時間帯が長かったので、いつも以上に高いポジションを取って、バックラインの選手に対してより近くで、いつも以上に多く声をかけていました。ボールに触れる機会が少ないなかでも集中を持続しないといけないので、“試合に入り続けるように”意識してプレーしました」(西川)

 味方が相手陣内深くに攻め込み続けている場面では、GKは50m以上も離れた場所で試合を見続けることになる。数十分もの間そうした状況が続くと、一人だけ試合の熱から遠ざかってしまいがちになるのだ。そんな中、突如カウンターを受けてシュートに持ち込まれたとしたら。そのシュートにベストな対応をすることは容易ではない。特にこの日の前半のように、圧倒的に攻め込みながらも先制点が取れない展開では注意が必要だ。そうした状況下で格下のチームがカウンターからワンチャンスをものにして下克上を達成するのは、サッカーの世界ではよくある話である。

「プレー機会は少なくなると分かっていたので、つまらないミスをしないように。特に序盤はセーフティにプレーすることを心掛けた」という東口。味方からのバックパスを受けた場面でも、前半はシンプルに前線の選手を狙ってフィードした。相手がどの程度ラインを上げてくるかなど出方を窺う意味もあったが、それと同時に、東口自身がスムーズに試合に入るためでもあった。

◆後半、決して守りに入らず、確かに見せた積極性

 後半に入り、攻勢を強める日本。金崎のアシストから清武が2点目を奪うと、後半18分には酒井宏樹のクロスが相手DFに当たってコースが変わりゴールイン。3-0となり、この時点で勝利はほぼ確実なものとなった。相変わらずボールを触る場面の少なかった東口。そのまま安全なプレーに終始して試合を終えることも容易だっただろう。だが、西川からのレギュラー奪還を目指す東口は後半、少ないプレー機会できっちりと自らの特徴を示して見せた。

 こぼれ球をキャッチした東口から、左サイドのライン際を走った清武弘嗣に矢のようなスローが飛ぶ。前方のスペースへ疾走する清武のスピードを一切殺さない、完璧なスローイングでカウンターの起点となったのだ。ゴールに直結する積極的なプレーは、ハリルホジッチ監督が就任以来幾度となく要求してきた部分だ。それは相手ゴールから最も遠いポジションであるGKも例外ではない。

「GKはボールを持ったら誰よりも早くスプリントしろと言われています。少しでも早く高いポジションを取って、早く前に付けるようにと。監督から一番要求されているのがそれですね」(東口)

 前節まで2次予選の全ての試合にフル出場していた西川は左足からの正確で速いフィードが持ち味だが、スローイングにおいては東口の右に出る者はそうはいない。

「スローイングに関しては誰よりも鋭いボールを投げられる自信がありますし、他のGKには無い自分の特徴だと思っています。キヨに出したやつは左サイドだったので、少しシュート回転をかけて清武が前方で触れるように投げました」(東口)

 点差、時間帯、受け手のプレースタイル等を考慮に入れたうえで、スピードや球種にもこだわり抜いている。所属するガンバの試合でもこうしたスローが出る場面はある。活動時間が限られる代表に比べ、週に約6回も一緒にプレーするクラブチームでの方が受け手の特徴を把握した上でよりよいボールが出せそうなものだが、ハイレベルな選手が揃う代表では“ボールを引き出してくれる選手”が多く存在する。

「ガンバとの戦術的な違いもありますけど、代表の方が味方の切り替えも早いですし、(動きの質が高いことで)ボールを引き出してもらえる感覚もあって出しやすいですね。明確な意図を持って走り出してくれるので、“あ、このタイミングでここに欲しいんやな”というのが分かりやすいです。もちろん互いの特徴をより理解していけば、さらにタイミングも合っていくでしょうし、カウンターの鋭さも増すと思いますね。僕も練習の時から“投げられるな”と思った場面では、例え味方が走っていなくても投げる構えをするようにしています。そうやって意思表示することで味方の選手たちも“あ、このタイミングで走れば出るんや”とか、“これくらいの狭い所は通してくるんや”というのが分かると思うので」(東口)

 それぞれの得意な受け方や感覚など、フィールドプレイヤーたちの個々の特徴を東口がしっかり把握するのと同時に、味方にも自分の特徴を分かってもらうことで、カウンターの鋭さは確実に増す。清武に出したプレーも、紅白戦などで当たり前に継続してきた練習通りのプレーだ。格下相手とはいえ、アジア2次予選という公式戦の中で成功させたことに大きな意味がある。

「ああいうプレーを試合で出せたということが、今日一番の収穫です。練習と公式戦は全くの別物なので。キヨはもちろん、他の選手たちも見ていたと思うので、より自分を信頼して走ってもらえるようになると思います」(東口)

◆アジア予選初出場で得た確かな手応え

 結果的に、この日は最後まで決定的なピンチを迎えることはなかった。だが、少ない機会で見せた質の高いプレーは、圧倒的な攻勢のなかでも集中を切らさず、試合に入り続けることができていた証だ。例えカウンターを受けたとしても、冷静な対応ができたことだろう。試合後のロッカールームでも、指揮官から「よかったぞ」と労いの言葉をかけられた。

 控えGKにとって、試合でアピールするチャンスはなかなか訪れるものではない。FWの選手のように、後半からの途中出場の機会もない。だからこそ、東口にとってこの1試合の結果は大きな意味を持つ。予選突破の可能性が消えていた格下相手の試合だったことを考えれば、この1試合で評価が一気に上がることはまず無いが、自身初のアジア予選出場で結果を残したことは確かな自信に繋がるはずだ。今後、最終予選や強豪国とのテストマッチなど、よりハイレベルで強度の高い試合に出場したときにどこまでできるかが重要になってくるが、この試合が大きな一歩となったことは間違いない。

「今日のようなプレーを継続していければと思います。スローについても、押し込まれる時間が長くなる格上のチームとの試合でこそより活きると思うので、さらに磨きをかけていきたいですね。また使ってもらえるように、練習からしっかりアピールしていきたいです」(東口)

 最後にそう語った東口。本大会まであと2年。レギュラー奪還のための時間は、まだ十分に残されている。

<取材・文/福田 悠 撮影/山田 耕司>

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