「運の流れを変えなければ」――46歳のバツイチおじさんはカジノに活路を見出そうとした〈第20話〉
晩ごはんは、北朝鮮国営のレストランに行った。
中に入ると、北朝鮮の衣装を着た女性が、ウエイトレスをやっていた。
皆、綺麗だ。
どうやら喜び組らしい。
冷麺と北朝鮮の海苔巻きキンパを頼んだ。
様子を見ていると、お客の中には通い詰めている男性客もいるようだ。喜び組の女性も、その人たちとは仲睦まじく喋っている。
一時間ほどたつと、女性たちは奥の部屋に全員帰ってしまった。どうやら何かが始まるようだ。冷麺を食べながら待っていると、その娘たちが衣装を着替え、歌を歌い、ダンスを始めた。
そして、日本語でテレサテンの「時の流れに身をまかせ」を歌った。
ショー終了後、禁止されているはずだが、2S写真をお願いしてみた。
快くではないがOKしてくれた。
顔が小さく、なかなか可愛い娘だ。
こんなチャンスもなかなかないので英語でこんな質問をしてみた。
俺 「プノンペンは楽しいの?」
喜び組 「……全然、楽しくない。ここ好きじゃない」
俺 「国に帰りたい?」
喜び組 「……早く帰りたい。お母さんに会いたい」
俺 「彼氏とかいるの?」
喜び組 「……」
この質問をすると、態度が一変して冷たくなった。
マナー違反なのか?
国からの命令なのか?
どうやらふさわしくない質問をしてしまったようだ。
俺 「ごめんなさい。変な質問して」
ぺこりとお辞儀をして謝った。
一応、ニコリと笑ってくれたが、全体的に彼女たちの笑顔は作られたもので、プロの仕草のように感じた。
「きっとここに通ったら、禁断の恋にはまるかもな」
お会計をすると、ビール一本と冷麺で22.5$(2550円)。
歌もダンスもついて、喜び組が一人担当としてついてくれてこの金額。
高いのか安いのかわからないが、六本木の感覚で言うと安いと思う。
プノンペンに来て数日が経った。
こんな感じでダラダラと日常を過ごしていた。
ダメだダメだ。
これじゃあただのバックパッカーだ。
「俺は世界一周花嫁探しの旅に来てるんだ」
この街で運命の出会いを見つければならない使命が俺にはあった。
しかし、4~5日の間、同じホテルに滞在し、街をうろついたり、一人で飲みに出かけたりしてみたが、誰とも会わないし何も起きない。
さすがに今回ばかりは困り果てた。
「運の流れを変えなければ」
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