作家・樋口毅宏が思う「図書館問題」――お金を払って読んでくれた人こそ読者です

さらば雑司ヶ谷』『タモリ論』などのヒット作で知られ、最新刊『ドルフィン・ソングを救え!』も好調な小説家・樋口毅宏氏。そんな樋口氏がさまざまな媒体に寄稿してきたサブカルコラムを厳選収録した『さよなら小沢健二』が好評発売中。本書の発売を記念して傑作テキストを特別公開いたします!(当コラムは『文藝春秋オピニオン2013年の論点100』(文藝春秋/2012年11月13日刊)に掲載されたものです)

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 ご存知ない方も多いと思うので、まずは所謂「図書館問題」の経緯について説明します。

 きっかけは2011年の1月末。私が拙著『雑司ヶ谷R.I.P.』という小説の仕上げに掛かっていたときでした。800枚に及ぶ長編で、一度はノイローゼになりかけたものの、何とか書き上げた作品でした。たまたまツイッターで、「樋口毅宏の本を図書館で借りた」というツイートを見かけたのです。以前から、新刊の本が図書館で貸出されている現実に、どこか腑に落ちないものを感じていました。そこで、予てよりこの件に関して問題提起をしていた新潮社の石井昂氏(それまで一度も面識がありませんでした)にツイッターで、「氏が提案する〝図書館では初版から6か月間は貸し出しをしないで欲しい〟、それの第一号に僕がなります」と名乗りを上げました。

 翌2月25日、『雑司ヶ谷R.I.P.』の奥付に、「公立図書館のみなさまへ この本は、著作者の希望により2011年8月25日まで、貸し出しを猶予していただくようお願い申し上げます」と記されて、書店に並びました。

 Yahoo!のトップニュースに入るなど、すぐに反響がありました。朝日新聞などの全国紙の取材や、ツイッターでの質問にもできるだけ答えました。いたずらに誤解を招かないよう、私が繰り返した主張は以下の通りでした。

・私も図書館をよく利用しています。むかしの事柄を調べるだけでなく、まだ読んだことがない作家の本を、図書館で借りて読むケースも多いです。たとえば、図書館がなかったら、今は絶版になっている小林信彦の名著と出会うこともなかった。ですから図書館には感謝しています。「樋口毅宏の本を一冊も置くな!」なんて、口が裂けても言いません。それは自分から新しい読者の開拓を閉ざすことですから。

・しかし、ひとつ言いたいのは、「図書館=新刊をタダで読める場所」という認識は、釈然としないというか、どこかおかしくありませんか? ということです。

・図書館にお願いというか、提案があります。税金で私のくだらない本を買うより、千冊売れれば採算が合う、後世に残すべき学術書を買いあげて下さい。

・一般の方にお願いがあります。図書館は「出会いの場」だと思っています。図書館で私の本を面白いと思ってもらえたら、一度読んだものでも、別の本でも構わないのでお買い求め下さい。私の本は六冊出ていますが、すべてを買い揃える必要はないです。一、二冊買ってもらえるだけでも大変ありがたいです。

・お金がない人、生活が苦しい人は買う必要などないです。そういう方こそ図書館で済ませて下さい。

・私の本にかかわらず、買った本を友達に薦めたくて、貸し借りするのは全然アリだと思います。そういう関係って素敵だと思います。

 同意して下さる方が大半でしたが、ヒステリックな反対意見もありました。中でも首を傾げたのは同じ出版業界にいながら、「そんなことをしても意味はない」という人がいたことです。書籍の印税ではなく、雑誌連載を主に収入源としている書評家の発言でした。その方とは直接やりとりはありませんでしたが、僕の担当編集者が「それはいかがなものか」とツイートしたところ、読むに堪えない感情的な罵詈雑言を書き散らしていました。

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さよなら小沢健二

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