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“ヘビ男”ジェイク・ロバーツのフィクション人生――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第70回

 “ヘビ男”ジェイクは3つのミステリーを残した。ひとつめは父スミスとの近親憎悪の関係。ふたつめはDDT発明にまるわるエピソード。そして、3つめは“ドラッグ中毒”のナゾ。いずれも現実とファンタジーがごちゃ混ぜになっていて、いったいなにが真実でなにが妄想なのかがはっきりしない。  ジェイクは過去のインタビューのなかで父スミスとの関係を「虐待の歴史」と語っている。父親は息子のプロレス入りには反対だったというが、じっさいにはジェイクは、父スミスが引退後にマッチメーカーをつとめていたMSWAでデビュー。その後も父スミスのブッキングでアメリカとカナダの主要テリトリーをサーキットした。  父親は親子ほどトシの離れた若い女性と再婚。その義母との性的関係。ジェイクを育ててくれた祖母の再婚。義祖父のアルコール依存症と家庭内暴力。祖母の死。10代で子どもを生んだ妹とその妹が被害者となった誘拐殺人事件。ジェイクの記憶のなかで現実と非現実がジグゾーパズルのように複雑にからみ合っている。  トレードマーク技のDDTは、ジェイクがミッド・アトランティック地区をツアーしていた時代にザ・グラップラーとの試合中に偶然、発明されたものとされている。ジェイクのフロント・ヘッドロックがすっぽ抜けてグラップラーが脳天から落下し、これがのちのDDTの原形となった。  この技にDDT(Dichloro-Diphenyl-Trichloroethane)という殺虫剤の名をアダプトしたのがジェイクであることはまちがいないが、これとまったく同じフォームの技を使っていたレスラーはジェイク以前にも何人かいた。DDTを発明したのはだれか、という議論は現在でもずっとつづいている。
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ドラッグ依存症のナゾ
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