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“毎日がつまらない中年男”はカッコいい【ロックな退屈名言集】

絶望を確かめる

 テキサスの伝説的ソングライター、タウンズ・ヴァン・ザントの「Waiting ‘Round to Die」。 <盗みを働き、ムショ暮らしを味わった自分にも ようやく友と呼べる存在ができた。 色んな悪さも「ただ死ぬのを待つよりまし」と思ってしていたことだが、 これからはこいつとグダグダ過ごして、 あとは死ぬだけ●Heartworn Highways. Townes Van Zandt.
 そして今年4月の来日公演も話題となったボブ・ディランの「Not Dark Yet」。同じく中年の危機を描いたマイケル・ダグラス主演の映画『ワンダー・ボーイズ』でも使われた一曲。 <ここで生まれた私は、心ならずも同じ場所で死ぬだろう。 歩を進めているようで、ただ立ち止まっている。 体中の神経という神経は、感覚を失っている。 一体何から逃げようと、ここまでやってきたのだろう? 祈る声のかすかな音すら聞こえない。 やがてあたりは真っ暗闇●Bob Dylan – Not Dark Yet

そのうえでポジティブに振る舞う

 タウンズ・ヴァン・ザントと同郷のガイ・クラークが歌う「The Cape」には、二つの意味が込められている。 <小麦の入っていた袋をマントに見立てて、 車庫の上から飛び降りて遊んだ小さいころ。 年老いて頭は白くなっても、 同じことを繰り返しているだけのような気がする。 人生も、そんなちょっとした賭けのようなものだから。 腕を広げ、息を止め、まとったマント(cape)を信じるだけ●Guy Clark “The Cape”
 そうして意を決して飛び込むのは、当てはなくとも大きな望みがあると思うから。かの、Cape of Good Hope(アフリカ最南端の喜望峰)ともかかっているのだ。  いくつになっても仕事に遊びに積極的に取り組むのが豊かな活力となることは間違いない。しかし、その裏で落ち着いて受け身を取らせるような力が働いていなければ、その社会は浮き足だっておぼつかないだろう。 「つまらない」と上手く付き合うのも、また一つの技術なのである。 <TEXT/音楽批評・石黒隆之>
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4
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