ダメなんだよホメちゃ――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』36回めです。

今日も六本木SLOW PLAYの奥の席で書いてます。

※⇒前回「ヤメちゃえば?」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
美熟女(熟) 美琴が働く銀座の高級クラブ「サーティンスフロア」のママ
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
東宮(東) 「サーティンスフロア」の常連。不動産会社の社長
綾(綾) 美琴の大学の同級生。「サーティンスフロア」に共に働き始める
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
杉ちゃん(杉) ITベンチャー社長。ヒットアプリ「アリファン」を運営
絵理奈(絵) 六本木「フェロモンキングダム」のホステス。滋賀県出身
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略

〈第36回 飲め〉
――銀座 サーティンスフロア
「わたし今日は飲んでないんで、なんか上場のお祝いにシャンパン入れますよ」

「!!!」
「!!!」
「!!!」

「すごーーーーい♡よかったわねぇ杉ちゃんさん。東宮さん、何がいいかしら?」

「うーん、そうですね。アンリジローありましたっけ」

「はい♡」

「ほら!ちゃんとお礼しなきゃだめでしょ!」

「ありがとうございます!このお返しは!いつかかならず!」

「いやいやいいんですよ。いま大変な時期でしょう。監査とか」

「そーーーなんすよ!!!あいつらSHUUTOMEみたいにイチャモンばっかりつけてきて、もうこっちは精神的に参っちゃって毎日ほんとに大変なんです!」

「監査ってなんですか?」

「うん。僕の会社の株が世の中に広く売られることになるから、その前にウソとか間違いがないかどうか調べる役割の人たち。またはその業務」

「wikiっぽくしゃべらないで」

「はい」

「でも、別にやましいところがなかったらなんにも問題ないんでしょ?」

「そうでもないんですよねー。ねぇ杉ちゃんさん」

「えぇ。そうでもないんです。もちろんやましいとこなんかなんにもないつもりでこのチャンスに臨んでるわけなんですが、アイツらは僕らが自分でも気づかない点を立て続けに指摘してくるんですよ。揚げ足取りのプロみたいな人たちが束になって調べたらそりゃ僕らも見えてないとこ見つけてくるでしょ。その度に知りもしないことの【理由】を問われるわけですから、こっちゃ『さぁ〜?』ってわけにもいかないし、毎日が取調室ですよ」

「でも、そういう宿題ぜーんぶこなしたらたくさんお金はいってくるのよね♡」

「会社にはねぇ…」

「会社には???」

「ロックアップもあるしねぇ」

「そうなんです!でもまぁ創業者が気軽に売るわけにもいかないだろってみんなから言われて、僕、こんな感じだからいくらでも気軽に売れるんですけど、同時にまわりの意見にも流されやすいので、クネクネしてるだけなんです」

「ロックアップってなぁに?」

「上場時に大株主が一定期間持ち株を売れないよっていうルールです。上場直後に大株主が全部売っちゃうとすごい量の売りが出ちゃうでしょ。そうなると一般株主の利益を損ねかねないから、ロックアップ期間というのが設けてあるんです」

「ナルホド…」

「だからね、僕は上場はするんだけど、そりゃまあ上場時に少しはお金も入るけど、どちらかというとそこに至るまでのありとあらゆるダメ出しでグデングデンになりそうで、しかも上場後もそんな状況が続きつつ、今度は業績も上げていかなきゃ一般株主に吊るされる。そんな未来が待ってるなうですよ」

「いやーたいへんだ。上場なんかするもんじゃないねぇ。自分たちで考えて自分たちで稼いだお金の使いみちを、ちょっとお金持ってるだけの老人にあれこれ言われたくないですね」

「まったくです」

「そんなにいやならヤメちゃえばいいんじゃない?」

「うん…僕ぁもう小さな喫茶店でも開いてのんびり暮らしたいよ」

「エー」

「しー!」

「まぁでもいいじゃない♡そんな経験できるひと、世の中にそう何人もいるわけじゃないんだし、せっかくだから最後までやりぬいてみたらどうですか♡」

「でもねー。僕の寿命がそこまでもつかどうか?」


「?」

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