「街の匂いもメシの味も何もかも合わない」――46歳のバツイチおじさんはスリランカに来たことを激しく後悔した〈第25話〉
出国手続きは無事に終わり、人生初の南アジアの国、スリランカに入国した。猿岩石のようにジャンプして入ろうかと思ったけど、目立つと怖いのでやめた。
入国するとすぐにATMでお金を下ろしSIMカードを購入。そして、スリランカの最大都市コロンボに向かう。高速バスの料金はたった86円と安い。
道中、Airbnbで宿を予約していると、隣に座っていた白人バックパッカーが話しかけてきた。
白人「どこから来たの?」
俺「日本です」
白人「一人旅? バックパッカー?」
俺「はい。荷物は22キロもあるんです」
白人「へぇ~22キロもあるんだ。重いね。どこに泊まるの?」
俺「コロンボです。今、ネットで予約しました」
白人「え? ネットで?? 宿なんて着いてから探したほうがいいに決まってるじゃん」
そう言って小馬鹿にしたようにニヤリと笑った。どうやら、ネットで事前予約するのは行き当たりばったりのバックパッカーの精神からすると、少しダサいようだ。それとも節約のため一緒に泊まろうと提案したかったのか。どちらにせよ今の俺には、見知らぬ国の初日に予約なしで宿を探す、そこまでの勇気がない。
それから1時間ほど走ると、『地球の歩き方』に「アジアとヨーロッパを結ぶ貿易都市として発展してきた街」と書いてあったコロンボの街が見えてきた。
「コロンボなんて『刑事コロンボ』でしか聞いたことねーよ」
心の奥の恐怖を打ち消すため、どうでもいいことを口走ってみた。
それほど、緊張感がみなぎっていて落ち着かなかった。
バスを降り辺りを見回すと、その喧騒は東南アジアとは全く異なる世界だった。
古い西洋建築の建物の街並みに香辛料の市場が立ち並び、混沌とした雰囲気を醸し出していた。
そこに暮らしている人たちは、ほぼ全員の顔が浅黒く、目はぎょろりとしていて、その眼光は妙に鋭かった。
東南アジアとはまるで違う、妙に殺伐としたこの感じはいったいなんなんだろう。
みんな、何を考えてるのかわからない。
町中に漂うスパイシーな香りにも馴染めそうにない。
俺はこの国でうまくやっていけるか心配になった。
とにかく、一旦宿に荷物を置いて、冷静になりたかった。
眼光の鋭いちょっと悪そうなドライバーが運転するトゥクトゥクに乗り、宿に向かう。一応、メーター付きのトゥクトゥクなのでぼられる心配はなさそうだ。
15分ほど走ったが、宿はかなりわかりづらいとこにあったため迷いながらもなんとか到着した。メーターを見てお金を払おうとすると、怖面の運転手が謎の交渉を持ちかけてきた。
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