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少年A、小保方晴子…改めて注目される「名前のない世代」とは?

「峰なゆかは本当に天才だと思うんです!」

――本書では同世代の表現者も紹介しています。 佐藤:僕、峰なゆか(’84年生まれ)は本当に天才だと思っているんです(笑)。『アラサーちゃん 無修正』(扶桑社)では、この世代のあらゆるクラスタを描くためにクラスタ自体を擬人化する方法を取っている。それしかなかったですよね。しかも大衆君とか文系君とかの卒業大学まで設定していますよね。 ――そうですね。年収やら出身大学まで一応、決まっていますね。 佐藤:だから、そのあたり完成度は最高なんです。ただ、あえて付け加えるとしたら、やっぱりそれは自分語りであって、前提を共有しない別の世代には伝わらない部分があると思うんですよね。  ただ、「アラサーちゃん」は、峰なゆかの自分語りでありながら、彼女個人については上手に作品から排除しているんです。よく彼女は「(主人公の)アラサーちゃんが自分自身だと思われていますが、それはまったく違います」と発言していますが、このやり方は大江健三郎のような、私小説に見せかけたフィクションを書く作家が採る手法です。ある種、物事を高度に戯画化して描いている。スゴいと思いますね。  峰なゆかが内側から自分語りで描こうとしたクラスタを、僕はこの本を通じて外側から描こうとしているのかもしれません。 ――本作で論壇デビューとなりますが、次回作の構想は。  今って、純文学や批評といった言葉はほぼ死語になっていますよね。真面目な読み物が年々、読まれなくなって、自分語りや共感をベースした読み物ばかりがもてはやされています。でも、僕自身としては、共感では語れない、そうしたジャンルの世界を復興させたいですね。  今は共感があらゆる物事のベースになっていますけど、そもそも本って、新しい知識や発見を得るために、つまり「違和感」を得るためにあると思うんです。だから、僕の本に「著者のエピソードが出てこないぞ?」という違和感を持った人がいたように、共感じゃなくて、もっと違和感を覚えてもらえるような作品を書いていきたいですね。 【佐藤喬】 さとう たかし●フリーランスの編集者。’83年生まれ。著書にサイクルロードレースを描いた『エスケープ』(辰巳出版)がある。 <取材・文/井野祐真(本誌)>
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1982 名前のない世代

少年A、ネオむぎ茶、小保方晴子――。同世代の著者が克明に描く、世代論の最終形!

アラサーちゃん 無修正1

思わず笑っちゃうアラサー女子の本音が満載の一冊

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