万引きでもしたら?――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』38回めです。

今回もラスベガスで書いてます。
フラドロひけないしフラドロひかれるし。

それでは今週もまいりましょう。

※⇒前回「お前みたいの」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略

〈第38回 は?〉
――蒲田 スナック座礁
「ほんとなんです!で、最近まではぼくもいまの暮らしに満足して、楽しくないにしても一生懸命働いてたんですが、つい最近、こう、気づいてしまったというか、ぼくはその、あの…」

「なんだ」

「な、なんのために産まれてきたんだろうって…」

「ブーーーー!!!おもしろいじゃない!!!この子!!!」

「あのな」

「はひ…」

「お前みたいのはな、ひとのために産まれてきたんだ。いいか、ひとのため、世の中のために産まれてきたんだ。だから役に立っててたまに1200円で鏡月飲めたらそれでいいじゃねぇか。なんの文句があるんだ」

「やっぱりそうなんでしょうか。僕にはもう華々しい時間は残されてないんでしょうか確かに競馬場とかカジノとか株は僕に向いてなかったように思えましたが、それでも今までに感じたことのない自由さを全身に感じていたのを覚えてます。もし、もう僕のまわりにはシニガミさんもかみさまもいませんが、自分の力でもう一度あの時間を取り戻すことができたなら、そしてもう一度シニガミさんと仲良く一緒に暮らせたら、ぼくそんなことを夢にまで見て、朝起きたら枕がアホみたいに濡れてたんです」

「関わっちゃマズいタイプね…」

「かもしれねぇな…」

「師匠」

「はい」

「僕、学長と一緒にベンチャーをやりたいです。とは言え僕にはなにもない、なんでもしますと言ったところで今はまだ何もできません。だけどなんでも勉強するし、どんなことだって耐え抜きます。どうか、学長に会わせてもらえますか」

「ベンチャーしたいっておまえ、資本金とかどうするんだよ」

「資本金ってはじめのお金のことですよね。なんとかします。かみさまに言って僕の寿命と交換してもらいます」

「それならあたしの寿命もちょこっとお願いしたいわ」

「それは別途きいてみます。師匠、学長と会わせてもらえますか」

「あいつなー、いつ来るかわかんねぇんだよなー」


「こんばんみー」


「あ!!!」

「お、みんなそろってるな。ポンコツ軍団」

「うるせぇよ」
「学長!ぼく!ベンチャーやりたいです!」

「いいんじゃなーい?」

「よかったじゃない!!!」

「いや、あの、やりたいんですけど、どうやってやったらいいかまったくもってわかりませんし、その、僕、居酒屋で長い時間働いたりしながら大抵のことには我慢できるようになりましたと自分でも思ってるんで、よかったら、もしよかったらでいいんですけど、僕、何から始めたらいいか教えてもらえませんでしょうか!」

「うーん」

「うーーーんだろ?」
「うん」

「なに?どこがいけないの?このコ一生懸命じゃない?」

「すいません!なんか急に!」

「うーーーーーーーん」

「わかる」

「あの、僕の、どこらへんが、いけないんでしょうか」

「んーーーー、そうだなぁ。全部。」

「!!!!」

「全部だってよー。よかったなぁ。あれこれ考えなくて済む」

「で、でも!僕にだって少しくらいはその、役に立ちそうなことがあるんじゃないかって、自分でも思うんですけどどうですか!?」

「ひときわアウト」

「ひときわアウトだってよ」

「………」

「どういうこと?」

「うーーーん。まず、ワシはいま何を言うか考えてるんじゃなくて、キミにどっから説明したらちゃんと伝わるかについて考えてる。いまのキミは食い気味にあれこれ質問してくるから、きっとワシの言葉も【なんとか否定しつつやる気を見せたほうがいい】くらいに思ってしまっている。つまり、キクミミモテナイモードになっている。ワシはそういうめんどくさいひとがちょっと苦手なんじゃ…」

「そ、そんなことないです!なんでも聞きます!」

「ほら、そうやって『そ、そんなことないです!』って言う。ひとの話を聞くときにはまず納得をしたほうがいいぞ。考えが変わりそうにない人間に無償でアドバイスを与えるプロはゼロだとおもったほうがいい。僕、どうしたらいいですか?って言う奴に根気強くアドバイスをし続ける大人はキミのことをカモだと思っていると思って差し支えない」

「はーーーーー」

「ジジイ、いいこというじゃねぇか。飲め」

「おっ鏡月。さんきゅー」

「………」

「けんたくんだっけ?」

「はひ…」

「なんでベンチャーやりたいの?」

「いや、その、僕、毎日なにもなくて、このままじゃ、僕、なんのために産まれてきたんだかわからないっておもって、自分の人生を生きたいというか、そんな言い方するのはおこがましいんですけど、学長に出会って、こないだ聞いたお話を個人的にチャンスだと思ってます」

「人生に刺激がほしいの?」

「そ、そういうわけじゃないんですけど…そうかもしれません…」

「万引きでもしたら?」

「ダメですよ!!!!」

「そうかー」

「あのな」

「はひ」

「なんでもない」

「おしえてくださいよぉおおおおお!!!」

「ちょっと吐いてこい」

「はひ…」


トトトトト…

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