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「よかったら一緒に観光しない?」――46歳のバツイチおじさんは国連に勤める才女から突然デートに誘われた〈第26話〉

あと、素手でカレーを食べることで、もう一つの発見をした。 最近の日本の社会問題であるスマホ中毒。 右手でご飯を掴むと、ご飯を食べる時にスマホの画面がベトベトになるため触れない。 ゆえに、食事中にスマホを見る人がいない。 スリランカの人は食事中にスマホを見ずに、家族団らんを愛し、わいわいと楽しそうに食事をする。 素手で食べることが家族団らんにもつながるとは、考えもしなかった。

右手でチキンカレーを食べるバツイチおじさん

お会計のタイミングで、俺とギチは少々面食らった。 そのレストランは路面店の3倍くらいの金額がしたのだ。 俺とギチは顔を見合わせるも、そんなことをして安くなるわけがない。 2人で割り勘をし、高級なスリランカレストランのお会計を済ませた。 その様子をトゥクトゥクドライバーは静かに見ていた。 彼は「ごちそうさま」や「ありがとう」とは決して言わず、ただ見守るだけだった。 全てのツアーが終わり、俺たちは宿に向かうことになった。 ふと気づくと、トゥクトゥクドライバーは行きの道とは別人のように無言で運転していた。 俺「トゥクトゥクドライバーさん、やけに静かになったね」 ギチ「うん。どうしたんだろう」 ギチがジョークを言っても、一向に乗ってこない。 様子がおかしい。 ギチ「……あれ、道が違わない?」 俺「ちょっとグーグルマップでチェックしてみる。……あ、ほんとだ。少し道を外れてる」 どういうわけか、帰り道を大きく外れ、大回りをしていた。 金額は1日貸切にしているからどこを回っても同じ金額のはず。 なぜこんなことをわざわざするのだろう。 俺は少し不安になった。 以前、コロンボの街のトゥクトゥクドライバーは到着した後に倍額の金額交渉をしてきた。 何も言わず道を外れるなんて少し異様だ。 俺はギチを守るため少し身構えた。 そして空気が悪くならないよう気にしながらドライバーに質問した。 俺「ドライバーさん、道、少し外れてるよね」 ドライバー「……まぁね」 俺「グーグルマップだと違う道なんだけど」 ドライバー「大丈夫大丈夫。まだ時間は余ってるよ」 俺「ねぇ、どこに向かってるかだけ教えて!」 俺は少し大きな声を出した。 すると彼は、俺を無視しニヤリと笑い、運転を続けた。 「やばい、これは危険だ……」 道はどんどん狭くなり薄暗い山道に入った。 すれ違う車もほとんどいない。 俺とギチはいつしか無言になっていた。 彼女もまた何かを察したようだ。 15分ほど進んだ後、山の中の一軒家の前でトゥクトゥクが止まった。 ドライバー「到着したよ」 俺「ここどこ?」 ギチ「……」 ドライバー「家の中に入りな」 俺たちは言われるがままに家に向かった。 俺は彼を観察し、逃げるチャンスを伺った。 次の瞬間、ギチと目が合った。 二人は目で合図を送り合い、逃げるタイミングを確認すると――。 バン!!! 突然、大きな物音が響いた。 中から一人の若くて綺麗な女が出てきた。 手には何も持っていない。 すると、女性の後ろから、バタバタと走る音が近づいてきた。 俺は身構えた。
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身構えた…が…!
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