世の中に放り出される仔鹿――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』39回めです。

今回は六本木SLOW PLAYの奥で書いてます。

それでは今週もまいりましょう。

※⇒前回「は?」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略

〈第39回 カウントダウン〉
――蒲田 スナック座礁
「あのな」

「はひ」

「なんでもない」

「おしえてくださいよぉおおおおお!!!」

「ちょっと吐いてこい」

「はひ…」


トトトトト…


「むらた」

「ん?」

「あのコがベンチャー向きじゃないのはわかるよな」

「まぁな。惹かれるものがないな」

「やっぱりそこって大事よねー」

「でもな、何も気づかずに我慢して働きつづけてる連中よりは一歩進んでるんだがな。いかんせん、生産性という意味においては世の中で1番厄介なポジションに落ち込んだ感は否定できないと思うんじゃ」

「まぁそうだろうな」

「なんかやらせてみる?」

「むりむりー。なんかできる奴だったらとっくにやってるっつの」

「やっぱそうかなー」

「でも、ほら、彼にも向いてることとかあるんじゃない?誰かのサポートをするとか。そういうこと」

「まぁねー。だけど本人が自分のことしか考えてないから、ちょっとそれも難しいんじゃないかなー」

「自分のことしか考えてないひとはだめなの?」

「うん。自分のことしか考えてないひとは、もし能力があるのなら、待遇を改善してたくさん働いてもらうのに適したひとなんじゃ。だけど能力がなくて自分のことしか考えてないひとっていうのは、ただ単に自分の我慢とか犠牲にした時間に見合う報酬を要求するだけのひとなんじゃ。こういうひとは最近のベンチャーには一切向いてない。最近のベンチャーは、そういう人に邪魔された才能たちがどんどん自由に活躍できる環境を自分たちで作り上げるっちゅートレンドじゃ」

「いろいろあるのねー」

「理解度7%くらいなんじゃな」

「うん」

「あいつ遅いな」

「みてくるわね」



「むらた」

「なんだよ」

「おまえは起業とか興味はないのか?」

「いやだよ俺は!嘘がつけねぇんだ。どんなに金が儲かっても、嫌いな奴にキライだって言えないような立場にはなりたくねぇ」

「そうか…だったらけんたくんを社長にしてお前が支えるってのはどうだ?」

「は?」

「だから。お前はヨコで支えるだけ。そんだけでいいの」

「意味ないじゃん」

「んーまぁ、意味ないこともないんだな。なにしろほら、健太くんはお前のことを先輩としてとても慕っているわけだし、もし万が一健太くんがベンチャーなんかを始めたら、それこそあの仔鹿ちゃんが世の中に放り出されるわけじゃろ。そんなとき、お前がいるのといないのでは大違い産業株式会社なんじゃよ」

「んー」

「ま、ちょっと考えておいてみてくれ。ワシもけんたくんにマンツーマンで頼み込まれるのはちょっと重いけど、あれこれやりたいこともあるしな。なにしろ世の中は今までにない変化がジワジワ進んでて、先回りしておいたら大抵のことは儲かるようにできておる」

「今までにない変化?」

「うむ。それはな…」


「ただいまもどりましたぁ!!!もう完璧に元気デスァ!!!」

「おう。飲め」

「は、はひぃ…」

「このコえらいのよ。ちゃんと掃除してた。カラ拭きまでしてたの」

「ほう、カラ拭きまで。それはなかなかできるもんじゃないな」

「ありがとうございマスっ!起業させてくださいっ!」

「おっけー」

「え」

「いいよ。そのかわりテスト。いまから1分以内にワシが1,000円で買いたくなるものを提案して。それではよーーいスタートーーーーーーーー」

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