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中邑真輔が凱旋マッチ!「WWE日本公演はプロレスの“起承転結”が見られた大会」

鈴木健.txt氏が大会を総括

 2001年から2008年まで7回に渡りレッスルマニアを現地で取材している、鈴木健.txt氏に今回の公演の総評をしていただいた。 ――中邑選手は、スタイルはそのままですが、アメリカのテイストが少し入っていたように思います。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1149304

対クリス・ジェリコ 「(c)2016 WWE, Inc. All Rights Reserved.」

「アメリカのオーディエンスの前でやっていると、当然、見せ方も変わってきます。でもベースとして、日本で見せていたものをそのまま見せたということは、現地でもそれが受け入れられているということです。以前のWWE日本公演は、TAJIRI選手やヨシ・タツ選手のように“MADE IN WWE”のキャラクターに生まれ変わった選手の、別人のような姿を見せていました。テレビでしか見られなかった向こうのキャラクターをライブで見られるというのを、ファンは喜んでいたんですよね。それがここ数年では変わってきて、WWE側が、『日本で培ってきたものをそのまま見せてくれ』という流れになっています。今回、新日本プロレスのファンは、中邑真輔がそのまま帰ってきてよかったと思っただろうし、WWEのファンはNXTでやっていることを生で見られたので、それはそれで嬉しかっただろうと思います」 ――アメリカ流の合唱が日本でも聞かれたのが意外でした。 「WWEは、ライブに行って、合唱したり決め台詞を叫んだり、コスプレしたりする参加型の文化です。中邑選手の『イヤァオ』もそのまま現地でやられているわけで、その時点で中邑選手は一つアドバンテージがあったと思います。ファンがシンスケ・ナカムラと一体になれるものを既に持っていた。尚且つ、現地のオーディエンスが入場シーンのときに合唱することによって、自分たちなりの文化を築き、それをWWEネットワークで見た日本のファンもやりたがる。いまは一つの文化をアメリカと日本が同時進行で共有しています」 ――今大会で、一番ポイントになった試合は。

AJスタイルズ 「(c)2016 WWE, Inc. All Rights Reserved.」

「AJスタイルズはやっぱり素晴らしかったですね。WWEに入って半年くらいにも関わらず、WWEで長きに渡りトップを張っているジョン・シナに、数週前に現地で開催されたビッグショーに続いて勝ったわけですから。いまはサイクルが早いんですよね。ニューカマーでも実力があればすぐ上にいける。中邑選手もクリス・ジェリコ、ケビン・オーエンズに勝ちましたが、あれは過去に感じた壁を思えば本当に凄いことです」 ――初日、AJスタイルズの試合に、バレットクラブが乱入したのも興奮しました。

バレットクラブ 「(c)2016 WWE, Inc. All Rights Reserved.」

「乱入してAJスタイルズが勝ちましたが、試合が終わったあと、ジョン・シナがアティトュード・アジャストメントという得意技も出して三人を蹴散らしたんですよね。最終的には、勧善懲悪なんですよ。乱入した者たちをジョン・シナが成敗した。見たいものをちゃんと見せて、オーディエンスをすっきりした形で帰らせるのがエンターテインメントの原則です。そして、喜怒哀楽。今回の公演では、マイクのやりとりはほとんどなかったですよね。だから試合の中で喜怒哀楽を表現する。それによって見る側も感情移入できるんです。

乱入したバレットクラブ 「(c)2016 WWE, Inc. All Rights Reserved.」

 もう一つは、起承転結です。一つの試合の中に起承転結があるというのが、AJスタイルズvsジョン・シナの試合でとくに顕著でした。試合のスタートが“起”、攻防が“承”、そしてカール・アンダーソンとドグ・ギャローズが乱入してきたところで“転”が訪れた。“結”としては、AJスタイルズが加勢されて勝ったけれども、本当の“結”では、ジョン・シナが大暴れする。起承転結がしっかりしていると、理解しやすい。大会全体としても、セミファイナルに組まれた中邑選手の試合が、“転”になっていました。あそこで雰囲気がガラッと変わって、その後に“結”としてメインイベントがあったんです。  一つの試合の中でも、大会全体を通しても、起承転結がきっちりとしているのがWWEです。日本のプロレスもそうですが、WWEはとくに、勧善懲悪、喜怒哀楽、起承転結の3つを忠実に描いています。TVショーではないからストーリー展開はないですが、ハウスショーでこそ個々の地力が見えてくる。それが見ている側にも伝わったのが、今回の日本公演だったと思います」 ■WWEネットワーク:http://www.wwe.com/wwenetwork 取材・文/尾崎ムギ子 撮影/今井裕治
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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