「俺と二人で旅がしたいの?」――46歳のバツイチおじさんは男前すぎるセリフを真顔で言い放った〈第27話〉
ヌワエラ村に着く頃には辺りは暗くなっていた。ヌワエラ村はキャンディやコロンボなどの洗練された街に比べたら少し田舎で、その街に住んでいる人たちもどこか牧歌的な匂いを感じた。
俺はバスを降り30分ほど歩き、パークビューゲストハウスへと到着した。
ゲストハウスのオーナーとの金額交渉が終わり、部屋に荷物を降ろすと、ダブルベッドだということに気づく。
その後、共有スペースでリーを探した。
すると、同い年ぐらいの女性とソファに座っているリーを発見した。
俺「リー!」
リー「……あ」
彼女は俺を見つけると、一瞬、恥ずかしそうな表情をした。
そして隣の友達に悟られないように平静を装った。
俺「持ってきたよ!」
リー「ありがとうございます。部屋番号教えて下さい。あとで取りに行きます」
部屋のダブルベッドに寝転がり、スマホを見ながら彼女を待った。
『コンコン!』
リー「いますか?」
俺「どうぞ~」
リー「わー、大きなベッド」
彼女は少し顔を赤らめた。
俺「この部屋しか空いてなかったんだよ」
俺は白いスニーカーを取り出した。
俺「はい、これ」
リー「あーー、ありがとう。私、感動してるかも」
俺「ははは。いやぁ、まぁ」
リー「本当に本当にありがとう」
リーの目の奥はキラキラと輝いていた。
感動して泣いてるようにも見えた。
それから、彼女の態度が明らかに変わった。
リー「ベッドに座ってもイイですか?」
俺「……どうぞ」
彼女は俺の隣に座り、今日起きた出来事や、おいしかったご飯の話などを楽しそうに喋った。彼女の心の扉は完全に開いたようだ。
俺「中国人のお友達、どこで知り合ったの?」
リー「コロンボの宿で友達になって、連絡が来て一緒に旅しようって言われて、今日合流したんです」
俺「一緒の部屋?」
リー「そうです。二人でワンベッドです」
その夜、リーとお友達の中国人ティンティンと3人で晩御飯にチキンカレーを食べに行った。
ティンティン「二人はどこで知り合ったの?」
俺「前の宿が一緒で、彼女がスニーカーを忘れたから持ってきてあげたんだよ」
ティンティン「えーー、わざわざ? ロマンチックな話〜」
リー「……」
リーは顔が真っ赤になった。
俺「いや、日本人として、当たり前のことをしただけだよ」
ティンティン「本当に~?」
ティンティンはニヤニヤしながら、ゴシップ心を強く剥き出した。
どうやらこの手の話は万国共通で女の子の興味を惹くようだ。
正直、少々ウザい。
彼女は笑ってはいるが、目の奥は笑っていないように感じた。
リー「もーーやめなさいよ。どころでごっつさん、明日の朝、何やってます?」
俺「何も決めてないけど」
リー「私たち、自然公園で山登りするんですけど、一緒に行きませんか? すごく綺麗らしいです」
俺「え、行く行く。予定ないし。何時?」
リー「朝4時に出発です。朝4時にごっつさんの部屋ノックしますね」
朝4時に部屋まで迎えに来てくれるなんて。
なんだ、この恋人同士のようなホスピタリティは。
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