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人生は決して諦めないこと…映画『トランボ』に学ぶ【コラムニスト木村和久】

 トランボは、議会の公聴会で宣誓拒否をして投獄されますが、どうやって名誉を回復したか。それは生きるため、家族を養うために、B級映画の脚本を、恐ろしく安いギャランティで、しかも偽名で書きまくったのです。これって、1980年代の日本で、エロ本書きからライターになったり、ストリップ小屋の幕間コントからTVスターになったりする動きと、多少似ていますね。トランボはB級映画会社から、何十本も脚本を書きまくりますが、そのなかで「黒い牡牛」という作品が、アカデミー原案賞を受賞。人生2度目の、偽名でオスカーを得ることとなりました。  偽名でも才能は溢れでます。評判を呼び、カークダグラスが、映画「スパルタカス」を主演するときに、脚本をトランボに実名でクレジットさせる条件で依頼。この時の、反対勢力との攻防戦は見ものです。女性ジャーナリストが、ロビー活動で、トランボを抹殺しようとしますから。権力者のおばちゃんに睨まれたら怖いのは、いつの時代も同じです。そして、いろいろバトルもありましたが、次第に赤狩りの勢いも下火になり、ようやくトランボは名誉を回復できる運びとなったのです。  トランボの作品で個人的に好きな映画は「パピヨン」(1973年)という作品です。胸に蝶の刺青があるからパピヨンと呼ばれた男を、スティーブ・マックイーンが演じ、相棒のドガがダスティン・ホフマン。ふたりはギアナの刑務所に投獄されるが、そこは生き地獄でした。このままじゃ、死を待つしかない。そこで脱出不可能と言われた、刑務所からの逃亡劇が始まります。当時、3回脱獄に失敗したら死刑という暗黙のルールがあり、ふたりは2度失敗。次は死だというときに、パピヨンは望みを捨てずに果敢に脱獄を試みます。3度目に連れて来られた絶海の孤島からは、ほぼ脱出不可能。毎日、海を見ているパピヨン。そしてふとあることに気づくのでした。島に押し寄せる波は、7回目で外に流れると。その波に乗っていけば外に出られるのではないか。スタントなしで崖から飛び降りるマックイーン。彼は見事、ココナッツの実で作った浮き輪に乗って、外界へ脱出に成功します。そしてBGMは、名曲パピヨンのテーマが流れてきます。もう涙なしには語れません。  トランボが「パピヨン」で言いたかったのは何か?それは「絶対に諦めないこと」、これに尽きます。自らの人生を投影しているような、主人公の生き方ですね。「トランボ」もいいけど「パピヨン」もいい。気が向いたらレンタルビデオ屋さんにでも寄ってみて下さいね。
木村和久

木村和久

■木村和久(きむらかずひさ)■ トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦 ■映画情報■ 『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』 7月22日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー 配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
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