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ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード07=リック・ルードの証言――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第160回

 オシェー検事の尋問はルードとビンスの“問題の会話”とそのディテールへと移っていった。 「ビンス・マクマホンとのある会話についてお聞きします。1988年9月に結婚したあなたは、子どもをつくるためにステロイド使用をやめた」 「ステロイドを使っていると体内の自然なテストステロン(男性ホルモン)の数値が下がり、精子の量が少なくなる。子どもをつくろうとしていたので(ステロイド使用を)やめました。ビンスから『体が細くなったな』と声をかけられたので、トレーニングはしているがスケジュールがタイトで体重が落ちたと答えました」 「そのとき、マクマホンはあなたに『ステロイドを使え』と命令した?」 「『ステロイドを使え』という表現ではなかったと思います」 「では、どういう表現でしたか?」 「もっとがんばれよ、という感じでした。“ガス”“ジュース”といった単語は使ったかもしれませんが」  ビンス・サイドの弁護人ジェリー・マクデビット弁護士による反対尋問では、ビンスがルードとの会話で“ステロイド”という単語を使ったかどうかが重要な争点となった。ルードはこう証言した。 「(ビンスは)ステロイドという単語はいちども使いませんでした。」  マクデビット弁護士は、ルードにザホリアン医師との関係についても尋問した。 「ビンスはオレのコンディションを気にかけていた。オレはザホリアン医師からステロイドを買ったことはないし、ビンスから『いいドクターがいる』と教えられたこともない。もし、(ステロイドを)使っていたとしても、わざわざボスのまえで注射をしてみせる人間はいないと思いますよ」  ルードのコメントは、どうやらルードなりの“プロレスラーの常識”だった。マクデビット弁護士は証人のリアクションに満足した様子だった。(つづく)
斎藤文彦

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