“ブレット暴走”というシミュレーション――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第143回
ケガによる欠場というローラー・サイドの“演出”でいったんは中止がアナウンスされたブレット対ローラーのシングルマッチが急きょ実現したことで、アリーナ内の空気はいっきにヒートアップした。ライブの観客は、ブレット対ローラーの因縁ドラマを“サマースラム”の事実上のメインイベントととらえた。
試合は6分32秒、ローラーがブレットのシャープシューターにギブアップの意思表示をしたが、エキサイトしたブレットが試合終了のゴングを無視してシャープシューターの体勢をキープしたためレフェリーが判定をリバース。ローラーの反則勝ちをコールした。
異常事態を察知したブラックジャック・ランザ、トニー・ガレア、レネ・グレイといったシニア・エージェント、控えのレフェリー数人がすぐにかけつけてブレットを静止したが、ブレットは攻撃の手を緩めず、ローラーの腰をシャープシューターで絞めつづけた。
大混乱のラストシーンから数分後、こんどはブレットの弟オーエン・ハート、兄ブルース・ハートが私服姿でリング内に飛び込み、ブレットを半失神状態のローラーから引き離した。ようやく冷静さを取り戻したブレットは、観客席に向かって“ニヤリ”と確信犯的な無言のスマイルを投げかけた。それは典型的なベビーフェースとされているブレットが“暴走モード”に入ったらどうなるか、という一種のシミュレーションだった。
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