“ブレット暴走”というシミュレーション――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第143回
結果的にブレット対ドインク、ブレット対ローラーのシングルマッチ2試合と試合終了後の番外戦の乱闘シーンは、スーパーイベント“サマースラム”のどまんなかの45分間を完全に占拠していた。ブレットはリングのなかに立っていたランタイム=合計時間と観客とのコミュニケーション能力で、“ビンスの選択”ルーガーとの実力と経験の差をディスプレイしてみせた。
メインイベントにラインナップされたルーガー対ヨコヅナのWWE世界戦は17分58秒、ルーガーが“疑惑のエルボー”でヨコヅナを場外に転落させてのカウントアウト勝ち。タイトルマッチ・ルールによりピンフォール、ギブアップ以外の裁定では王座移動は認められないため、王者ヨコヅナが王座防衛に成功した。
試合終了後はランディ・サベージ、リック&スコットのスタイナー兄弟、タタンカらこの時点での主流派グループがリングにかけ上がりルーガーの勝利を祝福。アリーナの天井から赤、白、青の無数の星条旗カラーの風船が舞い降りてきて、スタイナー兄弟がルーガーを肩にかついで観客の声援に応える“感動的なシーン”がそのまま“サマースラム”のエンディング・シーンになっていた。
ブレットはこの日が完全決着戦となるはずだったローラーとの因縁ドラマをto be continuedモードに変換し、ルーガーは“試合に勝って勝負に負ける”という不完全燃焼パターンでWWE世界王座奪取に失敗した。ポスト・ホーガン体制の主役選びはまたしても先送りされた。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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