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中国の「対外強硬政策」を挫折させたベトナムと日本の戦略

中国の脅しに屈しなかった安倍政権

 一方、日本に対して中国は、日米同盟にくさびを打ち込もうとした。  第一のくさびは尖閣諸島である。米国政府は、他国どうしの領土紛争には特定の立場をとらないことを決めている。中国が尖閣諸島の領有権を主張しても、米国は日本を支持できない。  第二のくさびが靖国神社の参拝問題だ。中国が侵略の被害者として日本の首相の靖国参拝を非難しても、米国としては日本を弁護できない。  この二つのくさびを打ち込むべく、中国は「2014年11月の北京でのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の会合に参加したければ、一つの合意と一つの約束を守れ」と日本政府に迫った。「一つの合意」とは領土問題が存在すると認めること。「一つの約束」とは靖国神社に参拝しないという約束のことだった。  中国は「言うことを聞かなければ巨大市場を失うぞ」と脅せば、日本企業が日本政府に圧力をかけ、中国の要求に屈すると読んでいた。しかし、中国の読みは幻想に過ぎなかった。  靖国不参拝の要求は安倍政権によって無視された。尖閣については、「双方は、尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していると認識し」たのみで、領土問題の存在を認めることも拒否された。安倍外交の完勝である。  日本が参加しないAPEC(アジア太平洋経済協力会議)など意味はない。日本政府が「中国の無法な要求に従わなかったので、参加を拒否された」と公表すれば、参加国は一斉に非難の声をあげ、中国は国際社会で赤っ恥をかき、反中包囲網はますます結束を強めただろう。

対中包囲外交に求められる国民の見識と気概

 中国の領海主張を否定した仲裁裁判所裁定は、国際法による法治を求める安倍政権の主張を国際社会が支持したことを示すが、残念ながら、その裁定は強制力を持たない。中国を抑え込むには、日本が周辺諸国と協力して対中包囲網をつくり、島嶼防衛ができるだけの防衛力を築く必要がある。そのためにも国民は国家の主人公として、それを支持する見識と気概を持たなければならない。それが自由民主主義国家を守るための国民主権の大原則である。 <文/伊勢雅臣> 参考文献:エドワード・ルトワック『中国4.0 暴発する中華帝国』(文春新書) 【伊勢雅臣(いせまさおみ)】 創刊20年となる殿堂入りメールマガジン『国際派日本人養成講座』編集長。「クール・ジャパン」の草分け的存在として、明日の日本を背負う日本人4万5千人を育てている。近著に『世界が称賛する 日本人が知らない日本』(育鵬社)。「国際派日本人養成講座」(http://blog.jog-net.jp
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世界が称賛する 日本人が知らない日本

殿堂入りメールマガジン『国際派日本人養成講座』の集大成

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