死ぬことが決まっている沼――連続投資小説「おかねのかみさま」
神「将来の見通しは?」
杉「いまのところありません…」
死「ポリポリ…」
神「起こりうる最悪のシナリオは?」
杉「えーと、お金がかかりすぎるのにお金がはいってこないわけですから、会社が生きていけなくなります。その前に、アリファンカンパニーは上場直前なわけですから予定していた数字が達成できないとなると株主からの信頼がガッツリなくなります。つまり、昨年までの爆発力を期待して買ってくれた方に、上場後はじめての決算でものすごいマイナスを見せることになってしまう。そしてその状況を事前に証券会社に伝えたら、上場自体が延期になる可能性すらあります」
死「クハー」
神「こまりましたね」
杉「はい…」
神「誰にどのタイミングで正直に伝えるか、そして、正直に伝えた場合この会社に果たして価値があるのか、そしてそもそも、そこまでして皿回しを続けなきゃいけない理由とはなんなのか。この3点くらいですかね」
杉「はい…」
神「まぁ、動き始めたことですから、やれるところまでやっていきましょう。現在の課題に対処しつつ、いまの事業が死にかけているならそのスピードを抑えつつ、その上でまったく新しい事業の準備をして、未来のある会社として生まれ変わらせる」
杉「はい…」
神「一時的に資金調達の必要もあるかもしれませんが、その際にも時代遅れのサービスをしていて競争力がなくなったというカイシャには誰も関わりたくはありませんからね、ローコストで画期的なものに取り組んでいる姿勢は必須でしょう」
死「イイコトイウ」
杉「資金調達といっても…上場準備にはいっていますので、この段階で出資を受けることはできないんです…」
神「借り入れになりますね。それと同時に、出て行くほうのお金も絞る必要があるでしょう」
杉「…」
神「卓球台スペースはもっと若い会社に机単位で貸したらどうですか」
杉「はい…」
神「他にもこまかくできることはあるかもしれません。まずは売上の減少に耐えられるカイシャに作り替えて、そこから未来をつくりましょう」
杉「わかりました…」
社員A「社長ちょっと…」
杉「ん?」
社「創業メンバーの薄井さんから内容証明が…」
杉「え?」
次号へつづく
【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。
Twitterアカウント
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2011年創刊メルマガ《頻繁》
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「大井戸塾」
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井戸実氏とともに運営している起業塾
〈イラスト/松原ひろみ〉
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