北方謙三「大水滸伝シリーズの本当の終息は俺が死んだときだ」
――読者をとても大事にされているんですね。
北方:読者というより、俺はいつも、たったひとりの孤独な人間に向かって書いているつもり。声も聴こえないし、姿も見えない、けれどいつもそこにひとりでいる。自分も孤独な状態で書いているから、パッと触れ合った瞬間、ものすごく澄んだ音がするんだよ。そういう瞬間を積み重ねているうちに、あるべき人の生きざま、死にざまが自然と浮かんでくるっていう感じかな。
――ちなみに、登場人物が死ぬたびにご自身は弔い酒をなさっているとお聞きしました。
北方:そうそう、『水滸伝』の後半なんてバカバカ死んでいくから大変だったよ。もう、部屋中にワインの空き瓶がごろごろ転がってるわけ。で、バーでもそんなことをやってたら、現実に誰か死んだんだと思い込んだママが、とことん付き合って飲んでくれたあげくに潰れちゃったりさ(笑)。そういう、書いている俺自身にも物語がいっぱいあるのも面白いな。
※このインタビューは8/9発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』から一部抜粋したものです
【北方謙三】
’47年、佐賀県生まれ。中央大学法学部在学中に作家デビュー。’82年にハードボイルド小説『逃れの街』を発表以来、次々にヒットを重ね、’99年より『水滸伝』の執筆を開始。最高峰の大衆小説と評され’06年に司馬遼太郎賞を受賞。2013年には紫綬褒章受章
取材・文/倉本さおり 撮影/江森康之
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