スポーツ

ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード19=オシェー検事の論告――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第172回

 オシェー検事は、この事件の真相を知るための“決定的証拠”としてリンダ社長がパターソン副社長のデスクに送ったとされる1989年12月1日付の社内メモのコピーを読み上げた。  リンダ社長本人が書いたとされるメモの内容は①「ペンシルベニア州がステロイドをはじめとする違反薬物の調査をはじめるらしい」とビンスが話していた②ザホリアン医師を(リング・ドクターとして)試合会場にアテンドさせるのはやめたほうがいい。ビンスも同じ意見③ザホリアン医師に連絡を取り「あなたも捜査を受けるかも」と伝えてあげたほうがいい、といったものだった。オシェー検事は、このやりとりを“犯罪の認識”を示すものと指摘した。  弁護側がメディア向けのセンセーショナリズムと非難した“スーパースター証人”ホーガンの出廷については、オシェー検事は「(ホーガンに)真実を語ってもらうため、司法取引により彼の罪状には免責を与えた」と説明。  ビンスの“元秘書”エミリー・ファインバーグ氏の証言についても「善良な一般市民が検察の召喚に応じて証言したもの」として「WWEからの退職金の支払いが終わったと同時に元上司のビンスをFBIに“売った”」とする弁護側の“個人的な怨恨”説を否定した。  ミシュラー裁判長は「検察サイドは、被告が医師の処方せんなしに規制薬物を販売・流通するための謀議をおこなわれたこと、また、被告と共犯者とが違法と知りながら謀議を計画したことを証明しなければならない」と“共同謀議”の定義を陪審員に説明。違法行為(ここでは規制薬物の販売・流通)によって被告や被告が所属する会社・団体が利益を上げたとしても、それ自体は共同謀議には当たらないことを確認した。  3週間、全12日間(7月6日~21日)の審理は検察側の論告でいったん終了。評決は“共同謀議”の定義とその解釈にゆだねられる可能性が高くなった。オシェー検事は「薬物の取引は犯罪。法律を犯せば罪になります。被告を有罪に」と陪審員に語りかけた。(つづく)
斎藤文彦

斎藤文彦

※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦 イラスト/おはつ ※斎藤文彦さんへの質問メールは、こちら(https://nikkan-spa.jp/inquiry)に! 件名に「フミ斎藤のプロレス講座」と書いたうえで、お送りください。
1
2
3
おすすめ記事
ハッシュタグ