鳴り止まない電話――連続投資小説「おかねのかみさま」

みなさまこんにゃちは大川です。

『おかねのかみさま』45回めです。

1週おやすみいただきました。
今回はソウルで書いてます。

※⇒前回「皿回し」


〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
杉ちゃん(杉) ITベンチャー社長。ヒットアプリ「アリファン」を運営
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略

〈第45回 繰り返すな〉
渋谷区桜丘 アリファンカンパニー

「起こりうる最悪のシナリオは?」

「えーと、お金がかかりすぎるのにお金がはいってこないわけですから、会社が生きていけなくなります。その前に、アリファンカンパニーは上場直前なわけですから予定していた数字が達成できないとなると株主からの信頼がガッツリなくなります。つまり、昨年までの爆発力を期待して買ってくれた方に、上場後はじめての決算でものすごいマイナスを見せることになってしまう。そしてその状況を事前に証券会社に伝えたら、上場自体が延期になる可能性すらあります」

「クハー」

「こまりましたね」

「はい…」

「誰にどのタイミングで正直に伝えるか、そして、正直に伝えた場合この会社に果たして価値があるのか、そしてそもそも、そこまでして皿回しを続けなきゃいけない理由とはなんなのか。この3点くらいですかね」

「はい…」

「まぁ、動き始めたことですから、やれるところまでやっていきましょう。現在の課題に対処しつつ、いまの事業が死にかけているならそのスピードを抑えつつ、その上でまったく新しい事業の準備をして、未来のある会社として生まれ変わらせる」

「はい…」

「一時的に資金調達の必要もあるかもしれませんが、その際にも時代遅れのサービスをしていて競争力がなくなったというカイシャには誰も関わりたくはありませんからね、ローコストで画期的なものに取り組んでいる姿勢は必須でしょう」

「イイコトイウ」

「資金調達といっても…上場準備にはいっていますので、この段階で出資を受けることはできないんです…」

「借り入れになりますね。それと同時に、出て行くほうのお金も絞る必要があるでしょう」

「…」

「卓球台スペースはもっと若い会社に机単位で貸したらどうですか」

「はい…」

「他にもこまかくできることはあるかもしれません。まずは売上の減少に耐えられるカイシャに作り替えて、そこから未来をつくりましょう」

「わかりました…」

社員A「社長ちょっと…」

「ん?」

「創業メンバーの薄井さんから内容証明が…」

「え?」

「こちらです…」

「……なにこれ?」

「はい。当社のアリンコキャラの著作権を主張する文面です。アリンコの。」

「アリンコの…著作権?バカなんじゃないのあいつ?」

「どうしましたか?」

「いえ、創業当初から一緒にやってきた奴なんですが、儲からないって文句ばっかり言ってた奴なんですよ。挙げ句の果てにこのままじゃハゲるって言ったっきり出社してこなくなって、それから音沙汰無しで」

「なるほど」

「でもさ、アリンコの著作権ってなによ。アリでしょ。どっからみてもアリ。」

「それが…同じ内容証明を主幹事証券会社と証券取引所と監査法人にも送っているらしく…」

「え」

「つまりということはそろそろ電話が鳴りっぱなしになるのではないk…」

ジリリリーん!!!

「タイミングイイ」

「は、はい杉浦で、いや、アリファンカンパニーです」

「杉浦さん、ヤマト証券の銭内です」

「はい!」

「御社のコーポレートガバナンスについて2、3お伺いしたいことがあるのですが、コンプライアンス上、電話ではなんですので、よろしければこのあとお時間をいただければと」

「はい、了解です。このあとですね。はい。いつでも結構です」

トゥルルルルー

「デンワナッテルヨ」

「はい、アリファンカンパニーです。はい。ただいま杉浦は他の電話に出ておりまして。はい。すぐにおりかえし。はい。かしこまりました」

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